目のビタミン

鳥はトリ目ではない

中西教授東京農業大学短期大学部 醸造学科 教授 (醸造学科食品微生物学研究室)

東京農業大学前副学長。醸造学科食品微生物学研究室。応用酵素学、バイオプロセス学。

中西 載慶

主な共著:

『インターネットが教える日本人の食卓』東京農大出版会、『食品製造』・『微生物基礎』実教出版など

ビタミンの2回目は、ビタミンAの話。現在、13種類のビタミンの化学構造や働きが明らかにされています。大別すると水溶性ビタミン(ビタミンB群8種、ビタミンC)と脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)に分類されます。水溶性ビタミンは、体内に蓄積されず、必要量以上はすぐに排出されます。脂溶性ビタミンは、一度内臓に蓄えられたのち、必要に応じて利用されます。ビタミンA(物質名はレチノール)は、脂溶性ビタミンの代表的存在で、目の網膜にある光や色を感じる物質の構成に関与しています。従って、不足すると視覚障害が起き、明るいところから暗い所に入った時、目が慣れるまで長時間かかったり、夜盲症(トリ目)になったりします。また、ビタミンAには、胃腸や気管支などの粘膜や皮膚などを正常に保つ働きもありますので、不足すると、細菌やウイルスに感染しやすくなります。

ビタミンAの必要量は、1日0.5〜0.8・程度です。ビタミンAのほとんどは肝臓に蓄積されていますから、ビタミンAを多く含む食物といえば、当然、動物の肝臓ということになります。トリやブタの肝臓では、100gあたり10〜15・も含まれています。その他魚や卵にも多く含まれています。さらに、緑黄色野菜に含まれるβ―カロチンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。従って、通常の食生活では、ビタミンAが不足することは、ほとんどありません。しかし、飢餓状態にあるアフリカや東南アジアなど一部の地域や国では、今でも1億人近い子供がビタミンA不足で、年間25〜50万人が視力を失っていると推定されています。このような状況をみると、最近のテレビに映し出される遊び半分の大食い番組は、本当に苦々しく、腹立たしい限りです。

ところで、我々の視力1.0とか1.5の決め方について少し説明します。視力検査の時、「C」のような形をみて、輪の空いているところが、上か下か右か左かなどを検査します。この「C」のマークをランドルト環(考案者ランドルト)といいます。ランドルト環は直径が7.5・で、空いている隙間は1.5・となっています。検査基準は、5m離れた位置から、このマークを見て、マークと隙間が見えたら、視力1.0としています。もし2.5mの距離からでなければ見えないときは、視力0.5となります。逆に、5mの1.2倍あるいは1.5倍後ろから見えれば、1.2あるいは1.5ということになります。実際には、距離を変えて測定するのは不便ですので「C」のマークの大きさを変えて同じ距離から検査しているのです。ちなみに、最も視力のよい動物は? というと、鷲や鷹などの鳥類といわれています。一説では、人間の8〜10倍の視力があるといわれています。特に、高いところからネズミやウサギ、ヘビなどを狙うのですから、動体視力も優れているのです。トリ目などという言葉は、トリに失礼で、実際にトリ目なのはニワトリぐらいで、その他の鳥類は、一般に目がよいとのことです。

最近、人間、見た目が…などといって外見ばかりに気を取られていますが、問題は中身。心眼の検査も怠りなく。こうでも言わないと、容姿などに全く自信のない私などは立つ瀬がないもので…。次号ビタミン「B群」につづく。

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