東京農業大学
バイオサイエンス学科
資源生物工学研究室
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地球生命35億年分のパワーを活用する

細菌、酵母などの微生物や、微細藻類、植物などの光合成生物を研究材料として、資源・環境問題に役立つ基礎研究をおこなっている。特に微生物は単細胞でありながら35億年を生き抜いたパワーを秘めており、環境変化に適応する能力、有用物質の生産をシンプルにおこなう素晴らしい能力を有している。当研究室では新しい生物機能の探索・発見をスローガンに掲げ、酸素を主眼に研究をおこなっている。研究テーマは、活性酸素防御システムに関する研究、無酸素環境における生物の代謝応答、資源・環境問題に貢献するための応用研究をおこなっている。


研究紹介

未知の微生物や光合成生物を探索し、その力に学ぶ

研究の基本は「自然から学ぶこと」
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微生物は、土の中や私たちのお腹の中、発酵食品の中といった身近なところから、砂漠のような極限環境まで、あらゆる場所に生息しています。細胞一つの原始的な生物にもかかわらず、乾燥、高塩濃度、高温、低温、強い紫外線など多様な環境ストレスに適応し、35億年前から今日まで生き続けてきました。こうしたことから、微生物は私たちには想像もつかないすぐれたパワーを秘めていると考えられます。

しかし、現在発見されている微生物は全体の10%未満ともいわれ、残りは正体がわかりません。最近はそうした未知の微生物を求めて、南極や北極、地下数千メートルまで探す「微生物ハンター」と呼ばれる人もいるんですよ。

資源生物工学研究室でも、さまざまな場所から未知の微生物を探索し、有用な生物や新たな生物機能を見つけようとしています。私たちの基本姿勢は「自然から学ぶこと」。自然界に生きる彼らの優れた環境適応能力や知恵を学び、資源・環境・健康問題の解決に役立てるのが目標です。

新村 洋一 教授
新村 洋一 教授
川崎 信治 准教授
川崎 信治 准教授

 

特殊な培養技術でミクロの世界を拡大
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自然界から単離した微生物が持つ優れた能力は、研究室で環境ストレスを与えて反応を見たり、タンパク質やDNAの機能を調べたりすることで解明していきます。

とはいえ彼らは非常に小さいため、1匹を調べてもよくわかりません。そこで特殊な装置で微生物を大量培養するのが本研究室の特徴です。微生物は分裂スピードが速く、50リットルのタンクに1匹入れると1日でタンクいっぱいに増えます。そこから得られる微生物は約200グラム。1000倍に拡大した顕微鏡でようやく見えるほどの1匹の微生物が、手で触れられるようになるのです。このように、ミクロの世界で見ていたものを何億倍ものスケールに拡大して見ると、これまでに見つかっていなかった貴重なものが発見できるのです。

 
未知の生物に積極的にチャレンジ
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研究対象は、細菌、酵母などの微生物や、クロレラやクラミドモナスなどの仲間の光合成生物です。特に、生物の根元的ファクター「酸素・無酸素・光」をキーワードに探索しています。

酸素は私たちにとってなくてはならない有用なものですが、私たちの健康状態が悪くなると体内で変化し、毒性をもつ「活性酸素」を発生させます。活性酸素は過剰にあると細胞を傷つけ、生活習慣病などを引き起こすといわれています。研究室では、この活性酸素を迅速に分解する働きをもつ新たな乳酸菌を発酵食品の中から見つけました。堆肥からも新規微生物は単離できます。さらに研究を進め、こうした力を機能性食品の開発やバイオマス利用に生かしていきたいです。

極限環境に生息する微生物は、まだ人類が発見したことのない生命機能の宝庫です。砂漠や塩湖など水のない環境や、大学前の真夏のアスファルトなど身近な極限環境から、複数の光合成微生物の単離に成功しました。これらはどんな仕組みで極度に乾燥した環境で光合成を行うのでしょうか。また無酸素環境に生育する嫌気微生物も研究しています。例えばビフィズス菌はおなかの健康維持に活躍しています。またクロストリジウム菌はバイオマス利用の分野で活躍しています。微生物が持つ特殊な生命力は、環境・健康問題が深刻な現代に必要な力なのです。

これらの研究を通じて未来に役立つ「タネ」を探すことが私たちの使命だと考え、他の人が手がけない生物に積極的に挑戦しています。生物の採取方法も実験方法も自分自身で考えねばなりませんが、その努力は卒業後の生きる力になります。

なお、研究室では大学の近くの畑で無農薬野菜を作っています。研究とは直接関係ありませんが、土とのふれあいを通して自然から学ぶ謙虚な気持ちを育んでほしいと思います。また、研究は自分一人で成し遂げられるものではありません。全員で力を合わせて物事に取り組む姿勢と収穫の喜びを、ぜひ農作業の中で体験してください。

 

 

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