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国際協力銀行(JBIC)

マレーシア国サバ州  持続的資源利用による貧困地域所得向上事業に係る提案型調査

本調査は、国際協力銀行(Japan Bank for International Cooperation, 以下JBIC)が公募する提案型調査に本学が採択され、民間コンサルタントの(株)PADECO、九州大学の3社共同企業体で実施したものです。

実施期間は、2006年4月から2007年5月までの13ヶ月で、本学からは飯島倫明教授(森林総合科学科)と板垣啓四郎教授(国際農業開発学科)が派遣されました。この間に飯島教授は22日間、板垣教授は45日間、調査地であるマレーシア・サバ州に滞在して調査に従事しました。

提案型調査とは、現地のJBIC事務所、大使館、対象国政府の協議のもとで浮かび上がってきた有望な有償資金協力案件をプロジェクトとして形成するための事前段階として、現地調査を行い何らかの実行可能な具体策を対象国政府とJBIC本部に提案するというものです。もちろんそれを採択するかどうかは対象国政府とJBIC本部の判断に委ねられます。

今回の提案型調査は、マレーシア・サバ州の貧困な農村を対象に、在来資源を有効活用して所得向上の機会を創出するアイデアを提示することがテーマでした。サバ州の内陸部には経済開発の遅れたところが多く、マレーシアでは最も貧困な地域の一つになっています。貧困な農漁村をいくつか視察し調査して、調査サイトとして最終的に絞り込んだのは、ガナ村という山深い盆地に位置している開拓村でした。

私たちが最初にここを訪ねたとき、交通アクセスが極端に悪く、生活インフラもほとんど整備されていない山間部で、どこからどのようにして着手したらよいのか、まったく途方に暮れました。降雨が続くと、それでなくても劣悪な道路が寸断され、この村は孤立無援となります。現地の管轄下にある森林局や農業部と密接に連携をとりながら、また国立サバ大学のスタッフと協力し合いながら、計画を立案する日々が2週間ほど続きました。最終的にプロジェクト活動として決定したのは、「野菜栽培」と「伝統工芸品の製作および野菜を含む農産物と伝統工芸品の販売促進」となりました。それからは、土壌や水などの資源調査、在来技術の調査、社会調査、市場調査など様々な調査に明け暮れる毎日でした。もちろんガナ村ではそれまでにも野菜を栽培し、伝統工芸品を製作していましたが、自給用に栽培・製作したもので、商業ベースにのるようなものではありませんでした。

ともかくも、調査結果をまとめ、サバ州政府に対して中間報告を何度か繰り返し、最終的にはドラフトを作成して提出しました。私たちは提案のなかでサバ州政府に道路の補修・改修と車両の確保を強く要求しました。これがなければ、何も作っても市場へ運ぶことができないからです。サバ州政府はこれとは別に村民に対して焼畑耕作をやめさせるためにゴムやオイルパームの植栽に補助金をつけて奨励していましたが、永年作物は所得を産み出すまでに時間を要するので、この間のつなぎにどうしても手っ取り早く現金を確保できる所得源が必要だったわけです。それが、野菜栽培と伝統工芸品の製作およびその販売でした。村内でも住民にこのプロジェクトを理解してもらうために何回も集会を開き、村で活動の核となってくれそうな若者グループ、村に活動の拠点をもっている国内外のNGOに働きかけて、活動の推進役になってもらいました。その一方で、活動資金を調達しマンパワーを投入するために、森林局や農業部に強く働きかけました。

最終的に300ページ余りにおよぶ英文報告書を作成し、サバ州政府とJBIC本部に提出しました。その後この活動がどうなったのか詳しくは聞いておりませんが、ガナ村で栽培される野菜はすくすくと育っていると現地駐在員の方から聞いています。今でも私たちチームの判断に誤りはなかったと思っています。

この提案型調査は、本学が大学のプロジェクトとして組織的に国際協力活動に踏み入れた第一歩であります。事前に予想していたよりもはるかにハードで苦労の多い仕事でしたが、村民に役に立てたのではという清々しい充実感はあります。本学も国際協力を重要な社会活動の一翼に位置づけています。今後とも、本学が様々な国際協力活動にチャレンジしていければと切に願っています。(国際農業開発学科教授 板垣啓四郎)

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