トカラ列島採集記(七月編)

相馬純

今回の採集記もトカラ列島の調査についてである。

調査メンバーは小島先生、私(相馬)、及川、田岡である

私にとっては九ヶ月ぶりのトカラ列島である。

初日から早速、スピード台風三号によってフェリーの運航が延期になった。

この流れ、去年もあったような気がする。

 

とりあえず、気を取り直して飛行機に乗り込む。

 

そして、鹿児島でラーメンを食べる。

翌日は、鹿児島の街をぶらついた

 

 

とは言っても、去年も同じことを二日間もしたので、新鮮さが薄い。

 塀を這っていたサツマゴキブリ。

甘くて冷たい物でも食べて涼むことにした。

去年と違って、今回は鹿児島で二晩を過ごすことにはならなかった。

たまらなく嬉しい。

フェリーに乗り込んで中之島への期待を膨らませる。

しかし、中之島についた私は第一声に思わず「なんじゃこりゃ。」と呟いた。

 

ここまで露骨に悪天候だと流石に萎える。

午前中はほぼ身動きが取れなかった。

午後からは雨が止んだので採集を行ったが、下見程度のつもりでルッキングが中心だった。

どこもかしこも濡れている。

物音に振り返れば、ヤギに遭遇した。

夕方ぐらいには、ようやく日が照って葉も少しは乾いてきた。

アオノクマタケランの花を見つけた。

 

露に濡れて、瑞々しく光り輝いている

 

その株元の葉をめくると、薄汚れた黄色がモザイク状に広がっていた。

葉裏には、黒い小さな塊がベタベタと貼り付けられていた。

私は歓喜の声を上げた。

ゲットウグンバイとの出会いである。


彼らは密集するので、一匹が見つかった後の採集は容易く数多く手に入った。

その夜は、土砂降りの中で灯火に飛来した大量のカメムシに狂喜乱舞しながら一日を終えた。

採集に夢中になっている私にありがちなことだが、写真は撮っていないので割愛する。

翌日も午前は雨が降っていた。

何なんだこれは。

午後は晴れていたので集落の方に出る。

喉の渇きを自動販売機で潤す。

 

晴れてくると、やっぱり暑い

 

集落の中には、神社もある。

 

アカギカメムシの成虫が、アカメガシワの雌株に発生していた。

 

この日は、昨日の段階で手に入った目的のカメムシの個体数を稼ぐことに専念していた。

思い返すと、カメムシに関しては初日が最も成果を上げられた。

そして再びの朝である。

この日は海岸で海浜性のカメムシを狙ってみる。

 

期待こそしていなかったものの、想像以上の種数が採れた。

セダカナガカメムシ、小さいながらも素晴らしいカメムシである。

 

海岸を去った後は、島を一周する林道で採集した。

 

 残念ながら、カメムシはあまり採れなかった。

 

日当たりが悪すぎる。

その後は昨日と同じ集落で、採集を行った。

 

明日からは悪石島である。

この時はアクシデントも予想せずにぼんやりと次の島を楽しみにしていた。

今にも水滴が零れそうな空を、悪石島へと向かう。

悪石島の港に、竜巻に吸い込まれた車が静置されていた。

宿に着いた時に、昨日の夜から体調を崩していた後輩が更に弱っていることに気付いた。

これはヤバいと思った。

夕飯の頃には、早めに帰ることになるだろうと確信した

そして、ライトトラップを片付けた私はヘッドライトを身に付けて夜の集落を徘徊した。

紛れもない、不審者である。

個体数は微妙だが、欲しいカメムシは採れたので良かった

翌朝、予想通りに早めに帰ることになった。

ソーティングもこなしていたせいで睡眠時間が二時間だった。

 

 フェリーに乗るなり、すぐに眠りに落ちた。

 

夜の鹿児島の明りに照らされながら、早すぎる夢からの目覚めを嘆いていた。