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Taiwan, Taiwanica, Taiwanicus, Taiwanus

学部四年 嶋本 習介

登場人物:たる、フーティエン、しまもと

台湾に行きたい。

行きたすぎる。

このところ、昆研では台湾に行く流れがあり、2年前には今回のメンバーのひとりフーティエンが先輩とともに南部で(採集記参照)、そして去年は先輩がたが中部・南部で採集をしている。

ずるい!次は俺も連れてけよ!と言いたいのだが、台湾に行きたがるようなメンツはもう既に台湾に行って満足している…ので、私が企画することにした。

私の同期のたるとフーティエンは、声をかけると二つ返事で行くと言ってくれた。

この3人が今回のメンバーだ。それぞれの好きな虫は、たる(アリヅカムシ)、フーティエン(丸い虫全般、テントウムシ)、しまもと(ヒラタカメムシ菌食性甲虫)である。

期間は3月下旬から4月頭の2週間。

この採集記は、しまもととたるの2人が旅の前編・後編を分担でお届けする。

 

前編(しまもと筆)

 当日は成田で集合する。

たると私は、研究室に寄って最終準備とライトトラップ機材の回収の後、成田に向かう。

私がパスポートを家に忘れたりとドタバタしているうちに出発がギリギリになってしまったので、ライト機材についての話し合いが間に合わず、とりあえず灯火総研を2台持っていくことにした。

無事に空港につき、チェックインカウンターへ。

灯火総研を欲張ったせいで荷物の重量制限を盛大にオーバーし、15千円(!)も追加料金を取られた。

この時点で計画性の無さが露呈している。

実は出発日まで各自多忙を極め、採集地の話し合いすら、ほとんどできていない。

この時点で、南投縣方面で採集すること、去年先輩が行って実績のあるところに行ってみること等、実にぼやっとした決定しかできていないありさまだった。

 飛行機は深夜便のため、22時ごろ成田を発ち、午前3時ごろに桃園国際空港に到着。

Wifiを借り、ロビーのイスで仮眠をとったり、タトウを折りながら夜明けを待つ。

みんな大好きジェットスター君。

なぜか機内食が出た。頼んだっけ?

タトウ折りの少年

台中駅。

全体的に広々としている。

7時ごろのシャトルバスで桃園駅に向かい、台中まで新幹線(高速鉄道)で移動した。

台中でレンタカーを借り、近くのスーパーでバナトラ用のバナナや殺虫スプレー等の機材を買い足したのち、移動開始。

目的の埔里鎮に着いた時には昼過ぎになっていた。

コンビニで昼食。

さらに山奥に移動し、採集地へ。

林道を下りながら交代で車を運転しつつ、採集する。

途中、ムフフ…な立ち枯れを見つけ、全力で藪漕ぎをする。

ザッ、ザッ…バキィッ!

ビーティング棒が折れた。

ハァ〜?一日目だぞ。近頃の若い棒は軟弱でなっていない。

しかし、立ち枯れは最&高だった。

メチャメチャかっこいいハサミムシやらアトバゴミムシ(Catascopus)が落ちてくる。Catascopusは、sauteriという種らしい。

我々は勝手にケンランアトバと呼んでいたが、東南アジアにはもっときれいなのもいるそうな。

動きが俊敏で、ビーティングネットに落ちると猛スピードで走る。

Catascopus sauteri Dopuis, 1914。シンプルに、好き。

ヒラタヒシバッタの一種。私から言わせてもらえばヒラタを名乗るには分厚い。

まあ、背中が平たいということだろう。

沖縄のヒラタヒシもそうだが、こいつらは昼間樹皮下にも潜んでいるようで、この後もちらほらと採集できた。

ヒラタヒシバッタ系は私の好きな虫のひとつなので、嬉しい。ヒラタとつく虫にダサい虫はいない。

その後FITとライトFITを仕掛けたのち、夜はライトトラップをしたがぱっとせず、近くのコンビニで夕食を食べた。

台湾にはファミマとセブンが大量にあり、でかいイートインスペースもあってとても便利だ。

コンビニのライトを巡り、コンビニの駐車場で就寝。

ライトにはオオシモフリスズメが来ていたのでいそいそと採集。

春ですね。

てか台湾にもいるのか。

ヒトリガの仲間。

書き忘れていたが、今回は宿をとっていない。

2週間車中泊である。

3人分のスーツケースやら竿やらを搭載した車内はクソ狭く、特に後部座席の居住性は最悪だった。

 

翌日も南投縣で採集。先輩に教えてもらったポイント等をめぐる。ひらたいサシガメ(Tapeinus fuscipennis?)やらキクイムシ食いタイプのミツギリゾウやらを採集し、満足。

このひらたいサシガメの仲間は日本には生息していない。

生きている実物はメチャメチャカッコよく、感動した。

(この後、普通種であることが分かり少しガッカリした。)

Tapeinus fuscipennis

ビンロウ(ヤシのなかま)のプランテーション。

ビンロウは実を噛んで食べる嗜好品だ。

酒、たばこ、ビンロウ。日本のスギ、ヒノキのノリでビンロウ畑がある。

急な農道を登る。

その後別ポイントへ移動するも、なんと通行止め!

台湾の山地は日本で考えられないほど急峻な地形のため、道路の崩壊が日常茶飯事だそうだ。

事実、この後も、何度も通行止めに出くわした。

予定を変更し、既に日本でポイントをチェックしてあった、昔の有名採集地へ。

観光地の中を抜け、急坂を登りながらの採集となった。

多くのヒラタカメムシを採集することができ、まずまずの成果。

明日もここで採集をすることにした。

山に日が沈む。

天気に恵まれている。

 

3日目。

採集地近くの駐車場で一泊し、昨日の午後と同じポイントに向かう。

アカネコールでトラップをしたが、不発。

まぁ、ですよね。半日かけただけじゃね…。

Catascopus や、ヒラタカメムシなどを採集することができた。

タイワンネブトクワガタが材から出てきたのが嬉しかった。

気を良くし、Catascopus2人に献上した。

私が良い材を自由に見られているのは、それらを見るのを我慢して私に残してくれている同行者のおかげだ。

良い虫がたくさん採れた時に献上して媚びを売る喜んで分け合うのは重要なことなのである。

アカネコールをベイトにしたサンケイもどきトラップとフーティエン(長竿持ち)

 

午後はフーティエンが見つけたポイントに移動するが、Google MAPで見たイメージと違い撤退。

フーティエンが、路面の段差で車のバンパーを削り、冷たい目で眺める。

フーティエンはこのあと、ポイント選びをミスる、道路を逆走する、車を石でこする等、いろいろやらかすことになるが、その序章であった。

 

夜は1日目の林道の入り口でライトをしたが全く振るわずダメだったのでナイトビーティングへ。

ぱっと見では全然イマイチなポイントだったのだが、立ち枯れが多く、そこに大量の虫が…!

ひらたいサシガメや、テンダマ、ユミアシ系などのゴミダマ、ホソバネカミキリの一種(トラニウス)など、ぼろぼろ落ちる。

テントウダマシ。

羽化直後らしく、テネラル。

 

…と、ネットに落ちたサシガメに目を疑った。間違いない、ハラビロトゲサシガメ系の幼虫だ。

私にとって、本気の本気でマジのガチでとんでもなく憧れのサシガメだ。

追加…追加…とつぶやきながらその木を必死で見ると、ああああ!成虫!

普段いい虫を採っても別に叫んだりしないが、叫ばざるを得なかった。

手が震えていたので当然写真はないです。

この後追加個体も得た。

最高だ。

昇天しそうである。

この後もいろんないい虫を採ったが、間違いなく今回の旅で最高の虫だ。

最高(語彙力)。

ハラビロトゲ。

台湾のものは日本のspとは別種で、Neocentrocnemis stali  (Reuter, 1881)という種。

(生態写真は別日の個体)

たるがタイワンネブトを探しに森に消えたのでついていくことに。

バットにあふれんばかりの木くずをうろからかき出す彼を横目に「こういうとこにいんじゃね?」とか言いながら横の木のうろを見ると…「あ、いたわ…」き、気まずい!割と大きいオスだし…。

しかしその後、同じ木の上部のうろからたるも無事採集でき、安心。

二人がニコニコで戻ると、フーティエンが真顔でライトの横に立っていた。

この日の成果の一部。

 

4日目。

コンビニで起床。

でかいクロツヤムシが落ちていてラッキー。

台湾の「箱根」。

ふつうのホテルです。たぶん。

未舗装路を行く。

このポイントも事前にチェック済みの場所だが、そんなに振るわない。

ヒラタカメの入るような材は無く、うんちなのでチョウを採ることに。

タイワンタイマイ。

アオスジアゲハにしっぽつけて綺麗にした感じ。

美しい。

未展翅でスミマセン。

 

 チョウにも飽き、現地人の野糞?があったので見に行くと…あー!!タマオシコガネ!フンコロガシだ!

採れると思っていなかった。

どや顔で自慢すると、2人も糞を見に行くということで少し遅れてついていく。

…採れてました。どうやらガンガン飛んでくるらしい。

さらに、林道の始点の工場付近にまとまって人糞がある場所があり、そこでもたくさん採集できた。

…なんだ、普通(以下略)。

フンコロガシがうんこ転がしているところを見られるだけでも大満足だ。

人糞はとってもとっても嫌だし普段なら絶対いじったりしないが背にフンコロガシは変えられない。

午後は1日目のポイントでトラップ回収等を行い、終了。

トラップは本当にカスでした。悲しい。

入っていると有頂天だが入っていないと悪態つきまくるのがトラップの常。

ハラビロトゲを追加したりとそれなりに満足し、コンビニへ。

 この日宿にしたコンビニはガソスタ併設であり、なんと無料のシャワーがあった!

ありがたく使わせてもらうが、水なので寒い。

今日のご飯。うす緑のお茶は緑茶のミルクティーで、甘いがおいしいのでおすすめ。

 

今後の作戦会議中、あることに気づいた。

「中部、飽きたね。」当初、埔里周辺と日月潭周辺と阿里山周辺でそれぞれ5日間程度過ごす計画だったが、作戦を変更し、日月潭周辺をのこり2日程度で攻め、後半1週間を南部で過ごすことにした。

車内ソーティング。ヘッドライトが怪しさMAX

 

5日目。早朝から移動し、日月潭を目指す。

日月潭のある国家風景区は採集禁止のため、風景区外で採集を行う。

国内での採集の際はもちろん、国外での採集の場合はより入念に採集の規制について調べる必要がある。

現地で案内人やコーディネーターがいれば話は別だが、今回のように日本人だけの場合は特に神経を使うべきだと思う。

ちなみに台湾では基本的に、国家と名の付く場所と、国の機関に所属する場所はNGである。

(ここらへんだけは行く前に真剣に調べた。)

日月潭周辺。美しい湖で、有名観光地。

1ポイント目は微妙。

フーティエン曰く、テントウムシはまずまずだったとのこと。

でかいハムダマがふわふわ飛んでいる。

ハムダマは叩き落とせたがサシガメを逃がしてしまい、がっかり。

2ポイント目。登山道チックな道ののびる林内を進んでいく。

この場所はかなりの当たりポイントだった。

ここにもフンコロガシ。

Acanthaspis immodesta Bergroth, 1914

日本のハリサシガメと同属。

めちゃくそカッコいい。

2cmくらいあり、でかい。

樹皮をめくったら落ちてきて発狂した。

最終日前日に幼虫は採集できたが、成虫はこの1頭のみしか採れなかった。

Catascopus horni Jedlicka, 1932というアトバゴミムシ。

C. sauteriと比べ、こちらは2cmほどあり、大型で、漆黒のツヤが最高。

ごつごつのエリトラもえぐい。

C. sauteriよりこっちのが好き。

この種は、ここで採集した2頭以外には採集できなかった。

いずれにせよ、カタスコプス大好き。

今日もコンビニ飯。

このカップ麺、イケる。

この、漫画が描いてあるカップ麺は数種類あるが、どれも、安い(100円くらいの価格帯の)カップ麺の中では比較的おいしいのでおススメ。

袋に入っているのはフンコロガシのごはんではなく、煮卵。

秘儀。窓挟み干し。町に行けば少数ながらコインランドリーはあるが、いかんせん町に行かないので洗濯は自分でする。

洗剤代をケチり、自分たちの頭を洗うために買ったLAXで洗ったのでシャンプー臭がすごい。

 

6日目。この日は1日登山デーだ。

目的の山は日月潭を見下ろす2000m級の山だ。

駐車場で一夜を明かし、朝6時から準備。

6時半に出発した。

この山の登山道は、一部が保護区内にかかっているため、慎重を期して、採集は地図とにらめっこ&最小限に済ませることとした。

眼下の日月潭。

下山できたのは18時を回ったころだった。

この日は結局12時間山にいたことになる。

ネット上では6〜8時間との案内だったが、のんびり登ったり、採集も少ししたので全然無理。

登山口の標高は700mで、1300m近く登った計算だ。

私は国内でも2000m級の登山をしたことがなく、この日が初体験だったので非常にしんどかった。

たるは昼食を車に忘れ、下山時に低血糖でぶっ倒れていた。

そもそも、自分はペラペラのやっすい長靴、たるはどっかのやっすい靴なのが良くない。

勾配がリアルにきつい。この日の成果はなかなかよく、ツノボソオオクワ等を採集することができた。

 

ツノボソオオクワ。

ヒラタムシ。

台湾のヒラタムシ、採りたかったのですごく嬉しい。

Cucujus nigripennis Lee & Sato, 2007

各地でヒラタムシ系の幼虫は見ていたが、成虫はようやくのお目見えだ。

日本でも、ヒラタムシは幼虫に比べて成虫がかなり少ない気がする。

ルリヒラタとベニヒラタを悪魔合体したかのようなこの色!

すばらしい。

めっちゃカッコよくないですか。

大きさはベニヒラタを一回り大きくしたかんじ。

途中、メチャメチャ良さげな林があったが保護区内で、残念だった。

 

あまりにも登山がしんどかったのでこの日の夜は町の食堂で散財した。

魚はティラピアと書いてあった。ティラピア、はじめて食べたが、めっちゃ旨い。

 

前編はここまで。

後編につづく。