トカラ列島採集記(四月編)
トカラ列島は屋久島と奄美大島の間に点々と連なる7つの有人島からなる列島だ。各島の人口は200人程度、週に2便の定期船フェリーとしまが島民の生活を支えている。
多くの固有種が存在し、昆虫相も非常に興味深い…のだが、その「行きにくさ」から、我々フツーの学生にとっては半ば憧れの地と化している。
我々は小島先生のお誘いで、そのトカラ列島での昆虫調査の機会をいただいた。全10日間、中之島と悪石島の2島を回る旅路である。
1日目
「フェリー…欠航ですね。」悪天候のため接岸ができないとのことで、初日から鹿児島に足止めを食ってしまった。フェリーとしまは欠航しやすいと聞いてはいたが…ガッカリ。
気を取り直して鹿児島の繁華街へ…
2日目
フェリーとしまは深夜23時に出航する。
3日目 中之島
船の汽笛で目を覚ます。早朝の寄港であるが、各島でそれぞれ住民の方々が荷物の受け取りなどを行っている。我々も無事、中之島へ上陸した。
準備もそこそこ、島の東部で採集を開始。虫の出はまずまずだ。
宿の夕食はイタリア風。調査とは思えない。
4日目
中之島最高峰の御岳へ登る。山頂のかなり近くまで車道が伸びており、登山は楽だった。
山頂は開けて岩場と草原になっており、絶景そのものだ。御岳は火山であり、昔の硫黄採取場の跡地が火口のなかに残っていた。
御岳の昆虫。
夜はライトトラップを行ったが、とても寒く、虫の集まりは悪い。
中之島には2か所の温泉があり、どちらの温泉も誰でも入浴可能である。
見てきたばかりの火山の恵みに感謝しながら温泉を堪能した。気持ちいい!
5日目
早くも、中之島での採集の最後の日である。島を回りながらめぼしいところで採集をしていく。
6日目 悪石島
ふたたび、フェリーとしまに乗船し悪石島を目指す。6時間ほどの船旅ののち、悪石島へと到着した。
雨の合間を縫い、まず目指すのは悪石島最高峰、こちらも御岳という名の山だ。
こちらの山頂も絶景だ。周囲には多くのツバメ、イワツバメが飛んでいる。数羽のコシアカツバメも混ざっている。
続いて、島西部の湯泊付近で採集を行う。高木となったビロウの林が印象的だ。
ソテツの雄花の残骸より、ズビロキマワリモドキが数多く採集でき、驚いた。
湯泊には温泉があり、この温泉も入浴可能だ。乳白色だった中之島の温泉と異なり、こちらは鉄の匂いがムンムンの、透明なお湯だ。
いい島だなぁ…。
宿のごはんもとても美味しい。
夜はライトとともに、街灯めぐりをした。この日のライトが最も良い成果であった。
7日目
島東部、根神山とビロウ山で採集を行う。こちらの山も、ビロウが高木にまで成長し林となっている。
ルリゴキブリがいるとの情報から、血眼で探すも、姿はなかった。時期外れかな…。
ヤマビルは健在で、長靴をぺたぺたと登ってくる。こちらは時期のようだ。
8日目
この日は終日、雨が降っていた。集落中心に採集を行う。
途中、島の小学校の先生の奥様と娘さんに集落を案内してもらったりと、雨ながら楽しい1日となった。
9日目
ふたたびビロウ山で採集を行う。
午後は、島の中学校に昆虫についてのおはなしをしに行った。生徒は1学年一人づつ、3人だけだが元気がよすぎるくらいで楽しい経験だった。
最後は再び湯泊方面で採集を行い、これにて採集終了である。
10日目
船は8時に悪石島を発った。鹿児島までは11時間の長旅だ。
我々と、採集したたくさんの昆虫たちを乗せて列島を進みゆくフェリーとしまの航跡が、美しいトカラブルーの海にいつまでも続いていた。