東京農業大学

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教員コラム

アラゲキクラゲ

2015年9月1日

地域環境科学部 森林総合科学科 教授 江口 文陽

天然物を利用した食彩(5)

バカスを活用した沖永良部産による6次化

 キクラゲやアラゲキクラゲは、春から秋に広葉樹の倒木や枯れ枝に発生する。主に日本、中国、韓国、フィリピン、タイ、マレーシアなどの東南アジアや北米、南米など世界の温帯から熱帯の地域で広く観察することができる。我が国での一般的な栽培方式は、広葉樹木粉に栄養剤(コメ糠やフスマなど)を添加した培地で生産される。空調管理施設を施さないハウスを活用し、夏場の比較的気温の高い時期などに生産を行う農家も見られる。日本で流通される乾燥したキクラゲやアラゲキクラゲは、その多くが中国産であるが、生産者の顔の見える鮮度の高いきのこを購入したいという消費者の要望が増えていることも事実である。
 鹿児島県沖永良部島では、温暖な気候をいかし無農薬で栽培する理念のもとアラゲキクラゲなどのきのこが生産されている。今井宏毅氏が社長を務める沖永良部きのこ株式会社のアラゲキクラゲ生産には、沖永良部島特産のサトウキビの葉やバカス(砂糖を搾り取った残渣)が活用されている。アラゲキクラゲの機能性と、その効果をいかした6次産業への取り組みを視野に入れた加工食品の開発も行われている。バカスを培地とした菌床から発生した子実体は、木粉、稲わらなどの菌床培地よりも機能性評価によるいくつかの数値が良好であった。離島における6次産業への取り組みを目的とした開発商品“きくらげ佃煮”は生の子実体とほぼ同等の機能性効果を有していることもわかった。こうしたアラゲキクラゲなどの事例研究と同様に機能性を科学的に検証し、地域活性化を東京農業大学の技術力でサポートし日本の産業振興に貢献したいと考える。


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