エゾシカから学ぶ環境共生

東京農大生物産業学部 文科省支援「現代GP」に採択

 文科省の平成19年度支援プログラム(現代GP)に、地域活性化への貢献をめざす東京農大オホーツクキャンパスでの取り組みが採択された。本学部生物生産学科、増子孝義教授らによる「エゾシカから学ぶ環境共生と地域産業の連携」で、3年間の事業として行われる。「オホーツク学」に次で2件目の採択となる。

北海道・網走のオホーツクキャンパスは大規模農業と大自然が共存する立地にあり、環境共生型生物産業に基づく実学を教学の中核に据えている。

北海道では、増えすぎた野生エゾシカは農林業被害の増大や交通事故の多発などをもたらし、環境共生の観点から深刻化している。そこで、北海道は「エゾシカ有効活用事業」として、その個体数調整から地域産業創出までの広い領域で事業を展開している。それに、本学(オホーツクキャンパス)も参加し、貢献してきた。

本学の取り組みを総称して、「エゾシカ学」と呼ぶ。産業クラスターの理念に基づき、エゾシカの生態研究〜飼育(養鹿)〜加工〜流通〜販売に至るまでの領域を総合的に体系付けている。カリキュラムは図1に示したように、大別して基礎課程と応用課程から成る。つまりエゾシカに関する基礎的な学習、フィールド研究などを積み上げた上で、産業創出における産学官の役割、地元企業との連携による商品開発、シカ牧場経営などの具体的な学習に取り組む。

本キャンパスの卒業生の就職先は自然科学系および社会科学系の学科を問わず、食品加工や資源利用系の企業が多い。生態系、一次資源の有効活用、地域産業創出などを総合的に学ぶことで、視野の広い文理融合型の学生を社会に送り出すことができる。なお一層、地域活性化に貢献できる人材育成を目指す。

実施体制としては、教員と企業、シカ牧場、研究機関あるいは行政による連携(コンソーシアム)を形成している。その体制を十分に活用しつつ、さらに拡大して充実させる。評価に関しては、学生からの評価と北海道庁、エゾシカ協会や地域企業などの外部評価委員からの評価、点検を随時実施し、本学に設置されている教学委員会で総合的に評価し、透明性や充実度を高める。評価は単年度毎に実施し、次年度以降に反映させ教育効果の高いプログラムを展開していく。

 

<現代GPとは>  現代的教育ニーズ取組支援プログラム。文科省が毎年公募する支援制度。社会的要請の高いテーマに取り組む大学や短大などの財政を支援し、次代を担う人材を養成する。GPはGood Practice(優れた取り組み)の略。

平成19年度は、「地域活性化」「環境教育」など6テーマで公募した結果、600件の申請の中から119件が採択された。

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