わが国での美しい景観と豊かな緑を総合的に実現するための景観緑三法(平成17年6月1日に全面施行)が施行されており、今改めて景観への関心が高まっています。しかし、日常何気なく用いている「景観」という言葉ですが、この漢字二文字で表わされている世界は非常に幅広く、そして奥深いものです。難しい議論は抜きにして、そもそも「景観」とは一体どのようなものなのか、おさらいしてみましょう。
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そして、今、世間にはIT(情報技術)の革命の嵐が吹いています。右も左も、猫も杓子も、老若男女問わずITの時代です。造園の世界でも公園の設計や都市の景観設計にITを利用することは多くなってきました。「より良いものを造る過程として、より分かりやすくより効率的にするため、有効利用すること」を目指し、本稿ではITを利用した、道路景観づくりについてわかりやすく述べたいと思います。
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「景観」という単語を辞書で引くと、多くの辞書では、「風景」,「景色」といった言葉がまず出てきます。一般的な「景観」の認識も「風景」、「景色」と同義で扱われていると思います。では、なぜあえて「景観」という言葉を用いるのでしょうか?
言葉の成り立ちを調べると、山、川、または、建物があるといった空間的な物の存在や場面、つまり風景などの空間の視覚像を意味する「景」と、見る人が感じる印象や価値観というものの見方や考え方をいう「観」という概念についての言葉を合成したものといわれています。学術的な用語の定義としてはいろいろありますが、一言でいうと「人間が自らの周りをとりまく環境に抱く認識の枠組み」ということになります。
「風景」、「景色」が、空間的、物理的な見る対象を表しているのに対して、「景観」はそれらの視覚的対象から受ける心理的な意識や感情を含むものであるということです。
道路は、線的な連続性と方向性、そして公共性から景観上重要な位置にあることが多いものです。特に高速道路は、高速走行による視知覚的な環境の特殊性や、高規格な道路構造による切盛土や橋梁(きょうりょう)などの多さ、大きさという構造面での特徴があります。そのため、景観の認識や地域景観への影響等、考慮すべきものがいろいろとあり、設計要領各編においても景観への配慮が説かれています。
高速道路における景観の特徴としては、視点が道路の本線内、施設内(内部景観)と外側(外部景観)にあることが挙げられます。更に、道路内側からの景観には休憩施設利用時のような動的な景観(シークエンス景観)の二つの要素があります。
また、高速道路は自動車専用道であるため、一般の街路などとは異なり、道路内部よりも道路の外側が沿道・近隣の人々の生活に密着しており、外部景観に対する配慮が重要となっています。図にあるのはVR(ヴァーチャルリアリティ)を利用して、実際の高速道路の景観を再現したものです。
道路景観の基礎的な内容についておさらいしてみました。私が注目しているのはこの道路景観というものをIT技術を利用して、自由に再現したいということです。みなさんも、もう一度、身近な道路や家族で高速道路をドライブした時に景観というものに注目してみてください。そして、私たちと一緒に美しい道路景観づくりに参加してみませんか。
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