館山採集記
相馬純
皆さんは、オオキンカメムシという昆虫をご存じだろうか?
彼らは、鮮やかな橙色の背面に黒色の斑紋が豪快に散りばめられ、身体の隅々に至るまで紅紫色の光沢を帯びており、気品に溢れている。
このベンガルトラのような色彩のコントラストにピンクタイガーアイのような光沢を放つ極上の半翅目を手に入れる為、私達は吸い寄せられるように房総半島の最果てへと向かうのであった。
ちなみに、今回の採集は私(相馬)と嶋本、城、山田の四人で行った。
朝日に照らされた海ほたるの輝きは私にこの採集の前途を安心させてくれたのであった。
採集ポイントに到着した私は、日当たりが良くて周囲に風除けのある葉裏を見ていく。
どうやら、椿の葉裏には期待に反して集まっていないようだ。
とにかく、サイズのある葉裏を覗き込んでいく。
本当にいるのだろうか?疑念が湧いてくる。
いたらすぐに分かるような見た目と大きさだ。見えない以上はここにはいないのかもしれない。
それでも、絶対に捕まえてやるぞと意地になっていると、常緑樹の陰に実る香しき果実と巡り会うことができた。
寒波に耐える、美しき天然。
房総の海を、寂しく船が進んでいく。
私としては、たった七頭しか採集できなかったことは不服なので、また近いうちに一人でリベンジに行くつもりである。
カメムシ、魅惑の昆虫の虜になった私は飽きもせずに採集を続けていくのだろう。