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Y染色体を受け継ぐマウスの雄の子が世界で初めて誕生!
バイオサイエンス学科 尾畑准教授、河野教授

男性を決定付けるY染色体は通常、父親の精子から男の子に受け継がれるが、母親の卵子から正常なY染色体を受け継ぐマウスの雄の子が世界で初めて誕生した。 本学の尾畑やよい講師と河野友宏教授、カナダ・マギル大の武藤照子博士らが26日までに、異常な卵子の細胞質を正常な卵子と交換する方法で生み出すことに成功した。 哺乳(ほにゅう)類の性分化の根源に迫る研究成果で、卵子の細胞質を原因とする不妊の仕組み解明にも役立つと期待される。論文は米科学アカデミー紀要の電子版に発表される。 (asahi.com 2008.08.26 抜粋)


<詳細>

一般に、ほ乳類ではY染色体の有無によって性が決まり、性染色体の構成がXYならば雄、XXならば雌になります。ところが、私たちが研究で用いたB6Y.TIRというマウスは、正常なY染色体を持っているにもかかわらず、雌へと発生してしまいます。どうして雌になってしまうのか?という問題もとても興味深いのですが、今回の研究は、それとはちょっと違う研究です。Y染色体上に存在するSry遺伝子は、雄化に向けて働く最初の遺伝子ですが、例えば、Sry遺伝子を欠損したマウスは雌となり、子供を産むことができます。ところが、B6Y.TIRマウスは、見かけ上は正常な雌に見えるのですが子供を産むことができません。Canada McGill大学のTaketo先生はその原因を約20年間にわたって追求してこられました。そしてB6Y.TIRマウスの不妊の原因がどうやら卵子そのものにあるらしい・・というところまでたどり着きました。

尾畑 やよい講師
尾畑 やよい准教授
応用生物科学部 
バイオサイエンス学科
准教授

実験風景私たちは生殖細胞の発生に非常に興味があり、そこで、B6Y.TIRマウスの卵子を解析する共同研究をスタートさせました。解析の結果、B6Y.TIRマウスの卵子は第二減数分裂で染色体や細胞質が不等に分裂してしまうことがわかりました。次に、この異常な分裂が核に起因するのか細胞質に起因するのかを調べるため、正常なXX雌マウスの卵細胞質にB6Y.TIRマウスの卵子の核を移植することにしました。すると、XYの核を持った卵子は正常に減数分裂を進行させ、受精後、正常なマウスとして誕生することができたのでした。産まれて来た雄マウスを解析してみると、一部のマウスで卵子からY染色体を受け継いでいることがわかりました。通常、Y染色体は精子(つまり父親)からしか受け継がないので、正常なY染色体を卵子から受け継いだマウスというのは、世界で初めて誕生したことになります。さて、B6Y.TIRマウスの卵細胞質に致命的な異常が存在することは、明らかになりましたが、Y染色体が存在するとなぜ卵子の細胞質が異常になるのか、その答えはまだ十分には明らかにされていません。私たちは、今後、XX卵子とXY卵子の違いを遺伝子レベルで解析するために、さらに共同研究を続けていきます。

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