東京農業大学

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【連携協定地域活性化の役割担う】 果樹とヤムイモを活用 鹿児島県喜界町

2019年11月13日

名誉教授       豊原 秀和
国際農業開発学科教授 杉原たまえ

鹿児島県の喜界島は奄美群島の北東部に位置し、面積56.93平方㌔の小さな島である。人口は7,500人で、多くは基幹産業であるサトウキビ生産とゴマ生産、畜産業が主体である。
喜界島は「美しい村連合」に加盟しており、埋蔵文化財、世界的に有数といわれる隆起サンゴ礁、集落で見られるサンゴの石垣、豊かな自然と農業景観や島特産のゴマの乾燥風景などが印象に残るという。
しかし、いったん集落の中に入ると荒れ果てた屋敷や無残な姿で残された廃屋が多く目につく。喜界町観光課の資料によると全く出入りのない空き家が129軒、廃屋257軒、合計で386軒もあるという。
基幹産業であるサトウキビが全島を覆い、見事な景観を醸し出し、耕作放棄地はほとんど見当たらないが、今後は担い手不足やサトウキビ農家の高齢化により現状を維持するのは困難な状況である。
私たちが取り組んでいるのが空き屋敷や廃虚を利用した観光果樹園である。この計画のこだわりは導入果樹による果樹園ではなく、島固有のかんきつ類の収集と復活に重点を置いていることである。喜界島にしか見られない花良治(けらじ)ミカン、島ミカン、フスー、クネンボなど多種類のかんきつが過去には多く見られたが、それらが減少あるいは消滅している。
そこで、空き屋敷を利用して花良治ミカン100本、その他のかんきつを各10本ほど栽培し2年目を迎える。しかし南西諸島は毎年台風の襲来に見舞われ、成長を妨げることやかんきつ類は収穫までに5年くらい必要とするため、農家は無収入となる。
そのため、昨年から導入したのが熱帯産ヤムイモである。種苗は宮古亜熱帯農場から導入し、町の営農支援センターで1年間試作を行い、生産量が期待されたことや、作業が容易で高齢者でも栽培が可能と判断し、30戸ほどの農家を集めて講習会を開催、技術指導を行った。栽培が容易で年配者でも容易に収穫可能な品種を選別し、営農支援センターで収穫したものを配布した。
その結果かなりの生産が見込まれたことから、株式会社全笑に依頼し、商品化を試みた。全笑は、農家から1㌔200円で買い取り、ヤムイモパウダー、カットヤム、とろろなど、商品化に成功した。
鹿児島県は「かるかん饅頭(まんじゅう)」などが有名であるが、今後は喜界島産「かるかん饅頭」などの二次製品の開発に向けて菓子メーカーなどとの連携を進めている。その他、菊芋、ムクナなど機能性食材などの試作を継続していく予定である。

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ヤムイモについての説明会

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