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東京農業大学・東日本支援プロジェクト

―福島県相馬市を対象として―

<東京農業大学・東日本支援プロジェクトの目的>

人類史上,類を見ない被害を東日本各地にもたらした東日本大震災からの復興は,21世紀に於ける日本国家の浮沈をかけた取り組みであり,政府,東京電力,被災した県・市町村,住民だけの取り組みではなく,日本国民全てが自らできる取り組みを着実に実施して1日も早い災害からの復興を実現しなければならない。
東京農業大学は,農業・食料・環境・資源エネルギー・健康に関する教育研究を行う専門教育機関であり,東日本大震災の支援に関しても,農業技術,食料の安全確保,環境の保全,人々の健康維持の視点から,震災からの復興に向けて,学長を中心とする全学挙げての支援プロジェクトに迅速かつ持続的に取り組むことを決定した。  
また,この東日本支援プロジェクトに対する東京農業大学の目的と基本的なスタンスは,次のとおりである。


<目的>
未曾有の被害を受けた東日本の地域の復興支援を,農学,畜産学,農業工学,土壌学,放射線科学,地域計画,集落計画,農業経済・農業経営学,栄養学,水産学,バイオセラピー学等,多様な研究分野の叡智を結集して実施する。また,東京農業大学に在籍する1万3,000人の学生(被災地出身の学生も数多く学んでいる)の有する学生力を活かした,被災地の組織的な支援を行う。


<支援活動の基本的なスタンス>
国やその他の支援機関と異なり,東京農業大学らしい支援の取り組みの形態を次のように考える。
1)東京農業大学が有する農学分野の知識・技術を最大限有効に活かせる取り組みとする。
2)被災地域の人々のニーズ,要望に即した取り組みを実践する。
3)迅速な問題解決と持続的な問題解決に対応出来る支援組織を形成する。
4)特定地域を支援のモデル地域に選定して,全ての資源を集中投下するとともに,そこから全体的な復興モデルを開発・提案する。


<福島県相馬市で支援プロジェクトを実践する理由>
1)津波による農地への被害が甚大であり,その復興が緊急課題となっている。
2)津波による集落崩壊が発生しており,コミュニティ機能を活かした新たな集落計画が必要とされている。
3)漁港・漁業被害への復興対策が待望されている。
4)放射能による農地・農業生産被害,風評被害への対処が必要とされる。
5)避難住民の健康維持,心のケアなどへの対処が必要とされる。
以上のような問題への対策は,東京農業大学がもっている知識・技術を総合的に活用することによって対応可能である。

<実態調査項目−農業・生活基盤・農業経営への被害と影響>

1.大地震・津波による農業・農村への想定される被害調査項目一覧  

適切な復興技術・対策を開発するためには,大地震・津波による農業・農村への影響を特定の地域の中で総合的に把握する必要がある。地域を単位として見ると,被害は総合的かつ多方面に及んでおり,部分的な解決では復興は困難である。そのため,想定される被害項目を以下のように設定し,被害の実態を総合的に把握することを試みる。

表1 被害調査項目一覧

建物 住居
農作業舎,農機具格納庫
施設
機械
ガラス室,ビニールハウス等
酪農舎,肉牛舎,豚舎,鶏舎(パイプライン,自動給飼機など付属施設への影響評価)
農業機械(トラクタ,田植機,コンバインなどの機械類と作業機など)
圃場 水田 ― 畦畔破壊,地割れ,液状化,地盤沈下,海水の浸水,津波によるゴミ堆積,耕土の状態
― 海水の浸水,地割れ,液状化,津波によるゴミ堆積,地盤沈下,耕土の状態
果樹園 ― 樹木の損傷,海水の浸水,地割れ,液状化,津波によるゴミ堆積,地盤沈下,耕土の状態
水利 取水・排水機場の破壊(施設や揚・排水ポンプへの被害状況)
水路 ― 幹線水路,支線水路の破壊状況
農道 舗装農道の破壊状況(陥没,亀裂,土砂堆積,舗装剥離等)
一般農道(陥没,亀裂,土砂堆積,舗装剥離等)
スーパー農道(陥没,亀裂,土砂堆積,舗装剥離等)
その他 ため池,山林,景観,

 

2.農家・農業経営への被害影響調査

農家・農業経営の再建シナリオ・方策を解明するため,津波,地震による農家・農業経営への被害影響の実態を把握する。


3.在宅居住者および避難所生活者の生活と栄養実態調査

ここでは,被災者(在宅居住者と避難所生活者)の生活の実態,栄養・健康の実態から今後の対策を解明するための基礎調査を実施する。


4.行政機能復活の現状

ここでは,行政機能の復活の現状を把握する。具体的には,次のような項目について調査し,基本的な行政情報に基づき,地震対策が展開できるか否かを把握する。


5.現状の支援の現状

現在,実施されている支援の実態を把握する。

<農地・家畜・農産物への放射能汚染の調査>

1.長期放射能汚染実態のモニタリング調査

はたしてこの調査を東京農大単独で実施することが可能であるか否かという問題はあるが,現時点では次のような調査の可能性を検証したい。


1)土壌のサンプリング・モニタリング定点を決めて定期的にサンプルを送ってもらって放射能汚染の実態と変化を分析すること(特に風の向きと強度,降雨量などとの関係の分析が必要)。

2)同様な視点で野菜などを中心に放射能汚染の実態をモニタリンングする。野菜の種類への影響‐葉菜,果菜,根菜類などで異なるか否かの評価を行う。また,牛乳,鶏,豚肉等の調査が可能か否かも検討課題となる。

3)モニタリング場所の選定(相馬市内のどのような場所で実施するか)


2.風評被害調査

1)スーパーマーケットに対する調査
ここでは,野菜などの商品の売れ行きとスーパーマーケットの防衛行動を把握し,いかに風評被害を抑えるかを検討する。

2)消費者調査

<漁業・漁港調査>

ここでは,オホーツクキャンパスのアクアバイオ学科の教員の協力を得て,漁業・漁港・漁場への被害・影響を把握する。

<農漁村・集落計画調査>

現在,津波被害地域で大きな問題となっている市街地・公共施設・農業集落等の移転・再整備問題,環境の保全問題等について,コミュニティ機能の保全などを含めた街作り,集落づくりが大きな課題となっている。このような問題に対して,次のような調査を行い,望ましい農魚村・集落計画の策定を,市町村,住民の方々と一体で計画・合意形成する。

<プロジェクト研究戦略>

緊急調査は,とにかく迅速に実施しなければ価値がなくなる。

調査期間:短期 半年間(できれば3か月程度)で調査してとりまとめる


同時に次の活動も併用する。

・長期モニタリング調査(地域復興の動き,放射性物質の被害など)

・学生支援活動調査(農業ボランティア,調査支援,調査ボランティア等)  募集にするか,選抜にするか

・地域支援物資の援助活動(農大として学内,地域から集める)

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