東京農業大学

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渋谷ゼミ

1.津波被災地の復興にみる日本の食の原点

主食の生産現場を知らずして食を語ることなかれ

皆さんは日本人の主食であるお米が生産されている現場を見たことがありますか?
都市に住む人々が多くなる中で、自分たちが毎日食べているお米がどのように生産されているのかを知らない人が増えています。これは、東京農業大学に通う学生も例外ではないのです。主食が生産される場所、すなわち食の原点である水田を知らずして食は語れません。

渋谷ゼミでもほとんどの学生が実際の水田を知りませんでした。そこで、食の原点である農業・農村の実態について理解するために2016年7月13~15日にかけてゼミ生13人全員で福島県相馬市と南相馬市を訪問するゼミ合宿を行いました。

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被災地で展開される次世代水田農業経営

相馬市と南相馬市の水田は東日本大震災の津波によって大きな被害を受けました。震災後5年あまりが経過する中で、一般の農業・農村の理解だけではなく、わが国農業が直面するいくつもの課題を知ることができました。

相馬市の水田では、田植えの代わりに種籾を直接播いて省力化を図る「乾田直播」という農法を取り入れることで少ない人数の農業法人でも大面積での水田経営が行えることを学びました。また、農家も単に農業生産を行うだけでなく、「農家レストラン」を開設することで6次産業化と豊かな食文化を提供していることを知りました。宿泊も「農家民宿」を利用させていただき、農家の生活にも触れさせていただきました。

最終日には、現地の農業法人の経営者の方々に加え、福島県庁や南相馬市役所、南相馬土地改良区の方々と「座談会」を開催し、水田農業や農業復興についての課題を議論しました。

「実学」の理念を生かした現場での学び

東京農大は世田谷区という都会にある大学です。また、国際バイオビジネス学科は食料に関する経営学を学ぶ学科です。このように都会の学生たちでも、食の原点である水田農業や農村生活の実態を理解することは非常に重要なことです。こうした活動が、次に紹介する東京農業大学の学園祭(収穫祭)での文化学術展示につながっています。

2.収穫祭文化学術展示「被災地から東北、そして日本へ」

震災復興をテーマとした収穫祭展示へのチャレンジ

渋谷ゼミでは、2014年から連続して東京農業大学の学園祭である「収穫祭」の文化学術展示に出展しています。2016年は「被災地から東北、そして日本へ」というテーマで津波被災地の水田農業を日本農業のトップランナーとする方策について展示を行いました。

東日本大震災の発生から5年あまりが経過しました。津波によって甚大な被害を被った宮城県や福島県の水田農業地帯では農地が再整備されるとともに、大型農業機械も導入され震災前よりも営農条件は改善されています。

一方で農業就業者の高齢化や所得の低さなどから震災を機に農業から離れる決断をする農家が多く発生しました。こうした離農農家の農地を引き受けて耕作するために「農業法人」という農業の会社が多数設立されました。つまり、津波被災地では「優良農地・大型農業機械・農業会社」という日本の水田農業のトップランナーとなるべき器(うつわ)が整ってきたのです。

しかし、器が整っただけではトップランナーは生まれません。そこで、渋谷研究室では津波被災地で多数発生している農業法人の経営展開を提示するために、ゼミ生が被災地や全国の農業法人や農家にインターンシップとして訪問し、フィールド調査を行い、その成果を2016年10月28日から30日にかけて行われた東京農業大学第125回収穫祭で展示と発表をしました。

独力でのインターンシップとフィールド調査

収穫祭においでいただいたお客様に見ていただくためには、単なる参考書の転記では申し訳ありません。そこで、渋谷ゼミ3年のゼミ生13名全員が農業現場の実態調査に基づいて作成したオリジナルデータでの展示にこだわりました。調査先は、「津波被災農地」「先進的水田農業経営」「先進的6次産業化経営」の3つに分かれています。

渋谷ゼミの特徴はインターンシップやフィールド調査についてアポイントから調査実施までを独力で行うことです。

見ず知らずの相手先に主旨を説明し、日時の調整、宿泊のお願いまで行います。事前に質問事項を整理して、現地視察や経営者に対するインタビュー調査を行います。

調査後もそのままではありません。9月には大学に戻りパワーポイントを用いた調査報告会を開催することで、フィールド調査の内容を13名全員が共有します。その後は10ページ前後の報告書を各自でとりまとめます。報告書を作成することで、単に現場を知ることから深く考察する訓練ができます。こうした一連のプロセスは、社会現象を相手にする社会科学の主要な研究手法の一つである「社会調査」の基本です。渋谷ゼミのゼミ生はこの基本を3年生の夏休みに体験します。

企画力と団結力で乗り越える収穫祭「文化学術展示」

被災地発の未来の水田農業とはどのようなものか。さらに、来場されるお客様にその内容をわかりやすく伝えるにはどうしたら良いか。ゼミ生は収穫祭前1ヵ月間悩み、もがき、苦しみます。しかし、その成果は収穫祭の展示物やプレゼンテーションとして花開きます。2016年は28枚のパネル展示、13冊の報告書、8つのプレゼンテーションを展開しました。さらに、福島県庁と相馬市役所の職員の方からのゲストプレゼンテーションも実現しました。

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3000名を超える来場者と達成感

収穫祭の3日間で渋谷ゼミの展示への来場者は3,009人でした。来場者の皆さんからの感想も非常に前向きで励まされるものが多くありました。ゼミ生からも、普通に大学生活を過ごしていたら経験できなかった、組織をまとめることの難しさを学んだ、理論的に考える力を養うことができた、チームワークの大切さを学んだ、忍耐力を学んだ、などの成長をうかがわせる意見が多く見られました。

被災地や将来水田農業のあり方についての展示を通して学生が成長する場、が渋谷ゼミ収穫祭展示なのです。

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3.オープンキャンパス企画「マーケティングを知ろう」

ミッション「国際バイオビジネス学科を高校生にわかりやすく紹介せよ!」

東京農業大学では毎年8月上旬に「オープンキャンパス」という高校生や保護者の方々に大学を紹介するイベントがあります。大学全体の行事ですが、各学科でも趣向を凝らして学科の紹介をします。国際バイオビジネス学科でもいくつかの研究室から学科紹介が行われました。マーケティング研究室の一つである渋谷研究室では3年生が中心となって「体験!いろいろなご飯を試食!~マーケティング戦略を一緒に考えよう~」という企画を行いました。

企画会議:マーケティングをわかりやすく伝えるには?

3年生が中心となって企画する中で、高校生には「マーケティング」という概念がなかなかわかりにくいのではないか、ということになりました。そこで、「マーケティングを知ろう」というテーマで事例を用いてわかりやすく伝えようということになりました。

事例はみんなが毎日食べている「お米」を取り上げることになりました。学生たちはマーケティングを日ごろから授業で学んでいますが、教えるとなると自分がまだまだ理解できていない部分や、知らないことが多くあることに気づいたようです。ですので、授業で取り扱っている資料や教科書などを参考にもう一度勉強し直しました。マーケティングについてほとんど知識が無い高校生にもわかるように説明するためには、自分が十分に理解していないといけないからです。

また、説明の仕方も、パワーポイントをベースとして、簡単な言葉やイラストなどを使ってイメージしやすいプレゼンテーションを心がけました。また、親しみやすさを出すために、2人で掛け合いながら進める「対話型プレゼンテーション」としました。さらに説明の中にクイズも入れ込み、お客様が主体的に関わるアクティブラーニングの要素を加えました。

ファシリテーション型のマーケティング戦略立案

対話型プレゼンテーションを終えたら、お客様から5名程度のグループを6つほど作り、グループ討議をしていただきました。テーマはプレゼンテーションと関連づけて「小売価格が5kgあたり4,860円の石川県産有機栽培コシヒカリ」のマーケティング戦略を考える、というものです。来場者がいきなりマーケティングの討議していただくのは難しいため、各グループにファシリテーター(議論の進行役)として3年のゼミ生が1名ずつ入り参加者の議論を整理しながら進行させました。

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3年生にとって、グループ討議のファシリテーションは3年前期に開講される「バイオビジネス経営学演習」で何度もトレーニングしてきました。日頃お米を直接購入している母様方の積極的な発言もあり、議論の誘発や整理も何とかうまく進めることができました。その結果、「マーケティング」というものをお客様にわかりやすく伝えることができたのではないかと思います。

初めてのプロジェクトで得たものは

企画の段階から担当した学生にとっては、初めての経験ばかりで大変だったようです。学生の声を聞いてみましょう。「準備を始めたのはオープンキャンパスの2か月ほど前の5月半ばからです。こんなに前から準備を始めるなんて早すぎると思いましたが、オープンキャンパスが終わってみてもっと早くやっていればよかったと感じました。本番までにプレプレゼンテーションを渋谷ゼミの1年生を対象に2回行い、本番同様に行ってみることで気づくことや分かることがたくさんあり、良いプレゼンテーションに近づけることができたと思います。初めてのプロジェクトで得たものは、事前の準備の大切さを学んだことです。(3年生Hさん)」

このプロジェクトで、ゼミ生たちはマーケティングを実践的に学び直したとともに、大きな成果を得るためには準備が大切なことも身をもって体験できたようです。国際バイオビジネス学科に実験室はありません。

しかし、さまざまな演習授業や実地研修、さらにはゼミ合宿、フィールド調査、今回のようなオープンキャンパス企画を含むゼミ活動そのものが学びの場なのです。

渋谷ゼミの紹介

研究分野 農業経営学

研究テーマ:
農業の企業的経営管理手法、経営戦略
研究内容:
「日本の農業はこの先誰が担っていくのだろうか」という問題意識のもとで、従来の家族経営農業に留まらず、農業法人による農業、企業による農業などの分析を実証的に進めています。特に、長年企業に勤務してきた経験を生かして企業の合理的な経営を農業に適用する方策を中心に考えています。

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