東京都内には、森といわれる大きな樹林がいくつかあります。その中でも、特に大きくよく知られている森が「明治神宮の森」です。新宿や渋谷の高層ビルから眺めた明治神宮の森は、建物や道路に埋めつくされた都会という大海原に浮かんでいる緑の島のようにみえます。明治神宮は、三が日で300万人を越す人々が初詣に訪れる神社です。日本一の初詣の人出が示すように明治神宮は、神社の中では飛び抜けて高い知名度があります。明治神宮の名が広く知られているのは、神社をとりまいている森の存在です。背が高く青々とした木々は重厚で落ち着いた森の姿を創り出し、荘厳な神社の雰囲気を醸し出しています。森と神社が一体となって明治神宮の存在を鮮明にしています。神社の森はしゃ社そう叢といわれており、近年、お寺の森もこの社叢の概念に含めることがあります。
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明治神宮の森は、太古から自然の営みによって現代まで継続してきた原生林のように見えます。しかし、明治神宮の森は、人がつくった人工の森です。明治45年7月に崩御(死去)された明治天皇を奉祀する神宮として、大正4年から造営工事が始まりました。神社の樹林としての林苑工事には、樹木代金は全く計上されていませんでした。植え付ける樹木は、国民からの献木によって調達する計画になっていました。献木は台湾、朝鮮から樺太まで全国から279種10万本の樹木が集まりました。