|
川野 因 教授
残暑お見舞い申し上げます。農栄会会員の皆様にはその後、お変わりございませんでしょうか?
今年は年明け早々の3月、千年に一度の東日本大震災に見舞われ、地震と津波により一瞬のうちに多くの尊い命と多くの人の生活基盤が奪われてしまいました。また、千葉県浦安地区などを中心に東京近郊でも液状化現象がありました。栄養科学科の卒業生の中にも被災された方がいらっしゃるのではないかと心からお見舞い申し上げます。加えて、東京電力・福島・原子力発電所の事故は科学技術の進歩が時にヒトの管理と制御を超えて暴走する事実と経済発展という名のもとに自然を蔑ろにしてきた現代社会の実態と危うさを露呈させました。大震災の犠牲者の方々には心からの哀悼の意と、被災者の皆様には心からのお見舞いを申し上げます。
あれから半年、被災された方々の状況は一向に改善されないということですので、皆様の胸中や如何ばかりかと拝察申し上げます。半年という時間は長く、短い時間だったと思います。「去る者は日日に疎し」「喉元過ぎれば熱さ忘れる」といった諺に人間の愚かさを反省する一方、「禍福は糾える縄の如く」という諺の中でこれまた反省です。今を生きる私たちには明日に向かって立ち上がることが求められています。いつまでも悲しんでばかりもいられません。顔を上げ、前をむき、懸命に生きる方策を探り、未来へと歩まなくてはなりません。どうか皆様におかれましても「生きている幸せ」と「ヒトの中に生きている」ことを確認いただき、確かな絆で明日への歩みを始めていただければと願ってやみません。
ところで大学・栄養科学科の現状を半年前に遡って報告させていただきます。3・11の東日本大震災当日、大学にはおよそ1000名の学生・教職員がいました。震災直後は全員がグランドに集合し、徒歩にて自宅に向かうものを除き、100名近い学生は学生会館や百周年記念講堂に泊まり、朝を迎えました。幸いなことに、在校生に人的被害は全くありませんでした。本当にうれしいことでした。食べ物は近くのコンビニや学生生協でパンやカップ麺、菓子類を求めて食べましたが、一時的に食糧は店から無くなるという事態に遭遇しました。栄養科学科も大半が院生でしたが、ほぼ全員が近くに下宿する友達などをたより、早い時間帯に帰宅できました。一方、教職員は電車やバスの復旧を待って深夜に帰宅するもの、第一会議室にて夜を明かすものと、一時的にではありますが十分な被災経験をしました。この間は誰かれとなく研究室にあったお米や食材を持ち寄り、おにぎりを結び、インスタントみそ汁で一夜を過ごしました。この時ほどおにぎりがこんなに美味しいとは思いませんでした。いつ何時余震がやってきてもおかしくない状況は今まだ続いています。皆様にはくれぐれもご留意ください。
そして、平成22年度の卒業式(通常:3月20日)は取りやめとなり学科単位での学位記伝達式が開催されることとなりました。また、3月20日は管理栄養士国家試験もありました。そのため、栄養科学科では3月20日に食品栄養学専攻、3月21日は管理栄養士専攻の学位記伝達式を行いました。両日とも質素で、厳粛な祝う会でした。また、4月2日に予定されていた入学式も中止、4月11日に新入生を迎える会として順延され、こちらも学科単位での開催となりました。例年学外へバスを連ねて行ったオリエンテーションも中止され、統一本部の学生さん達にもお手伝いいただき、新入生の交流会を持ちました。新入生からは先輩や教員と触れ合う機会となって良かったと好評を得ましたが、この半年間は卒業式、入学式といった大学行事も変更を余議なくされました。そして、去る9月18日には「ホームカミングデイ」が例年の卒業5年目、10年目・・といった校友に加えて平成22年度卒業生を迎え新講義棟にて開催されました。農栄会の役員さんをはじめ皆様には大変お世話になりました。新講義棟は今年7月に完成し、後学期から授業で使用されています。これに伴い、1号館での講義は今後すべてが中止となります。このように栄養科学科がある世田谷キャンパスも将来に向けて大きく生まれ変わろうとしています。
最後に、来年、我が栄養科学科は創立50周年を迎えます。皆様の活躍こそが栄養科学科の歴史であり、宝であり、財産です。このような時代の大きな変革期には人間の智恵が試されると考えています。皆様には今後ともご自愛のうえ農大生としての誇りをもってそれぞれの仕事にご精励頂き、時には大学に顔を出して皆様・先輩諸氏の良き智恵をこれから巣立つ若者たちへ繋いで頂ければとお願いし、挨拶とさせていただきます。 |