台湾国立中興大学 第3回報告書

造園科学科 

角南 元子

 

 五週間の冬休みが終わり、後期が始まりました。三月、台湾に来て半年。帰国が四月になったので、来月はもう帰国です。今、寝てしまうのももったいないくらいに思います。残りあるわずかな時間、目一杯台湾を感じ、目一杯吸い込んで帰ります。

 

 前期が終わり、一学期だけ留学の学生は帰国。そして台湾人の学生のほとんどは実家に帰るので、ひっそりとした冬休みの寮。留学生は一時帰国をする人もいましたが、海外や台湾国内を旅した人が多いようです。冬休みの前は「五週間もどうしよう」という状態の学生が多く、私もそんな中の一人でしたが、とても充実した冬休みになりました。

 

 台湾の正月は陰暦の旧正月に盛大にお祝いします。旧正月、私は台湾人の友達の家に一週間ホームステイをさせていただきました。友達の家はしっかりと昔からの行事をする家庭だったので、年越しの準備、初詣、親戚巡りなど、台湾の正月を一通り体験することができました。

 

 友達のお母さんは、「台湾のお正月、ちょっとめんどうくさいでしょう〜」と言っていましたが、めんどうくさいと言いながらも、しっかりと昔の習慣を守り続けている姿がとても素敵でした。台湾の家庭お正月を過ごし、今の日本の簡略化されているものの多さを感じました。私たちが大切にしていかなければ、どんどん消えていってしまうという焦りも覚えました。

 

 そして、何より充実だった高山実習。二月に八日間、園芸学科の実習に行きました。初めての園芸学科の授業。中国語での授業、まだ知り合いのいない学科、そして「毎朝早起き。夜まで農作業で、とても疲れるよ」と聞いていました。行く前はどうなることかと恐れていましたが、参加して本当に、本当によかったです。

 

 実習は標高2000メートルの山上の、高山試験場。参加した学生は園芸学科三年生二十数名とアシスタントの大学院生五人。

 

 起床時間は毎朝六時でしたが、私は毎日三十分早めの五時半に起床しました。六時半に宿舎から山を登り、頂上にある事務所で先生と合流。朝ご飯。七時過ぎから実習が始まります。

 

 実習の内容は草刈り、果樹の剪定、農地整備、茶の樹の植栽など。私は農大では造園学科なので、農業について本格的に授業を受け学ぶのは初めてでした。日本ではあまり活躍していなかった、マイ剪定鋏を持ってくればよかったと思いました。

 

 一日中畑で作業なので、一日目は疲れ果て、九時には寝ていました。しかし二日目以降は夕食後宿舎へ戻り、麻雀やトランプで遊びました。宿舎への帰り道は電灯の無い山道を懐中電灯で照らし、歩いて帰ります。山の頂上で電灯が無いので無数の星を見る事ができ、それはもう、言葉では言い表せないほどの美しさでした。太陽より早起きの朝は、日の出。大きな空、雲、風、遠く続く山並みを感じながらの野外での作業は、疲れなど忘れるほど感動的なものでした。将来、狭苦しいオフィスで働くより、こっちの方が絶対に毎日が気持ちいいだろうなと感じました。

 

 食事は毎回、学生が自炊をします。一日につき女子学生二名が食事係となり、授業には参加せず、一日中料理。三十数名分の食事を二人で作ります。みんなが「日本料理が食べたーい!!」と言うので、私が当番の日はカレー、豚汁、巻き寿司、天ぷらを作りました。自分の作った料理をみんなが戦争になるくらい勢いよく食べる姿を見て、なんだか子沢山の母親になった気分でした。

 

 実習が終わり、最後の夜はお決まりのおつかれさまパーティーでした。日本人の学生と比べ、普段は台湾人の学生はお酒を飲みません。しかし、先生のいる席では別の話なのでしょうか。台湾人の「乾杯」は「一気飲み」と言う意味です。台湾風のお酒の飲み方も勉強させていただきました。

 

 台中へ帰りたくなくなるほど、みんなとは仲良くなりました。私は交換留学生なので、前期は台湾人の学生と過ごす時間がとても少なかったです。「交換留学生」という少し特別な枠組みにはまっていた前期。今回、同じ物を学ぶ仲間と、一緒に馬鹿して笑う瞬間が本当に幸せだと感じました。

 

 自然の偉大さ、仲間の大切さ。今回、これから生きて行く上でとても大切な物を感じた気がします。

 

 そして、生まれて初めて中国語でレポートを書きました。記念すべき、第一号。実習のまとめ、感想文です。後期は中国語の授業の他に、園芸学科の学生に混じり「葡萄学」「造花学」を受けます。

 

 中国語はまだまだ知らない単語だらけですが、音を聞いて、ピンインに書き変えられるくらい聞き取れる様になりました。これからはライティングの力もつけていきたいです。

 

 今期から新しいルームメイトが増えました。台湾人です。これで私部屋はタイ人、トルコ人、台湾人と私の四人暮らしが始まりました。台湾人のルームメイトが増え、中国語が沢山話せて嬉しいです。一緒に遊びに行ったり、レポート作成を助けてもらったりしています。一歳年下なので、妹ができた気分です。可愛くてしょうがないです。

 

 人情まみれの国台湾。日々、人と人との距離の近さを感じます。ご飯を食べる時、道を尋ねる時、洋服を買う時。いつもそこには必ず温かい笑顔があります。こんな生活に慣れてしまうと、東京に帰るのが少し怖くなってしまいます。

 

 残りの二ヶ月弱、ゆっくり歩いてたいらもったいない。駆け足。台湾を追いかけ、暖かい風の先端捕まえ、日本へ連れて帰ります。