生産基盤コース(JABEEコース)             平成18〜21年度入学者用
コース概要 学習・教育目標 履修方法    

教育理念
  生産基盤コースにおける教育理念は、地域環境ならびに農村計画、農村環境整備に関する計画レベルでの農業工学関連技術に加えて、土木材料、設計施工法、水利施設や灌漑排水事業に関し必要な素養や技術の習得によって、卒業時には自らが学習し自己の能力と資質を開発することができる者として高い評価が得られるような人材を育成することにある。
コース概要
 生産基盤コースはJABEE(技術者教育認定機構)の認定を受けた技術者教育コースで ある。JABEE認定を受けたコースの修了者は,世界に通じる技術者養成教育を受けたことが保障されてい る。日本をはじめ各国では,独自の技術者資格制度を有しており,これらの技術者資格を習得するには試験を受けなければならならない。しかし,受験に際しては一定の資格が要求されており,これを満足しなければならない。本コースの修了者は,これらの受験資格を得ることが国際的に保障されてい る。つまり,本コース修了者は日本に加えて,アメリカ,イギリス,ドイツなどの技術者資格試験を受験することが可能になる。
 日本の技術者資格の最高峰は技術士である。この資格を有する者は高度な技術を有していると認められ,その技術によって設計や施工,管理の責任者となることができ る。技術士になるには,一次、二次の2回の試験に合格しなければならないが,本コース修了者は一次試験が免除されることになり,就職に際しては有利な資格となり得 る。本コースは任意選択制であるが,国内ばかりでなく海外でも通用する技術者を目指して本コースを履修することを勧める。

JABEEは、日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation Board for Engineering Education)、通称JABEE「ジャビ−」といわれ、技術系学協会と密接に連帯しながら技術者教育プログラムの審査・認証を行うため1999年11月に設立された非政府団体である。JABEEの目的は、統一的基準に基づいて理工農学系大学における技術者教育プログラムの認定を行い、技術者の標準的な基礎教育と位置付け、国際的に通用する技術者育成の基盤を担うことを通じて、わが国の技術者教育の国際的な同等性を確保し、社会と産業の発展に寄与することである。なお、JABEEによると、「技術者」とは「数理科学、自然科学および人工科学の知識を駆使し、社会や環境に対する影響を予見しながら資源と自然力を経済的に活用し、人類の利益と安全に貢献するハード・ソフトの人工物やシステムを研究・開発・製造・運用・維持する専門職業」と、非常に広い範囲に定義している。このような技術者を教育・育成するために、JABEEが認定する教育プログラムにおいては以下に示すような知識・能力を 習得させることが要求されている。

(a) 地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養
(b) 技術が社会および自然に及ぼす影響・効果に関する理解力や責任など、技術者として社会に対する責任を自覚する能力
(c) 数学、自然科学、情報技術に関する知識とそれらを応用できる能力
(d) 該当する分野の専門技術に関する知識とそれらを問題解決に応用できる能力
  (1) 応用数学、物理学、化学または生物学および農業・環境関連科目の習得
  (2) 農業土木関連(土、水、基盤、環境)分野の知識
  (3) 実験または調査を計画・遂行し、データを正確に解析・考察し、説明する能力
  (4) 専門的な知識、技術を駆使して、課題を探求し、組み立て、解決する能力
  (5) 実務上の問題点と課題を理解し、適切に対応する基礎的能力
(e) 種々の科学・技術・情報を利用して社会の要求を解決するためのデザイン能力
(f) 日本語による理論的な記述力、口頭発表力、討議などのコミュニケーション能力および国際的に通用するコミュニケーション基礎能力
(g) 自主的、継続的に学習できる能力
(h) 与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力

本コースのカリキュラムは、これらの知識・能力が十分習得できるように構成されている。

 
学習・教育目標

   生産基盤コースでは、農業生産性の向上のみではなく、地域の環境・資源、生態系およびエネルギーに配慮した計画・設計・施工・運営管理を行える技術者を育成すべく、コース履修者に対して次に示す(A)(E)の学習・教育目標を定めている。すなわち、本コースでは、農業工学関連技術の社会的位置付けや技術者として必要な倫理を理解した上で農業工学関連技術の基礎知識を学習し、これをもとに専門知識を習得し、さらに深い専門知識を習得した上で、実証的研究をとおして実践能力とコミュニケーション能力を習得するという、一連の学習・教育目標を設定している。

  そこで履修学生は、これらの指定された目標について学習し、表-4に示すような科目を習得しそれぞれに設定された必要な学習水準をすべて達成することが求められる。同時に教員は、履修者がこれらの目標水準を達成するために必要な教育を行うとともに、社会や学生の要求を配慮した継続的な教育改善を行うことを目指している。なお、これらの学習・教育目標はJABEEが要求する(a)(h)の基準(上記)を考慮しながら、本コースの修了者の持つべき能力として設定したものである。

(A) 人類社会における技術の位置付けと技術者としての社会的責務および倫理観を習得する
 「食料」、「環境」、「資源」、「エネルギー」などの地球的規模の諸問題を解決するために必要とされる農業工学関連技術の人類社会での位置付けを認識し、農業工学関連技術が人類社会および地球環境に及ぼす効果や影響について多面的に考える能力を習得するとともに、技術者としての社会的責務と倫理観を習得する。
(B) 農業工学関連技術の基礎知識を習得する
  農業工学系技術者は、数学、情報技術、自然科学等に関する十分な知識を有し、これらを人類の幸福のために活用することが求められる。ここでは、そのための基礎知識として、数学、生物、化学、情報ならびに農業工学関連技術の基礎知識としての力学系科目などを習得する。
(C) 農業工学関連技術の専門知識を習得する
 農業は土と水に大きく依存しており、食料生産の安定と安全・安心、人類の生存環境創造と維持のために「土」と「水」に関する十分な知識と理解が必要である。また、食料生産と人類の生存環境を取り扱う農業工学系技術者には、農地や水利にかかわる現場での計測技術、地域資源の有効利用と環境に配慮した整備計画、持続可能な生産基盤整備、自然環境に配慮した施設整備に関する知識が必要である。ここではこれらに関する専門知識を習得する。
(D) 主要な専門知識を習得する

 ・サブコースD1
  農地・農村の計画・評価に関する主要専門知識の習得
 ・サブコースD2
    農村・都市部における設計・施工に関する主要専門知識の習得

 農地・農村の計画・評価に関する主要専門知識の習得のためのサブコース(D1)と農村・都市部における設計・施工に関する主要専門知識の習得のためのサブコース(D2)を配置し、履修者はどちらかのサブコースを選択してより深い主要な専門知識を習得する。

(E) 総合的デザイン能力を習得する
 技術に対する社会的要求は現場にあることから、現場での技術的諸問題点を明確化しその解決方法を確立するために科学を素養とした分析能力と論理的思考に基づくコミュニケーション能力の習得が要求される。そして、現場での問題点を解決するためには、習得した基礎知識と専門知識を現場にて実践する能力が必要となる。ここでは、現場での問題把握から解決に至るまでの実践的手法を自主的・継続的に学習することを通じて総合的デザイン能力を習得する。

 各学習・教育目標に関連する科目は表-5に示すとおりであり、関連科目群の達成度により各学習・教育目標の達成度を評価する。具体的には各科目の成績を「秀」4点、「優」3点、「良」2点、「可」1点とし、科目群ごとの平均値を総合評価値とする。各学習・教育目標の達成度は、この総合評価値とそれぞれの目標ごとに設定された条件により評価される。 生産基盤コースは生産環境コースと同様に修了要件は124単位であるが、JABEEが定める別途の修了要件を満たすことが必要になる。
  各学習・教育目標の内容とJABEE基準との関連、またそれぞれの達成度評価基準は以下の通りである。

(A) 人類社会における技術の位置付けと技術者としての社会的責務および倫理観を習得する
  (A1)大学・学部および学科の理念を通して人類が直面する諸問題を学び,「農」の立場から多面的に物事を考える能力を習得する
評価対象科目 地域環境科学概論,フレッシュマンセミナー,生産環境工学概論
JABEE基準との関連 (a),(b)

(A2)「食料」、「環境」、「資源」、「エネルギー」などの地球的規模の諸問題を理解するために,人類社会の基礎知識を習得する
評価対象科目 現代社会と経済,人文地理学
JABEE基準との関連 (a),(b),(e)

(A3)農業土木の立場から環境問題を学び,知識を習得する
評価対象科目 土と水の環境,環境学習と体験活動
JABEE基準との関連 (a),(b),(d1)

(A4)技術者の社会的責務を理解し,技術者として持つべき倫理観を習得する
評価対象科目 技術者倫理,資源管理制度論
JABEE基準との関連 (b),(e),(g)

学習・教育目標(A)の達成度評価
 この学習・教育目標は、上記評価対象科目の総合評価値が
2.0以上であることで達成される。

 

(B) 農業工学関連技術の基礎知識を習得する
  (B1)農業土木技術の基礎となる数学に関する知識を学び,これを技術へ応用できる能力を習得する
評価対象科目 基礎数学・演習,応用数学・演習,統計学
JABEE基準との関連 (c),(d1),(g)

(B2)農業土木に関する技術的諸問題の解決に必要な情報処理技術を学び,実験データの解析や直面する問題の分析を行える能力を習得する
評価対象科目 情報基礎(一),情報基礎(二),情報処理工学,環境情報学
JABEE基準との関連 (c),(d3),(e)

(B3)力学,化学,生物学などの自然科学の基礎知識を学び,これを農業土木技術へ応用する能力を習得する
評価対象科目 基礎力学・演習,化学,熱力学,流体力学・演習,機械力学,作物栽培学
JABEE基準との関連 (c),(d1),(g)

学習・教育目標(B)の達成度評価
 この学習・教育目標は、上記評価対象科目の総合評価値が
2.0以上であることで達成される。

 

(C) 農業工学関連技術の専門知識を習得する

 

(C1)測量に関する知識および測量手法を学び,計測手法およびデータ処理手法の基礎能力を習得する
評価対象科目 測量学,測量実習,応用測量学
JABEE基準との関連 (c),(d3),(g)

(C2)農業土木技術に共通する専門知識として「土」と「水」に関する知識と理論を学び,実験を通して理論を応用する能力を習得する
評価対象科目 気象学,土壌物理学,土質力学 ・演習,水理学・演習,水文学,基礎実験
JABEE基準との関連 (d1),(d2),(d3),(g)

(C3)農業土木技術者として取り扱う関連施設を学び,これらを計画・設計・施工するための基礎となる専門知識を習得する
評価対象科目 構造力学 ・演習,建設システム工学
JABEE基準との関連 (d2),(d5),(g)

(C4)農地と農村地域計画について学び,地域資源の有効利用と環境に配慮した整備計画を行うための専門知識を習得する
評価対象科目 農地環境工学,地域資源利用学,農地保全学
JABEE基準との関連 (d1),(d2)

学習・教育目標(C)の達成度評価
 この学習・教育目標は、上記評価対象科目の総合評価値が
2.0以上であることで達成される。

 

(D) 主要な専門知識を習得する
  (D1) サブコースD1に関する知識の習得
 農地・農村のもつ多面的機能や環境保全のための技術とその評価、とくに農村地域における生活環境や環境汚染の実態解明と環境管理に関する知識を習得する。

(D1-1)農地・農村のもつ多面的機能に関する知識を理解し,環境保全のための技術とその評価手法に関する知識を習得する.
評価対象科目 農村計画学,土地改良学,環境リモートセンシング工学
JABEE基準との関連 (d2),(d5),(e)

(D1-2)生活環境や環境汚染に関する知識を学び,汚染の実態解明と環境管理にこれらの知識を応用する能力を習得する
評価対象科目 農村環境整備学,環境土木学
JABEE基準との関連 (d2),(d5)

学習・教育目標(D1)の達成度評価
 この学習・教育目標は、上記評価対象科目の総合評価値が
2.0以上であることで達成される。


(D2) サブコースD2に関する知識の習得
 農村・都市地域における生産環境の整備に際して、地域資源の活用、資源のリサイクル、環境に配慮した生産手段の整備および関連施設の設計や新資材の開発に関する知識 を習得する。

(D2-1)生産基盤施設の整備に必要な知識を学び,施設の計画・立案を行う基礎的能力を習得する
評価対象科目 土木施工法,地水工学,水利施設工学
JABEE基準との関連 (d2),(d5),(e)

(D2-2)生産基盤施設を設計・施工する上で必要な材料に関する基礎的知識を学び,地域資源の活用やリサイクルについて考究する能力を習得する
評価対象科目 土木材料学,鉄筋コンクリート工学
JABEE基準との関連 (d2),(d5)

学習・教育目標(D2)の達成度評価
 この学習・教育目標は、上記評価対象科目の総合評価値が
2.0以上であることで達成される。

 

(E) 総合的デザイン能力を習得する
  (E1)習得した科学技術と農業土木に関する知識を応用し,これを実践する能力を習得する
評価対象科目 専攻実験
JABEE基準との関連 (d3),(d4),(g)


(E2)技術的問題点の明確化と解決のために必要な日本語および外国語によるコミュニケーション手法を学び,理論的思考に基づいた説明能力を習得する

評価対象科目 英語(一),ドイツ語・中国語(一),英語(二),ドイツ語・中国語(二),英語(三),英語(四),外書購読,専攻演習(一)
JABEE基準との関連 (e),(f),(h)

(E3)新たな知識の習得を自主的・継続的に行い,獲得した知識を有効に応用して問題解決を行うための総合的設計能力 を習得する
評価対象科目 専攻演習(二),卒業論文
JABEE基準との関連 (d4),(d5),(e),(f),(g),(h)

学習・教育目標(E)の達成度評価
 この学習・教育目標は,専攻実験,専攻演習(一),専攻演習(二)および卒業論文の評価が「優」であること,かつ上記評価対象科目の総合評価値が
2.0以上であることにより達成される。

 


表-4 生産基盤コース履修科目一覧(単位数)

表-5 各学習・教育目標を達成するために必要な授業科目の流れ
 

 
履修方法
(1)コース登録時期
 本コースの履修登録は3年進級時に行う。その際サブコースの選択も同時に行う。履修登録は学生の自由意志によるものであるが、本コースは資格を取るためのコースではなく、農業土木専門技術者を養成するためのコースであることをよく認識して登録していただきたい。

(2)コース登録上の注意点
 本コースの構成科目は1年次、2年次にも配当されており、本コースを目指すものは1・2年次における履修科目の選択に当たっても留意しなければならない。さらに本コースの修了のためには、上記で説明したように各学習・教育目標ごとに設定された達成度を満足しなければならない。このためには各学習・教育目標に配当されている1・2年次科目において必要な成績を収めていなければならない。従って本コース登録時には本コース構成科目の成績をチェックし、その結果によってはコース選択を受け付けない場合もある。
 以上のように、本コースを履修するためには1・2年次における履修科目選択とその成績が重要であり、本コースの登録を希望するものは、入学時から十分な履修計画が必要となる。
 本コース構成科目の内1年次配当科目は、年間許容履修単位を超えて配当されている。従って1年次配当科目を1年次に全て履修することは出来ない。このため2年次以降になってから履修する必要がある。時間割およびシラバスを参照の上、履修科目を決定していただきたい。

(3)研究室活動
 本コースを修了するためには、
表-4に示される科目を履修し、各学習・教育目標で設定されている達成度を満足する必要があるが、それ以外に研究室に所属して各種の活動を行うことが義務づけられている。この研究室活動は、専攻演習(一)および専攻演習(二)の学習時間として計上され、また同科目の評価に加味される。ここでいう研究室活動とは、各種ゼミにおける参加・発表、収穫祭文化学術展への研究室からの出展、研究室における研修旅行への参加等を意味している。これらは学習・教育目標(G)および(H)を達成するために重要な役割を持っている。
 本コース履修学生は、これらの研究室活動に関して、その活動内容と活動時間を記録として保持することが義務づけられる。すなわち活動ノートを作成する必要がある。ノートに記載される活動内容については、定期的に担当教員の検査とサインを受ける。本コース修了時にはこのノート を提出し、活動時間と活動内容の検査が必要となる。

(4)ポートフォリオ
 本コース履修学生は、本コース構成科目のレポート、小テスト答案、定期試験答案等をまとめたポートフォリオを作成しなければならない。すなわち各構成科目の担当教員より返却を受けて、各自がこれをファイルし保存する。このファイルは、履修学生の達成度自己評価の上で重要な資料となるので、随時見直し、その後の学習に役立てていただきたい。このポートフォリオは必要に応じて提出を求められ、また本コース終了時には必ず提出する。


(5)編入学生の生産基盤コースへの登録基準
 3年次に編入した学生も生産基盤コースに登録可能である。ただし、単位認定の評価は必要となり、本学科内の技術者教育検討委員会で出身学校(大学、短大、専門学校など)の成績およびシラバス等を参考にし、認定科目の評価を行う。その後、本学科の教育改善委員会で承認後、最終的な認定科目が決定される。なお、技術者教育検討委員会による認定科目の評価時に、登録希望者への口頭試問や、出身学校への問い合わせなども適宜実施している。
 
 
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