University of the Philippines
Los Banos 帰国報告書
地域環境科学部 森林総合科学科4年
井口 博愛
UPLB(University of the Philippines Los Banos)への1年間の留学は、一日一日が充実した私の人生の中で大変に貴重な経験になりました。フィリピンへ出発前は、1年間の留学の期待と、日本とは文化的・経済的にも異なる国で一人で生活し勉強することに大きな不安を抱えていました。1年間の留学は、楽しいことばかりではなく、もちろん辛いこと、大変なこともたくさんありましたが、それらから逃げずに乗り越えたことで成長したことと思います。フィリピンでの私の1年間の留学生活を報告します。
■UPLB(University
of the Philippines Los Banos)
フィリピン大学は、フィリピンを代表する国立総合大学で、Diliman、Manila、Baguio、Cebu、そしてLos Banosにキャンパスがあります。UPLBは、首都のManilaから約65km南に位置し、Laguna湖とMakiling山があるLaguna州Los Banosにあります。どこからどこまでがキャンパスなのかわからないほど広大で、熱帯植物が溢れる緑が豊かなキャンパスです。UPLBの歴史は、1909年に始まり、1972年に現在の名称となり、今では8つの学部に約6000人の学生が勉強する農林学系総合大学です。
1、College of forestry and Natural
Resources(CFNR)
College of Forestryから1998年6月にCollege
of Forestry and Natural Resources(CFNR)と名称が変わりました。CFNRは、UPLBの他学部が集中するLower Campusから離れた、Makiling山を少し登った中腹にあるUpper Campusと呼ばれている場所にあります。校舎の周辺は、豊かな熱帯林に囲まれ、教室を一歩出ればすぐに調査や植物同定の実習に利用できる演習林です。
CFNRは、4つの学科で構成されています。Department of Social Forestry and
Governanceは、住民との関わりを考慮した社会林業の研究・教育です。Institute of Renewable Natural Resources(IRNR)は、育林施業に関する研究、方法論、森林管理など幅広く網羅されています。Department of Forest Biological Sciencesは、森林内の昆虫や病気など森林生物学に関する分野の教育に重点を置いた学科です。Department of Forest Products and Paper
Sciencesは、パルプ生産、製紙技術の他、非木材生産物である竹、ラタン等に関する林産業についての学科です。
2、授業について
UPLBのfirst semesterは、6月から始まり、中途半端な時期に来た私は、first semesterは履修できないので、Department of Social Forestry and Forest
GovernanceのPolitical Economy and Administration for Developmentのクラスを聴講しました。UPLBの授業や雰囲気、フィリピン英語に慣れることができ、second semesterに向けての準備になりました。その他には、Department of Agribusiness Managementの日本語のクラスにアシスタントとして参加しました。日本に興味のあるUPLBの学生と交流ができる良い機会になりました。
second semesterでは、CFNR(College of Forestry and Natural Resources)のPrinciples
and Concepts of Social Forestry,、Environmental and Natural Resource
Worldviewsと、PEのHula and Tahitianを履修しました。
4、5月の2ヶ月間に渡って開講されるSummer Classでは、IRNR(Institute of
Renewable Natural Resources)のNatural Science10; Forest as Source of Lifeを受講しました。授業の他に1泊2日でField Tripがあり、Subicへ行きました。Field Trip では、マングローブ林でも実習、熱帯雨林でのトレッキング、博物館、植物園の見学をしました。
日本は、一生懸命に必死で勉強しなくても卒業できる大学が少なくないですが、フィリピン大学は異なります。クラスは、少人数制です。科目によって異なりますが、だいたいattendanceやquiz, assignment,
presentation, group exercises, individual project, outputなどが与えられ、そしてexamが数回あり、gradeの評価基準になります。
フィリピンの教育制度は、日本とは異なり、小学校6年、そして高校4年の10年制なので、ストレートで大学に入学する1年生は、12年制の日本に比べて2歳若いです。そのせいか授業も暗記主体だと思います。そして学部の学生は、ほとんどがフィリピン人です。
大学の設備は、日本の充実した環境からはほど遠く、校舎は古く、図書館はコンピューター検索システムが無く未だにカード検索を行い、本の多くが何十年も前のが多いです。キャンパス内は、頻発に停電し、授業の進行を妨げることもしばしばです。
しかし、それは「学ぶ」ことには大きな障害にはならないとUPLBで勉強し、UPLBの学生とたくさん交流する中で感じました。留学というと、日本では欧米の先進国で学ぶ傾向がありますが、どんな学問でも環境が良ければいいというわけではないです。UPLBは、留学の第一目的である熱帯地域の森林管理、発展途上国と呼ばれる国の環境問題を自分の目で現状を実際に見て勉強したいというものだったので、現場に近いのは魅力です。また最近は、インターネット等の情報メディアの普及が進んでいるので、最新の情報も簡単に得られます。途上国で生活しながら学ぶ不便さを受け入れ、現場の利点を活用すれば、先進国で机上の空論のように勉強するよりも学ぶものは多いかもしれません。
CFNRのキャンパス
クラスメイトと一緒に
■インターン
5月下旬にsummer classを終えて、IRRI(International
Rice Research Institute)でインターンをする機会をいただきました。IRRI は、UPLBのキャンパスに隣接するように位置し、世界中からrice scienceの科学者が集まってRice
Science is for Better Worldという言葉を掲げていて主に世界の食料問題などのために研究している、世界的にも有名な研究機関です。1960年代にロックフェラー、フォード両財団によって、世界の食料生産の向上に貢献するために設立されました。
インターンの内容は、IRRI敷地内にある博物館で上映されるIRRIに関する業績や活動内容を紹介する英語解説の映画の日本語版を製作するプロジェクトに挑戦しました。英語解説を翻訳し、最終的には日本語のナレーションを吹き込みました。
IRRIのインターンの経験では、UPLBの留学生活だけでは体験できないことや、IRRIの研究者・関係者の方々とたくさん出会い交流したり、お手伝いをさせていただきました。食糧問題や稲についての知識が深まり、今まで知らなかった世界に触れ、これからも様々なことに挑戦し吸収して向上したいと強く思いました。
IRRI
■SEARCA International Residence
私は、1年間の留学をSEARCA Dormで生活しました。SEARCA Dormは、フィリピン人の学生も住んでいますが、基本的にはSEARCAから奨学金を受けている、海外から来たUPLBの正規学生が住んでいて、主にMS、phDの学生で、MSが一番多く、交換留学生は少ないです。現在は、フィリピン、ミャンマー、タイ、ラオス、インドネシア、ベトナム、中国、カンボジア、アメリカ、カナダ、東ティモール、日本などの学生が約80人住んでいます。
私は、留学生活の最初一人で住んでいましたが、11月から仲良くなったミャンマー人の友達と一緒に住みました。ルームメイトができたことで、今までより困ったこと悩みなど何でも相談ができ、お互い助け合いながら良い関係を築けました。ルームメイトとは、毎日生活する中で、一緒に英会話の勉強をしたり、早朝にランニングや部屋でヨガなどをしたりと本当に親しくなりました。
SEARCA Dormでは、様々な国の人たちに出会えたくさん話をする機会があり、一緒に生活する中で異文化に触れ理解が深まり、仲良くなりました。
仲良しな中国、ミャンマー、カンボジアからのdome
mate
フィリピンの人々の暖かく、底抜けの明るさや本当に幸せそうな笑顔をたくさん見て、フィリピンという国、人々の魅力に引き込まれました。貴重な1年間という留学生活の中で、考えさせられること学んだことを吸収し、大きく成長できたと感じます。
人生の中で良い人との出会いは、自分を振り返り反省したり、自分の哲学・価値観・考え方を揺るがし良い影響を受けます。人との出会い、友だちは何にも変えられない人生の財産です。
日本とは全く異なる環境で生活し勉強し、全てをポジティブに受け止められ、どんなことがあっても楽しんで生活ができ有意義な毎日を過ごせたのは、フィリピンで出会った人々、様々な国から来た留学生、素晴らしいフィリピンの人々との出会いに恵まれ支えてもらったからだと思います。この1年間の留学は、私の人生を大きく変えたと思います。最後に、この留学で出会った大切な友だち、支えてくださった全ての方々に心から感謝しています。本当にありがとうございました。