東京農業大学

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教員コラム

網走にこだわり 評判のそば店

2017年5月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 菅原 優

オホーツクの地域資源 Foods Who(15)

元市職員が経営

 「作物統計」によれば、2015年の全国のソバ生産量は34,800㌧で、このうち北海道で生産されたソバは16,000㌧、約46%を占めている。北海道では生産量全国一を誇る幌加内町の「幌加内そば」が有名だが、オホーツク地域でも冷涼な気候を活かしたソバ栽培が行われており、地場産のソバを用いたそば店も各地で見られる。
 網走市でそば店「そば切り 温(おん)」を経営する中村九二五(くにお)さん(67才)は、元市職員の経歴を持ち、2006年12月に農大オホーツクキャンパスにほど近い天都山の中腹に開業した。中村さんは開業する以前の30代から仲間と趣味でそば打ちを楽しみ、イベント等でもそばを提供するなど、確かな腕前を磨き、一念発起してこだわりのそば店を開業した。営業日は土日を含む週5日で、客席は28席。お昼前後の時間帯にはお客さんの足が絶え間なく、駐車場の車内で待つお客さんもいるほどの評判のそば店である。


手作りと地場産素材の活用

 そのこだわりの一つは、近隣の2軒のソバ生産農家から玄ソバを仕入れ、石臼を使って自家製粉を行い、水まわしには網走の水道水(藻琴山湧水)を浄水器に通して使い、そば本来の風味を活かした手打ちの“十割そば”を提供しているところにある。そばつゆにもこだわって、かつお節を自ら削り「かえし」には網走市内の醸造会社2社のしょうゆを用いることによって「網走の味」を作り上げている。わさびも網走市に工場を持つ金印わさび社で製造された「山わさび」を用いる。メニューも多彩で、食材にはできるだけ地元産を使うことを心掛けており、網走湖で獲れたスジエビをかき揚げにしたメニューは、期間限定ということもあって人気メニューとなっている。他にもゴボウやホタテ、カキなどを用いた天ぷらや、手作りのお菓子や抹茶を提供するなど、サイドメニューにもこだわりが感じられる。
 こだわりの二つ目は、店舗の外観・内装である。店舗の周辺は自然に囲まれ、ときおりエゾリスが現れるなど、カラマツ林に囲まれている。そば打ちで使う木鉢も自作のものを愛用しているという中村さんは、ものづくりが好きで、開業の2年前からそば仲間とほぼ手作りで店舗を組み立て、柱や梁には地場のカラマツ材を用いて、土壁を塗り、昭和30年代の家屋を再現した。内装には、昔ながらのランプを灯し、落ち着きがあって趣のある演出にこだわっている。また、床板にも、道産のカツラ、タモ、セン、ナラなど多様な樹種を使い、趣向を凝らしている。


海外客も注目

 お客さんは年配者から若い家族連れまで幅広く、リピーターとなっている地元客の他に、近年では外国人観光客も訪れるようになってきたという。
 中村さんは、「そばは昔から日本人に馴染みのある食べ物で、ルチンを多く含んでいることから健康食としても注目されている。そばを通して網走の味わいを感じてもらい、おいしいそばをこれからも提供していきたい」と意気込みを語ってくれた。

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