村の古民家
「食と農」の博物館には、現在約3600点の古農具が収蔵されています。農具収集の歴史は、本学前身の東京高等農学校初代校長で、伊勢神宮の農業館(現 神宮農業館)を創った田中芳男先生が明治37年、標本室を設置したことに始まります。しかし先の戦災で全ての古農具を焼失し、現在収蔵のものは昭和43年 から、全国の校友や父兄関係者の協力により寄贈されたものです。この収集は戦後、他機関よりも早く取り組まれており、それらは産業考古学会から「日本の産業遺産300選」の指定を受け、本学の誇る学術コレクションの一つに挙げられています。
当館では、学術情報課程の協力により、古農具の歴史的背景や使用法について観覧者がイメージし、理解できる展示として、農家の古民家を再現したジオラマ 展示を試みました。ジオラマとは資料とその環境や背景を立体的に再現するもので、観覧者にとって総合的な理解につながる展示です。当館では、これを農大 「村の古民家」と呼び、多くの古農具の展示に活用していきます。また本学の学芸員の資格取得を目指す学生の教材としても、このジオラマ展示では、資料に触 れながら展示の実際を学ぶ場として多様な学習が可能となります。学生や観覧者にとって、農大「村の古民家」をはじめ、祖先が残した様々な古農具から情報を 集積し、そこから過去を知り、学ぶことで、未来を考える機会になってもらえればと思います。
「村の古民家」は、特定の地域のものを対象とした復元ではありませんが、関東地方に現存した江戸後期に建てられた稲作農家の一部を参考に再現していま す。展示の製作では、限られた展示空間であり、また教材として安全に扱いやすくすることを考慮して、多少デフォルメした形での古民家にしてあります。