ブラジルの地域社会に貢献

卒業生アマゾン移住50周年

東京農大国際食料情報学部長 豊原秀和

東京農業大学卒業生のアマゾン移住50周年記念式典は、さる3月5日、アマゾン流域の移住地トメアスーの会場に、ブラジル在住の校友や本学関係者ら約60人が参加して盛大に行われた。本学から私(豊原)、国際農業開発学科長高橋久光教授、小野功名誉教授、三簾久夫助教授、友利行男宮古亜熱帯農場が参加した。

卒業生のアマゾン移住は、1957年に海を渡った坂口陞、常光憲行、木村弘三、林秀三の4氏に始まった。また、この年、ブラジル南部には北原穣、佐々木恂両氏が移住している。当時、日本は戦後の混乱から経済復興に移行しつつある時期で、農村では食糧増産と二・三男対策が大きな問題となっていた。こうした社会的背景を受け、海外移住の人材育成を目的として本学農業拓殖学科(現、国際農業開発学科)が1956年に設立され、その先駆的役割を担った各氏は後輩たちの移住受け入れにも尽力した。

50周年記念式典では、本学卒業生のパトロンになっていただいた方々への感謝状贈呈、移住者への記念品贈呈、校友会から前支部長への感謝状贈呈などが行われた。学校法人東京農業大学からお祝い金を差し上げた。また、式典に先立ち、千葉三郎・本学第4代学長、杉野忠夫・農業拓殖学科初代学科長らの墓参、法要が営まれた。

坂口氏らがトメアスーに移住したのは、戦後移住が再開されて間もない時期であり、移住指導者の臼井牧之助氏がシンガポールから持ち込んだコショウが世界的に脚光を浴びた時期であった。トメアスーは、高温・多湿の地であり、マラリアの猛威などによりご苦労は筆舌に尽くしがたいが、坂口氏らは、次世代を担う若者として大変歓待されたという。

後にコショウは病気などにより大打撃を受けたものの、全盛期のトメアスーは州政府や郡政府などから、地域社会の発展モデルとして評価され絶賛された。地域社会への貢献という観点から、先輩諸兄の功績を東京農業大学として大変誇りに思う。

今、我々が住んでいる地球は、焼畑移動耕作、換金性の高い作物生産による大規模農園への転換を目的とする農業開発、過剰な商業的森林伐採、無秩序な開発などによって、土地は荒廃地化し、裸地化・砂漠化の原因を作り出した。特に熱帯雨林地域の森林破壊は、地球全体の問題となっている。

そのような現状を知り尽くしたアマゾン在住の先輩方が、持続的農業、地球に優しい農業を目指してアグロフォレストリー、すなわち、林業・農業・畜産業・水産業といった異種産業の組み合わせを行い、環境に優しく、持続的な農業に取り組んでいる。アグロフォレストリーは、新しい取り組みではなく、昔から熱帯地域で行われてきた農業形態である。すなわち、伝統的農業であり、森林農業である。

先輩諸兄が実践しているアグロフォレストリーを発展させ、地球に優しい農業を展開し、中南米地域、もっと大きく熱帯地域のモデルとなるように願う。

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