東京農業大学

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教員コラム

ラッカセイの種皮を活用

2008年1月1日

応用生物科学部醸造科学科 教授 穂坂 賢

大学発のリキュールを開発

健康をキーワードに様々な食品が商品化されている。著者らも未利用資源の活用から健康飲料の開発を目指し、大学発の商品として成果を得た。ラッカセイの種皮(渋皮)を活用したリキュールである。その開発の経緯などについて紹介したい。

 

未利用資源を有効に

バブル経済の崩壊以降、企業は経営体質の改善が求められ、無駄の改善や環境への影響を考慮した企業活動が必要になってきた。その中にあって食品業界、特に醸造業界の各企業では、製造工程から排出される多くの有機廃棄物の処理が重要になった。

未利用資源の廃棄は、環境への影響にとどまらず、廃棄処分のコストを生み、企業経営的にも大きな問題でもある。それを有効に利用すれば、コストとして考えていた経費が利益に転化されることにもなりうる。従って、未利用資源の有効利用は、大きな企業戦略になるものと思われる。

 

ラッカセイ種皮の状況

著者らが注目したのは、ラッカセイ加工会社から排出されているラッカセイ種皮である。ラッカセイは、日本における豆類加工食品の中でも様々な用途に使用され消費されている。代表的なものには、殻付のラッカセイ、渋皮付のラッカセイ、渋皮なしのバターピーナッツ、ピーナッツ入り柿の種、ピーナッツみそ、茹でラッカセイ、ピーナッツ煎餅、ピーナッツバタークリーム、さらにはラッカセイ油などが知られている。

2003年の総務省統計局の農林水産業統計によると、ラッカセイの国内生産量は約22,000トンである。一方消費量の国内外シェアは、国産の5%に対し外国産の95%となっている。これらの数字を基に、国内でのラッカセイ消費数量を算出すると、約440,000トンになる。すべてのラッカセイが加工品に利用されるわけではないと思われるが、その加工工程において、種皮は多量の産業廃棄物となる。

 

ポリフェノール成分の効用

ラッカセイの加工(種皮の除去)によってピーナッツを製造するには、2つの方法がある。1つは温水につけて種皮を除く方法、もう1つは煎ることによって除く方法である。前者はピーナッツの利用が多岐にわたるが、種皮の利用はできずそのまま廃棄物となってしまう。後者はピーナッツの利用に限りはあるが、種皮はポリフェノールを含み、利用が可能なものとなる。

本学栄養科学科の村清司教授らは、ラッカセイ種皮の食品素材としての利用を検討し、ラッカセイ種皮の熱水抽出液に抗菌性ならびに抗酸化性のあることを見出した。その抗菌性、抗酸化性はどちらもラッカセイ種皮に含まれる高分子のポリフェノール成分によるものであると明らかにしている。このラッカセイ種皮の持つ特性を生かし、新規製品の開発に取り組み、村教授との共同研究で、ラッカセイ種皮を活用したリキュールを開発した。

 

なぜリキュールなのか

今日の酒類消費をみるに、従来の酒類(清酒、ワイン、ビール)消費に対し、カクテル、缶チュウハイといったソフト飲料感覚の酒類に加え、色々な飲み方が可能な焼酎、スピリッツ、リキュールの消費が増加傾向にある。また、ポリフェノールを活用した健康志向の背景もある。ポリフェノールは、赤ワインやウイスキー、ブランデーなどのように渋味を付与するが、それ以外の効果として着色、酸化抑制、生理機能効果などが挙げられる。これらポリフェノールの効果を活用し、さらには消費者の健康志向などを考慮すると、消費者のターゲットもおのずと限られてくる。

ラッカセイの種皮の有効利用の観点から、気楽に作ることのできる酒類、中でもリキュールは製造方法が簡便であり、原料の特性を生かせる上で最も適していると考えた。

 

最も相性のいい芋焼酎

製造にあたり、使用する焼酎の種別とピーナッツ種皮の相性は重要なテーマとなった。ピーナッツ種皮からのポリフェノール抽出量は、焼酎に浸漬する時間によって異なる。また、嗜好品であることから風味や味わいも重要である。これらを中心に相性と諸条件について、甲類焼酎(連続式蒸留しょうちょう)、本格焼酎として米焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎および芋焼酎を用い検討を加えた。

その結果、芋の原料香とあまい味わいを有する芋焼酎が、最もラッカセイ種皮と相性がよく、次いで黒糖の原料香とあまい味わいを有する黒糖焼酎となった。米焼酎、麦焼酎は有意差が見られなかったことから、順位を共に3位とした。あえて順位をつけると麦焼酎が3位に、米焼酎が4位となる。これは原料香と味わいが軽いためラッカセイ種皮の香りと渋みが焼酎に勝ってしまい、マスクするまでには至らなかったことに起因する。さらに甲類焼酎においては、焼酎自体にほとんど香りがなく味わいもないため、ラッカセイ種皮の香りと渋みが強く勝り、むしろいやみを感ずるものであった。

以上の結果から、ラッカセイ種皮の持つ独特の香りと渋みをマスクできる芋焼酎が適当であるとの結論を得た。さらに芋焼酎における熟成期間、糖の添加、酸味度のなどの諸条件について検討を加え、味わいがあり、ポリフェノール含有量の高いリキュールを得ることができた。

 

商品化への取り組み

ラッカセイ種皮を活用したリキュール製造のための試験は、実験室規模ではできたものの、実際に製品化、商品化となると様々な問題があった。一番大きな障害が製造場、つまり会社である。リキュールの製造免許を持っている会社であることが最低条件となる。また製造リスクに対しても積極的に挑戦してくれる会社であることも用件の1つである。ここで言うところの製造リスクとは、製造原料(芋焼酎、氷砂糖、ラッカセイの種皮、ビンさらにはラベルなど)の調達を含めた初期投資ということになる。試作品はできたが、実際に商品化となるとそれに伴う初期投資はかなり厳しい。これをクリアすることが大きな壁となった。

幸いにも快く製造を行っていただける会社に巡り会えた。熊本の堤酒造⑭である。これを機に一気に商品化へと進むことになった。試作品を基に、販売するためのアルコール濃度、販売するための容量、容器の形状、ラベルのデザイン、商品名さらには商品のセールスポイントとなるキャッチコピーと様々な企画が必要になった。さすがにこのような企画については限界があるので、メーカーの販売企画を中心に、市場動向調査を行い現在販売されている商品の形となった。

短期間の試験ならびに試作品の製造に始まり、商品の企画、販売と進んできたが、発売後もユーザーの方から様々なご意見を頂戴している。今後これらのご意見を参考にさらに製品の向上に努めて行きたいと思っている。

 

 

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