東京農業大学

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教員コラム

大規模畑作と和牛生産で6次産業化に挑戦

2016年9月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 菅原 優

オホーツクの地域資源 Foods Who(8)

複合経営から農産加工・販売への取り組み

 網走市から知床方面に国道244号線を45分ほど走ると標高1,547mの斜里岳が迫ってくる。その斜里岳の麓に広がる清里町で、畑作農業と和牛生産の複合経営を展開しているのが有限会社澤田農場である。経営規模は畑地79haと牧草地5haを合わせた84haで、清里町の農家の平均規模約41haを大きく上回る大規模経営である。畑作部門では小麦・澱粉原料用馬鈴薯・てん菜といった畑作三品に加え、大豆12ha(品種名;ユキホマレ)の栽培を行い、和牛部門では黒毛和牛の素牛生産(繁殖牛約100頭)を行っている。
 経営の中心を担うのは、1998年に東京農業大学オホーツクキャンパスの産業経営学科(現在の地域産業経営学科)を卒業した澤田篤史氏で、未来のオホーツク農業の発展を求めてフランス研修に参加したり、北海道農業士になるなど、地域農業を牽引する若手農業者の一人である。本誌6月号で紹介した「一般社団法人オホーツク・テロワール」の活動にも積極的に参画している。
 農業経営に常時雇用を導入し、2005年に法人化するが、2007年頃から牛肉の小売販売を徐々に開始し、和牛の低価格部位や大豆の規格外品を有効活用した農産加工に取り組んできた。そして地域の様々なイベント等で積極的に販売を行いながら、開発製品の磨きあげを行ってきた。さらには2011年には清里町の助成を受けて農産加工施設を整備し、農林水産省の総合化事業計画の認定を受けて、6次産業化に向けた取り組みを本格的に開始している。


大豆と和牛を中心とした開発商品

 澤田農場の商品レパートリーは実に多彩である。大豆から作られた「手造り味噌」は道産米の糀を使用し、自然発酵で3年の歳月をかけている。さらにこの「手造り味噌」をもとにして、総菜「おかず味噌」3種(ふきのとう、にんにく、青なんばん)を開発し、さらに自社の経産和牛肉と自家製味噌と金時豆の豆板醤で仕込んだ「和牛肉味噌」を商品化した。
 また、オホーツクの粗製海水にがりを使用した「てづくり豆腐ゆきむすめ」の製造・販売を開始した。さらには豆腐づくりの過程で生産される副産物「おから」を使用した「おから煎餅」を開発した。原料となる大豆を余すことなく、とことん利用して商品開発につなげている。
 販売方法は、地域イベントでの販売の他、地域の小売店での委託販売を徐々に広げている。地元の道の駅「パパスランドさっつる」やコープさっぽろ美幌店内の「オホーツク・テロワールの店」等でこれらの商品を購入することができる。
 かつて農山村地域では、農家それぞれが家庭の味を大切にし、小規模な農産加工業者がいて地域の食文化を支えていた。澤田農場の商品レパートリーの数々は、元々、地域が持っていた食文化を再建しているようにも見える。また、一つ一つの商品に農村地域の生活の豊かさが込められている。6次産業化のビジネスモデルの一つとして、今後の更なる活躍に期待したい。



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