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ニュースリリース

国際食料情報学部シンポジウム報告(2016年8月7日開催)

2016年8月22日

受験生



 国際食料情報学部では、東京農業大学創立125周年記念事業の一環として、俳優の永島敏行氏を講師に招いて、「食と農?日本から世界へ」のテーマのもとに、シンポジウムを開催しました。同シンポジウムは、2016年8月7日(日)12時30分から、世田谷キォンパスのアカデミアセンター8階・会議室Cを会場に行われ、オープンキャンパス実施期間中でもあることから、本学への進学を志望する高校生も多数聴講に訪れ、学内の学生・教員、一般の来場者を含めて約80名が参集しました。


【地場産物や、生産者と消費者の交流に注目】
 基調講演では、永島敏行氏が、情熱あふれる語り口で来場者に訴えかけ、ご自身が千葉県・蘇我の出身であり、幼少期には、潮の引いた浜で貝を取って東京湾の恵みを強く認識した生い立ちを踏まえつつ、人々が「地もの」(=地場の産物)を食べて育つことの大切さを出発点に、食農分野に寄せる思いや多年にわたる実践の経過を織り交ぜて、意義深い講演を展開しました。
 永島氏は俳優としての豊富なキャリアの中で、農業・農村に関わる多くの人々を演じ、その分野に造詣を深めて行く中で、秋田県でのコメづくりや体験農場の展開、東京・丸の内での行幸マルシェを主宰し、最近では長野県での田んぼアートの取組なども手掛けて来られました。このうち、マルシェの取組をめぐっては、全国各地の農林漁業者がこだわりの生産物を販売することのできる場を設定し、(1)(産地全体というよりも)生産者個々人が消費者から評価されること、(2)生産者自らが販売価格を決められること、(3)生産者が積極的に消費者と会話をすること(つまり、相互交流の促進)、これらの点を重視した事業の立ち上げからの経緯を強調されました。


【国際食農科学科(新設)を含む各学科の魅力も強調】
 総合討論では、国際食料情報学部を構成する従来からの3学科(開発・経済・ビジネス)
に加え、2017年度から新設予定の国際食農科学科を加えた4学科より、それぞれ教員が1名ずつコメンテータとして登場し、所属学科のセールスポイント等を紹介した上で、永島氏の基調講演に対して、特に共感した点や、質問事項を順繰りに提起しました。
 コメンテータは、国際農業開発学科教授の夏秋啓子氏(副学長)、食料環境経済学科教授の大浦裕二氏、国際バイオビジネス学科准教授の井形雅代氏、国際食農科学科(新設)教授の古庄律氏の4名が務めました。
 この中で、古庄教授は、新設予定の国際食農科学科の特徴にも触れ、「国際」というキーワードは、単に海外に目を向けて教育・研究を行うという意味に止まるものではなく、国内各地の多様で個性的な食農に関する産物・資源の掘り起こしや一層の活用に力点を注ぎ、さらにその価値を海外にも発信して行こうという発想であることに言及しました。また、こうした取組を進める上で、いわばコーディネータになれる人材教育が必要である点を取り上げました。


【食農分野のプロデューサの養成が重要】
 教育活動や人材育成、消費者意識、日本農業の進路等にわたる4名のコメンテータからの幅広い質問内容を受けて、永島氏は懇切かつ明快な応答を展開されました。とりわけ、食農に関連する分野の今後の取り組み方向をめぐり、(1)生産者側は消費者との対話の機会を重視すること、例えば、農産物をネット販売する場合であっても、同時平行で直売等の場を積極的に設けて、消費者にとって「リアル感のあるものをネットへと繋げて行く方向が大事」と指摘されました。
 また、永島氏は、食農分野の事業発展をめぐって、総合的な視点でコーディネートのできる人材が必要であること(上記・古庄教授の話)を支持しつつも、それと合わせてプロデューサとしての役割を果たせる存在が極めて重要であると指摘し、多様な課題に対しても、いわば「アンテナの立てられる能力の開発」が求められるという点を強調されました。
 まとめ役としてのコーディネータに加えて、新たな取組を創作して行くプロデュース機能の大切さを、力強く投げかけて下さったと受け止めています。この点は、正に新設学科(国際食農科学科)を含め東京農業大学の教育活動に対する永島氏からの熱いメッセージと受け止めるところとなりました。
 さらに、永島氏は、わが国の食農関連業界が注目すべき観点を数多く提示しながら議論を展開し、例えば、少子化のもとで空いてきた都市部の小・中学校等の施設の再利用を通じて、全国各地の農業をPRする拠点としたり、生産者と消費者の交流の推進を促すスペースとすること、一方で、日本が誇る精度の高い農業技術等を海外にも移転しながら展開するビジネスの強化など、示唆に富んだ多様な観点についても言及されました。

【若い人のエネルギーを行動に繋げる】
 また、夏秋副学長からは、学生たちが卒業後に、新規就農をはじめ食農分野の起業を志す際に、躊躇しないようにどのように後押しをして行くべきかという教育論の本質に通じる論点を提示しました。これについて永島氏は、若い人たち各自が「自信を持って取り組めることが必ずあるはずであり」それを伸ばし、「行動のエネルギーとするように促すこと」と答え、高校生や大学生へのエールになる話を贈ってくれました。
 永島氏と来場者とのやり取りも行われ、高校生や本学学生が積極的に質問しました。質疑応答で永島氏は、大学卒業後に茶農家を後継しようと考える高校生に対して、将来にわたり農業生産のクオリティーを大切にすること、また、農業教育の分野に関心を寄せる本学学生とのやり取りでは、先達の農業指導者たちの培った伝統的な技術に注目しつつ、それを現代にも有効に活かし・アレンジして行く取組の大切さを、説得力ある口調で話して、議論は最終場面まで盛り上がるものとなりました。
 以上、今回のシンポジウムでは、食農分野の取組の推進に向けて、生産者と消費者がしっかりと手を結ぶこと、国内各地に存在する掛け替えのない産物・資源・技術などを再認識して行くこと、さらに人材教育の在り方について、本学の進むべき方向も含めて議論が深められました。講師の永島氏並びにシンポジウムをご聴講下さった方々、開催にあたりご指導をいただいた関係各位に厚くお礼申し上げます。


                        文責:五條満義/国際食農科学科(新設)

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