~トゲフタオタマムシを求めて~ 最近オサ掘りばかりしているので何か箸休め的なものが欲しかったのだ。何かいいものは無いか・・・ 神奈川の丹沢山系で有名なトゲフタオタマムシと言う昆虫の名前が挙がり、早速図鑑で調べてみる・・・ ・・・カッコいい・・・こんな素晴らしい虫が近くにいるとは!これは捕りにいくしかない。 しかし、有名産地に行っても捕り尽くされていることがありえるので、今回は新規開拓を試みた。 1月29日 朝、宮ヶ瀬行きのバス停に集合。愛甲方面を目指す。 参加者は沢田(筆者)、坂田、山口、山田、河合の5人。代わり映えのしないメンバーである。 採集地に選んだ場所は夏季に訪れたことのある場所であり、スギとモミが混生している。 ホンドニセハイイロハナカミキリ(以下ラギウム)も生息しているため、トゲフタオがもし捕れなかった場合の保険も安心だ。 バスを降りると、早速登山を開始。登山道には雪が残っており、標高差が感じられた。 やはり今年は山が乾燥しているのか、歩行虫は掘っても出なさそうである。 トゲフタオは冬季、針葉樹の樹皮下に潜んでいるので、スギの皮を剥がしつつ道を行く。早速ベニヒラタムシが現れた。 ![]() ![]() 右手にスギ林が見える。 ベニヒラタムシ 奴らの潜んでいそうな「樹皮の捲れた部分」を意識して剥がしていく。 トゲフタオタマムシと同じように成虫越冬をする、ヒシモンナガタマムシも平地では同様に採集出来る。 皮を捲るとまず目に付くのがヤニサシガメ。これほど鬱陶しく感じたことはないが、トゲフタオと同居しているかも知れな いので油断は出来ない。スギカミキリやヒメスギカミキリが穿孔して衰弱している木が多く、春になれば多数の成虫が見 られる事だろう。 ![]() ![]() なかなか出てこない・・・ スカートをめくるように樹皮を剥がす坂田 樹皮を剥がす事10分、何の変哲もない樹皮の下から虫影が・・・ いたっ!!! ![]() やっぱりいた!とりあえずいる事が分かったので、みんなのテンションも上がり、 『おい、そこ俺が見ようと思ってたのに!』 『また沢田か・・・』 『もっと頑張ろ!』と、あとの4人も本気を出し始めた模様。 しかし、その後追加は得られず、オオトビサシガメやクサギカメムシばかりが出てくる。 山口はオオトビサシガメを毒ビンに入れながら「いいんだ俺カメムシ屋だから」と言って気力を回復する。 かなり剥がしながら登ったが、山頂付近に近づくにつれスギの植林からモミと広葉樹の混生林になってしまった。 トゲフタオは下山コースに託し、ラギウム採集に切り替えることに。奴らはモミの立ち枯れの樹皮下に潜んでいる為、 立ち枯れを捜索しながら標高を上げる。山は乾燥気味で良い条件の立ち枯れはなかなか見つからない。 この時、皆の体力は大分消耗していて、これ以上標高を上げることはやめ、下山ルートへ。 皮を捲りながら進んでいると、聞いたこともない大声がある男から発せられた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~いたぁ!!」 声を上げたのは河合。その手にはしっかりとトゲフタオタマムシが握られていた。 普段大声などあげない河合が叫んだことも驚きだが、まさか河合に捕られるとは・・・!!! ![]() ![]() やったね河合!! 体色は木の肌と酷似している その後、下山を続けながら採集をしたが、結局トゲフタオは河合を最後に追加は得られなかった。 余りの悔しさに狂乱した坂田がモミの木の「ご神木」を発見。独り占めを企む坂田であったが、山田、山口という 2頭のシデムシ達が高速で乱入し、坂田が樹皮を剥ぐよりも先に解体されていく。「てめえら!俺が見つけたんだぞ(涙)」 結果的にご神木のおかげで皆がラギウムを得ることが出来たが、坂田が浮かない顔をしていたのは言うまでもない。 高い位置の樹皮は坂田と山口が肩車をして採集した。 ![]() ![]() ※生木ではないのでご安心を 割り出した個体(Rhagium femorale ) 終わりに 今回の採集では、参加者全員がトゲフタオタマムシを得ることは出来なかったが、卒論で疲れた体を癒すには 十分だったと思う。大きな成果だと思ったのはトゲフタオのポイントを新しく見つけることが出来たことと、 皆で採集を楽しめた事だろう。いつも急な採集の誘いに乗ってくれる仲間にこの場を借りてお礼を申し上げる。 沢田 光 ![]() 山頂付近から:左から筆者、山田、山口、河合、坂田
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