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スーパー農学の知恵

愛犬とのお散歩、何を見ますか?

農学部バイオセラピー学科 教授 増田 宏司

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伴侶動物学研究室の大きなテーマの一つでもあります、犬のしつけについてご紹介します。

犬のしつけ(躾)といえば皆さんご存知のとおり、「おすわり」や「ふせ」などの命令(コマンド)を犬に覚えさせること、他人に迷惑をかけない犬に育てることなどを指しますが、伴侶動物学研究室では、これらのことだけ
をしつけとは呼んでいません。

命令に応えることだけをペットに求めるならば、ロボットを買ったほうが良いでしょう。電源を切っておけば、他人に迷惑をかけることもありません。犬を飼うという行為は、犬という感情を持った生き物と飼い主が一緒になって成長し、生活を充実したものにしていくことなのです。わがままし放題の愛犬に家族の生活が振り回されるなど、時には思い通りにならない現状に四苦八苦することもあるでしょう。そんな時に役に立つのが犬のしつけですが、しつけはしつけ教室などの特別な場所でしか出来ないかというと、そうではありません。何時でも何処でも、犬をしつけることは可能なのです。

自宅で愛犬をしつける飼い主はたくさんいますが、散歩を利用して愛犬をしつける飼い主はあまりいません。実は散歩は、愛犬のしつけに非常に役立つのです。

散歩中に愛犬に注意を払える飼い主は、多くの場合しつけが上手な方です。このような飼い主が散歩中、具体的に何をしているかというと、「散歩中に愛犬が時折送ってくる視線に気付いて、声をかけてあげる。」これだけです。もちろん、愛犬が散歩中に振り返りたくなるほどの魅力を飼い主が持ち合わせていなければ、この関係は成立しません。飼い主は自分にとって一番! 飼い主が大好き! という関係を愛犬との間に作っておく必要があります。しかしこの良き関係ですら、成立させるのはそんなに難しいことではありません。人間に無視をされるのが何よりの苦痛である犬にとって、自分に気付いてくれる飼い主が疎ましい存在になるはずがありません。頑張りすぎてあれこれとしつけの方法を試してみる前に、まずは愛犬の視線に気付いてあげること。これが飼い主と愛犬の関係を良きものに保つ第一歩なのです。

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ところで、散歩中に愛犬がどれくらい飼い主に視線を送っているか、ご存知でしょうか? 伴侶動物学研究室の調査によると、犬は散歩中、2〜3メートルに1回は飼い主に視線を送っていることが判明しました。もちろん、犬の年齢や飼い主の犬との接し方、散歩の環境によってこの頻度は前後します。しかし実際、この結果は我々の予想をはるかに上回るものでした。思った以上に犬は飼い主に注目していたのです。これほどの頻度で飼い主に視線を送る犬に、家の中で100%気付いてあげることは可能かもしれませんが、さすがに飼い主も疲れてしまうでしょう。散歩中なら時間も限られていますから、かなりの頻度で飼い主が愛犬に気付いてあげることが可能でしょう。散歩は愛犬の運動の確保と、飼い主との良き関係を保つためにおこなうもの。まずはあなたの愛犬が、散歩中にどのくらいあなたに視線を送っているか、数えることから始めてはいかがでしょうか?

伴侶動物学研究室では、犬のほかにも様々な種類の伴侶動物を研究しています。私たちの基本姿勢は「伴侶動物には必ず飼い主がいる=飼い主を含めた研究を進める」です。伴侶動物の環境設定や、ペットロス、問題行動の治療など、広範囲にわたって研究を進めています。


 

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