ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

2019年度学生ハンドブック

― 8 ―「農のこころ」を育む東京農業大学学長 髙たか 野の克かつ 己み入学おめでとう。大学を代表して心から歓迎いたします。東京農業大学は,明治期に逓信,文部,外務,農商務大臣を歴任した近代日本の国際人であり科学者でもある子爵榎本武揚公により,明治24(1891)年に徳川育英会を母体とした私立育英黌農業科として創設され,今年で創立128周年を迎えます。榎本公は,徳川幕府から留学生としてオランダへ派遣され,蒸気機関学,船舶運用術などの専門を学び,さらには科学全般や国際法などの分野も貪欲に勉強し見識を広げられました。帰国後は,経験により得た知識や見識により,当時我が国では誰も試みることがなかった石鹸やチョーク,焼酎の製法などを研究し製造しました。そしてその実学的経験から,産業発展には先進の科学技術,特に「農業」の発展こそが近代国家の建設に極めて重要であると考え,本学を創設したのです。榎本公が重要視した農場実習や農家支援などの実学教育を継承し発展させたのが日本農学の先駆者である初代学長の横井時敬先生です。本学の教育研究の理念「実学主義」は,横井先生の言葉「稲のことは稲にきけ,農業のことは農民にきけ」に込められています。机上の理論ではなく,現場で自ら課題を発見し,自ら考え科学的に実証するということです。また現在においてはSNSの普及やAI等の日進月歩の先端技術によりコミュニケーションや情報共有の方法も大きく変化していく中,学生自身が「現場」で「五感」を駆使して思考し解決方法を探るという不変の原理は何より大切だと確信しています。私たちの住む地球は,気候変動に伴う環境変化や自然災害の増加,食料危機などのあらゆる課題に直面しています。これらすべては「農」の研究領域であり,地球上の人類を含む生物の「生きる」を支えることは東京農大生に課せられた使命です。各学部・学科・研究室での取組は,国連で採択された持続可能な開発目標SDGsにいずれもが合致しており,教育研究フィールドは国内の各地域から全世界へと多岐に渡ります。これから皆さんは,地域や現場に立脚しグローバルな視点から生命・食料・環境・健康・エネルギー・地域創成をキーワードとした勉学,課題解決に努めていきますが,現代では各学問分野における境界線や限界は無くなっています。全体を俯瞰した視点のもと「縦割り」から「横串」の感覚を持ち,命の大切さ,尊さ,他者を思いやる気持ちをもった「農のこころ」を育んでください。学内外の仲間,教職員とコミュニケーションをよくとり,学生生活を有意義に過ごしてください。この学生生活ハンドブックを有効に活用し,いきいきとチャレンジ精神旺盛なキャンパスライフを送ることを希望しています。