東京農業大学

メニュー

ニュースリリース

学長メッセ?ジ 平成23年度 新入生の皆様へ

2011年4月7日

お知らせ



 去る3月11日に発生した東日本大震災において被災された多くの方々に心からお見舞いを申し上げます。
 今日この時点でも行方が分からない方、さらに避難所等で不安な生活をされている方々が沢山おります。また、被災地や原子力発電所で自らの危険を顧みず、救援活動に当たっている消防士、自衛隊員、医療関係者、海外からの救援部隊が献身的な救援活動をしております。様々な活動に対する感謝の念で一杯です。本学は、この大震災で未だ多くの方々の安否確認ができない状況や福島第一原子力発電所の崩壊での計画停電による節電や交通規制がされるなか、余震や安全面を考慮して、世田谷キャンパスでの入学式を中止いたしました。本学は、この大震災による被災地や被災者の速やかな復興を願うと共に独自の復興支援を実行してまいります。


実学の旗のもとで学ぶ



 新入生の皆様ご入学おめでとうございます。
 これから大学生活を送る皆さんの心に留めてほしいことがあります。まず、探究心を持って広く学んで欲しいことです。
 大学は社会における学術の中心として、何ものにもとらわれない真理の探究を目指している処です。大学の教育は単に今ある知識の切り売りをする場でなく、研究と結びついた教育であり、真理探究を基礎とした学びの場です。それは皆さんが様々な事象に対して正しい課題を立て、追求し解決していく態度を学ぶことです。
 これまでの学問は、大航海時代の未知への挑戦、天文学に始まり、産業革命での地下資源の活用による物理や化学の飛躍的進歩、そして遺伝子解明による急速な医学・生物学の進歩、さらに経済、情報社会学も大きく発展してきました。その間、学問の領域は細分化深化し、大きな成果を上げ、人々は豊かな生活を手にいれました。一方地球環境は、化石エネルギーの大量消費による気候変動など様々な影響をうけ、人類生存に危機が迫りつつあります。これは、学問が深化し細分化されてしまい、個々の専門分野の知識が、我々の生きる意味や意義と重なる部分が小さくなって、生きていくこと、総合的な知との乖離が生じてきていることだと考えます。農学分野に様々な科学が参入する中で農学が一層進化するためには、斬新な考えをもった若い人達が必要です。興味ある自然や生命現象に関する真理の追求は当然ですが、地球的視野で人類が生存しつづけるために、何が大切かを広く学んで欲しいと思います。
 横井時敬先生の書に「盈科而進。えいかじしん」があります。水は、水田では一つひとつ空いている穴を満たしながら先に流れ、全面を満たしていきます。学ぶ上でも基礎や教養知識を広く身につけてから先端的専門分野を深く学んで、実学(実事求是:事実を実めて是を求める)を身に付けて下さい。
 次に、生涯の友を得て欲しいことです。皆さんは、これまでとは違い心の余裕と自由な時間を持つことができるはずです。それは一人ひとり様々で、サークル活動によって生活を充実させることもありますが、それだけでなく知的な遊びも必要です。貪欲にモラルを守って様々なことをやってみることです。皆さんは何ものにもとらわれず、多くの仲間と語らい時には意見対立し、真の友人をつくることができると思います。大学は、生涯の友を得るには恵まれた環境です。皆さんが心を開いて友と語り合う機会を積極的に求めていかれることを期待します。
 さて、この度の大震災が私たちに何をもたらしたでしょうか。自然への畏敬の念と人の絆の大切さではないでしょうか。高度な専門知識を駆使してつくり上げた原子力発電所やIT社会の脆さを浮き彫りにしました。現代の文明は豊かさや便利さを実現する反面、それを支える複雑なシステムが弱くなっていることが証明されました。それは発展に突き進む複雑な現代社会では、一人ひとりの役割が軽くなってしまったことによると思います。これから必要なのは、共感力やチ?ムワーク力を身に付けて、仲間や他人を動かし、進むべき方向を正確に実行に移す人間だと信じます。今、私たちが生きている時代は、単なる百年の区切りではなく、世界の文明が質的に大きく転換していく何百年に一度の歴史の節目ではないでしょうか。皆さんには、食料、エネルギー環境など人類の生存のための課題に対して、それら解決のため日本、世界の農業および関連産業をしっかりと支えていける人となることを期待します。皆さんは、緑と生命の伝道者として、その使命の大きさを深く認識してください。
 新入生の皆さんが大震災に遭った仲間の姿を心に留め、志を立て希望を胸に新しい時代に向かって、東京農業大学で大いに学ばれることを期待しております。


平成23年4月

                       
東京農業大学長
東京農業大学短期大学部学長
農学博士 大澤 貫寿

ページの先頭へ

受験生の方