東京農業大学

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教員コラム

オホーツクから届ける「想い」

2017年4月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 上田 智久

オホーツクの地域資源 Foods Who(14)

香遊生活のはじまり

 香遊生活は、株式会社舟山組(建般・造園業)が1991年にハーブ事業部を創設し、その後(1997年)、農業法人有限会社香遊生活として分離独立した企業である。香遊生活の代表も舟山組と同様、舟山秀太郎氏が務めている。ただし、香遊生活の運営を実質的に担うのは妻の舟山はるみ氏である。香遊生活は、無農薬有機栽培にこだわったハーブの生産・加工・販売を主たる事業としている。昨今では多数のメディアに紹介されるなど、美と健康に関心を持つ女性層から脚光を浴びる注目の企業といえる。
 舟山はるみ氏は、ハーブビジネスを手掛ける前からハーブに関心を持っていた。きっかけは海外旅行である。海外に出かけ、おいしい料理に出会えばその味を再現するため、試行錯誤を繰り返し行っていた。そして、味の決め手となる素材にたどり着いたのがハーブであった。これを機に、ハーブの魅力にひきこまれ、ハーブ研究を始めるようになったのである。時を同じく、夫である秀太郎氏も、建設業界の将来を勘案する中、ハーブ事業に参入する意思を固めたのであった。秀太郎氏は妻のハーブに関する知識を深化させるため、海外研修に送り出すことで、生産から加工に必要な知識を習得させていったのである。


持論は「子育てと同じ」

 ハーブは、オホーツクの地域性を最大限にいかすことができる植物である。香遊生活のある北見市は、ハッカで有名な地域として名高い。ハッカもハーブの一種であるため、まさに北見はハーブ生産にとって適した環境といえる。こうした地域性の後押しもあり、香遊生活はハーブ事業を本格化させていったのである。しかしながら、順風満帆にビジネスが行われてきたわけではない。自社農場にて、当初は100種類ものハーブを生産していたが、現在は60種類まで絞り込んでいる。はるみ氏のハーブ生産における持論は、「子育てと同じ」である。「全てのハーブに個性があり、その個性に合わせて栽培・収獲・乾燥・ブレンドを一貫して行っている。個々のハーブに合わせた育成は決して楽ではないが楽しいひと時であることが、子育てと同じだと思う」と話す。
 また香遊生活は、土壌にもこだわりを持っている。農薬・化学肥料は一斉使用せず、敷地内の落葉や畑の収穫残渣を腐葉土にすることで地力対策を行う。収穫においても、丁寧に育てたハーブを全て手摘みしている。誰もが安心して口にできるハーブを育て、さらにハーブの機能性に着目した商品によって多くの笑顔を作ることが、香遊生活の活力となっている。

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