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スーパー農学の知恵

生ごみを活用した東京農大の環境への取組み

応用生物科学部生物応用化学科 教授 後藤 逸男

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「みどりくん」を用いた地域循環型社会の形成

生物応用化学科の後藤逸男教授らは、生ごみから作った肥料「みどりくん」を開発してキャンパス地元の世田谷区桜丘で地域循環型社会を築くための実践的な研究をおこなっています。

世田谷キャンパス内のリサイクル研究センターでは、世田谷区内の中学校や学内のレストラン・研究室などから1日あたり約500kgの生ごみを収集して、後藤教授らの技術により生ごみ肥料「みどりくん」を毎日約70kg製造しています。一般に生ごみをリサイクルして肥料にするには、堆肥という手法がありますが、これには広い場所と数ヶ月にもおよぶ長い時間が必要になります。しかし「みどりくん」の製造方法は、生ごみをボイラー等の余熱で乾燥させ、その中の油分を搾ってペレット状に成型するだけなのです。場所をとらず所要時間はわずか2〜3時間。しかも悪臭を発生させないという大きなメリットもあるのです。

「みどりくん」に含まれる肥料成分の特徴は、窒素に対してリン酸とカリウムが少ないこと。一見養分バランスが悪いようにみえますが、リン酸やカリウムが蓄積している最近の野菜ハウスや畑には、たいへん合理的な肥料といえます。しかも、おいしい野菜ができるのです。「みどりくん」を肥料として施すと、土壌微生物によって生ごみ中のタンパク質が分解され、窒素肥料成分が放出されます。その分解速度が既存の有機質肥料に比べゆっくりです。この性質が野菜をおいしくする秘密なのです。

この東京農大産「みどりくん」を世田谷区内桜丘の農家に提供、できた野菜は全て農家の庭先で販売され、地域住民の皆さんに食べられるという、地域循環型社会の形成に役立っているのです。それまで農家では数多くの肥料を畑に施していましたが、一種類だけで済む「みどりくん」への評価も上々。この「みどりくん」を利用した「都会でもできる地産地消」が世田谷区以外の各地に拡がれば、食料生産〜消費〜リサイクルにいたる地域循環型社会を全国的に形成していくことも可能になるでしょう。

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みどりくんを稲作に施用した「東京農大みどりくん米」も

一方で「みどりくん」の評判に注目したある東京農大卒業生が東京農大生協と協力し、「みどりくん」を用いた稲作にもチャレンジしています。「みどりくん」を田植え前の5月初旬に田んぼに施用。5月中旬には、その田んぼに苗を植えます。やがて秋には実もずっしりとした稲穂が育ちます。精米されたお米は「東京農大みどりくん米」と名づけられ、東京農大の学食で美味しい「みどりくんご飯」となるのです。昨年も10月下旬から東京農大カフェテリア・グリーンで学生たちに提供されました。この「みどりくん米」を分析したところ、おいしさを示す食味値が、一般のブランド米にも負けない値であることがわかりました。環境にやさしい循環型のお米を作りたい、そんな東京農大関係者の思いが、環境にもやさしくおいしい「みどりくん米」を誕生させたのです。


 

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