東京農業大学短期大学部の教育GP
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取組について
1.取組の趣旨・目的 2.取組の具体的内容・実施体制等

1.取組の趣旨・目的

昭和25年に東京農業大学短期大学が創設され、農業科と醸造科の2学科体制で始まったが、昭和31年に栄養科が新たに加わり3学科体制となった。その後社会のニーズに対応するために、平成4年に農業科を改組して現在の生物生産技術学科と環境緑地学科となった。現在は生物生産技術学科(入学定員130名)、環境緑地学科(70名)、醸造学科(80名)および栄養学科(150名)の4学科から構成されている。本学の母体は伝統ある農学系大学であり、4学科ともに専門分野がはっきりとしており、いずれも学則に明示された人材養成のために、創設以来一貫して建学理念に基づいた実学教育を実践してきている。

しかしながら、18歳人口の減少による「大学全入時代」に突入し、本学においても志願者の減少が著しく、多様な入試制度により学生確保をしなければならなくなった。このような背景から、入学者のほとんどは東京農業大学4年制の学科や他大学を不合格になった者や実業高校からの推薦入学によるもので、入学する学生の学力較差は以前にもまして大きくなってきているばかりでなく、勉学や将来の進路に対する目的意識も希薄になっている。このような新入学生の多様化に対応するには、教育カリキュラムも各学生に個別対応ができるような多様性を有するものが望ましいと考えられる。しかし、これまで大学においては、学科の運営はその独自性を強調するものが大部分であり、本学においても上述の4学科が独自に専門教育を実施してきた。しかし一方で、4学科が互いに協調する事で、各学科の特徴を生かし専門教育の幅を広げる事も可能であると考えられる。また、従来のカリキュラムでは多くの学科目が開設され、これらを学生が自由に選択していたが、このような体制は自ら学ぶ意識を持たせるには不十分であると考えられる。

そこで本プログラムでは、従来までの教育カリキュラムを全面的に見直し、総合教育科目の拡大と専門基礎科目の充実を図りつつ全体をスリム化したカリキュラムの構築を行う。本カリキュラムの特徴は、〔1〕リメディアル教育の実施、〔2〕初年次教育の強化、〔3〕学科横断的な専門教育科目の実施、および〔4〕キャリア教育の充実である。

これらを通じて高校教育から大学教育へのスムースな移行を試みると共に、学科横断的な専門教育科目と初年次教育とを合わせて履修させるという新たな取組により、学生1人1人が自分の学ぶ専門分野の位置づけを明確にし、学ぶ動機を強固にする。また、個々の学生が自身の希望する進路についてクラス担任と十分に話し合うことで、それぞれの進路に対応した専門科目の選定やその履修モデルを構築し学習する、というシステムを導入する。

4学科横断的専門教育科目の実施に当たっては、学生が教員と一緒になってやる(協働)により、学生の教員に対する距離感を縮め、本学の教育への移行を一層スムースにさせると共に、自ら学ぶ喜びや学ぶことの大切さを体感させる。これら経験は、その後の学科の専門教育科目の学習や研究室活動へと発展するものである。

2年間のこれら一連の教育活動により、学生に進路を見据えて目的を持って勉学に取り組む姿勢を身に付けさせ、急速に変化する現代社会に適応可能な教養と専門知識を兼ね備えた専門職社会人を育成することを目的とする。

2.取組の具体的内容・実施体制等

多様な入試制度で入学してくる学生の学力較差が著しく、一律に2年間の就学期間内に教養科目から専門教育科目まで習得させることが困難になってきている。そこで、本プログラムではこの問題に対応するために、入学生には全てプレイスメントテストを課し、一定基準以下の学生にはリメディアル教育科目を必修として課す。本学4学科の専門性を考慮して、「基礎生物」、「基礎化学」および「文章表現」の3科目を開講する

高校教育から本学における教育へスムースに移行させる取り組みとして、5年前から既に実施している「フレッシュマンセミナー」に加えて、新たに「フレッシュマン演習」を開講する。この演習では個別対応できるように、各学科の新入生をクラス分けし、専任教員がクラス担任として、授業の受け方、ノートの取り方やレポートの書き方などについて責任をもって指導する。

このような個別対応型教育においては、教員の資質やカウンセリング能力に大きく依存する。教員には新たな取り組みに対応できるようFDプログラムとして、「魅力ある講義を実施するための教授法」や「個々の学生の相談に対応するためのカウンセリング法」などの講習を受講させ、そのスキルアップを図る。

また、2年間という短い就学期間内に教養科目から専門科目まで学ばなければならない短大生に対して、学生1人1人が自分の学ぶ専門分野の位置付けを明確にし、学ぶ動機を強固にする必要がある。従来までは多くの学科目を配し、これを学生が自由選択するタイプのカリキュラムであったが、本プログラムでは個々の学生がクラス担任と希望する進路などについて十分話し合い、それぞれの進路に対応した専門科目の設定やその履修モデルを構築した上で学習するシステムを導入する。

さらに、4学科横断的専門教育科目として、「農業体験実習」や「マイスターセミナー」などを新設し、農産物の生産から消費にいたるまで生活に関わる広範な教育を、学生と教員が協働しながら進めていく。従来、講義や実習内容は教員が決めて一方的に学生に伝える方式であったが、学科横断的専門教育科目については、学ぶ主体である学生が自分達の学びたい内容について積極的に教員と協議し、実習内容やマイスターセミナー講師選びにも関わり、大学生として自ら積極的に学ぶ喜びを体感させる。従来から生物生産技術学科と環境緑地学科の学生は農場実習を必修科目として履修させていたが、この「農業体験実習」という新たな試みは、食品加工などに関わる醸造学科や栄養士を目指す栄養学科の学生にも、本学の農場で農産物の生産過程を体験させるものである。幸いにして、本学は網走寒冷地農場、厚木農場、二宮柑橘分場、富士畜産農場および宮古亜熱帯農場を大学と共通利用しており、以上のような体験学習を実施する場もあり、ノウハウの蓄積もあるので、実施効果は高いと期待される。

また、「マイスターセミナー」では農産物の生産者、食品加工業者、造園業者や栄養士など4学科に直接関連する職業人を非常勤講師として招き、それぞれの業種の内容や仕事に対する熱き思いを語ってもらうものである。

「食の安全と信頼(実習を含む)」は醸造学科と栄養学科の教員が食品加工や食品摂取に関わる安心・安全について講義だけでなく、本学内の調理実習室を使用して簡単な調理実習や食品加工センターの教職員にも協力してもらいジャムやジュースなどの加工実習を体験させる科目として新設する。また「みどりと農業生産(実習を含む)」は環境緑地学科の教員がこの地球環境をみどりの維持と創生の観点からわかり易く講義すると共に学内で緑地の維持管理などについて実習も体験させることや、生物生産技術学科の教員が農産物の生産に関して講義とキャンパス内でプランターなどを利用して野菜や花の栽培などを体験させるものである。

このような取組により、学生が主体的に学ぶことの喜びと大切さに気付かせ、その後の専門教育科目についても積極的に学ぶようになり、本学での学習が農産物の生産から消費にいたる生活に直接関わる専門分野であることを認識させ、自分が学ぼうとしている専門分野の位置付けも明確にすることが可能になると考えられる。