西表採集記その3

学部4年 真嶋 豪

 前回の調査から約2か月。筆者はまた西表の地を踏むことになった。期間は11/27~12/5と、もはや冬といっていい時期であった。


 11月27日。朝一番の飛行機で羽田を発ち、お昼過ぎには石垣島へ。石垣島についてみると思ったほど寒くはない。さすが亜熱帯といったところか。しかし天候は悪く、フェリーは波間をジャンプでもするかのように跳ねて西表島に向かう。西表島にも厚い雲がかかっており、前途多難な採集を予感させた。
 西表島について荷物を宿におろし、いざ採集へ――というところで宿の駐車場にある車止めのブロックが目に入った。
 筆者自身もなぜそのブロックが気になったのかは分からないが、何か吸い寄せられるようにブロックに手をかけ、ひっくり返していた。するとそこにはレモンイエローが鮮やかなマルガタオオヨツボシゴミムシが5匹鎮座していた。

 

マルガタオオヨツボシゴミムシ

 初日からこれまで採集できていなかった憧れの昆虫が採集でき、非常にいい気分で採集へ向かった。が、その直後土砂降りの雨となり散々な目にあうこととなった。

 2日目朝、宿の駐車場でマルガタオオヨツボシゴミムシを1匹採集してから2日目の採集へ。川沿いの林道でこれまで採集できていなかったシロアリモドキやクロツバメ、ヒメアサギマダラを採集し上々な気分で車に戻る途中、アリにたかられているヤエヤママルバネクワガタの死骸を発見し、別の林道では大きなハナムグリの幼虫やヤエヤマトタテグモを掘り出した。
 夜間のライトではカドガシラヒラタミツギリゾウムシやヤエヤマネブトクワガタ、コブラアリバチが飛来し、夏に来た時よりも良い結果に驚かされた。

 

ヤエヤママルバネクワガタ                          ヤエヤマネブトクワガタ

 

 3日目。卒論調査中、何やら見慣れないチョウがいたので掬ってみたところ紫色の美しいヤエヤマムラサキであった。昼間に得られたのはそれくらいだったが、ライトにはオニツノゴミムシダマシやキベリヒゲナガサシガメなど様々な昆虫が採集できた。


オニツノゴミムシダマシ

 2日連続の良い成果に気分よく車を運転していると、路上に何やら黒い影が。

 前日死骸を拾っているマルバネクワガタの姿が一瞬頭をよぎるが、さすがにこの時期にはもう生きていないだろうと頭の中で否定する。それでも一応確認してみようと車を止めてライトを向けてみた。

 おや…………?

 

ヤエヤママルバネクワガタ

 西表島ではイノシシ猟真っ盛りということもあり森の中に入るつもりはなかったため採集できるとは思っておらず、喜びもひとしおであった。


 4日目は卒論のためほとんど採集できず。夜間のライトも前日までと比較すると貧果である。だが、ぼーっと飛来する蛾類を眺めているとひときわ大きな蛾が飛来した。以前、研究室でも話題にあがった大型美麗蛾、サビモンルリオビクチバだった。

サビモンルリオビクチバ



 5日目、車を運転しているとハンドルをとられるほどの強風により、まともに活動できない事態に陥った。仕方がないのでチャイロクビナガカメムシを採集するべくアシナガキアリの巣を採集したが、シロオビアリヅカコオロギしか好蟻性昆虫は採集できなかった。



 6日目も強風だったため網は振れず、ビーティングに切り替える。ここまでの行程であまりビーティングを行っていなかったこともあり、アラメズビロキマワリモドキやウスアカユミアシサシガメなど初採集種もいくつか採集できた。

 

林道から荒れた海を臨む                          ウスアカユミアシサシガメ


 7日目は全く採集している暇がなく、8日目もマレーゼトラップの回収などで時間をとられたため特筆するような昆虫は採集できなかった。

 そして最終日、9日目。卒論の調査を終えてお土産を買い、西表を後にする。半袖でも十分な暑さのフェリーの船内テレビでは大雪のニュースが流れており不思議な感覚に陥った。



 2014年、筆者は1か月近い期間西表島に滞在したが、たとえ昆虫が採集できなくとも西表島に飽くことはなく、とても有意義な時間を過ごすことができた。卒業前になんらかの形として残しておこうと思いこの採集記を書いたが、読んだ方が少しでも面白さを感じて頂ければ幸いである。