久米島採集記




6月11日、羽田から那覇までは飛行機で、那覇から久米島へはフェリーを使い夕方到着。期間は1週間。今回は単独採集である。

 

1ヶ月前、飛行機のチケットを買った段階では目的はクメジマイボブトグモのはずだった……。今の時点で日本のトタテグモ下目で僕が未採集の科はワスレナグモ科とクメジマイボブトグモ科の2科となっている。クメジマイボブトグモは日本で唯一イボブトグモ科イボブトグモ属に属し、久米島にしか生息しない珍しい種類である。
「何としても採集してやる‼︎」

と意気込んで採集の計画を立てた。しかし、図鑑に図はあったものの、ネットで調べてみてもそれらしい写真が見つからない。行く1週間前にタイプ標本以降採れていないとのことを聞いて、僕は絶望した。
「まぁ無理そうだし、気楽に採集しよう……」

と久米島採集はそんな諦めにも似た気持ちで始まりを迎えた。

久米島は沖縄の西に位置する外周30kmぐらいの小さな島である。よって一度目の石垣で僕のおハコとなったママチャリでの採集である。

 

宿に到着後、僕はすぐに採集着に着替えた。1ヶ月前、クメジマイボブトグモについて調べたところ、洞窟の石の下か崖地の地中に住んでいるらしいとのこと。久米島の洞窟は“ヤジャーガマ”1つのみで、
「範囲が決まった洞窟で採集した方が楽そう」

と思いそこでの採集を予定していた。ヤジャーガマは昔の風葬の後がそのまま残された洞窟で、壺が沢山あるらしい。

1日目は翌日からの採集の下見を兼ねて行ってみたが、想像以上の怖さですぐに帰ってきてしまった。どこか骨がない採集できそうな場所があるだろうと内心思っていたが甘く、実際はどこもかしこも骨だらけであった。帰りがけにライト周りもしたが月齢が悪くボーズのまま宿に戻った。

2日目、午前中に、もう一度洞窟探検を試みた。夜に比べてハッキリ骨が見えた。こんなに沢山、骨とわかる形をした人骨を見ることはもうないだろう。結局中で採集することは罰当たりな気がして、しなかったが、帰りがけ洞窟入り口付近でトタテグモが歩いているものを採集し、洞窟を後にした。

午後に実家から電話があり、急用ができたとのことだったので翌日帰ることになった。

帰りの船は翌日の朝だったため、それまでの間、採集しながら島を一周した。

 

3日目、帰路につく。

 

今回持ち帰ることができたものは、リュウキュウマツの材と前日に外灯周りしてとれた虫わずかで、採集期間も短くなったが、初の1人採集で得るものは大きかった。今まで先輩方に同行させてもらっていたため、わからないことがあっても聞けば済むことだったが、今回は1人で気楽な分、自己責任な部分も多かった。同行させてくださる方がいるだけでどれだけ精神的に助けてもらっていたか分かる旅だった。



学部3年 長野宏紀