新入生歓迎会採集記
新入生歓迎合宿に参加して
学部1年 嶋本 習介

2015年5月2日から3日にかけて、山梨県の大菩薩峠で新入生歓迎合宿が行われた。今回、1年生ながら参加させていただいたので、私の採集報告を書いていきたいと思う。

今回の合宿のお話をいただいてから、私は1人ひそかに野望を抱いていた。それは、オオシモフリスズメの採集である。オオシモフリスズメは私の憧れの昆虫のひとつである。小学生のころに図鑑でその姿を見て以来、その色彩、羽の形やがっしりとした体つきにすっかり魅了されてしまった。しかし、成虫の発生する時期が早春に限られ、私の住んでいる関東地方には分布していないため、これまで採集の機会がないままであった。
そこで今回、“せっかく山梨まで行くのだから……”と考え、オオシモフリが採集できることで有名な長野県飯田市に足を延ばし、そこから合宿に合流するという計画を立てた。


5月1日

夕方に自宅を出発し、一路飯田を目指す。オオシモフリを狙うには時期的に少し遅いと思われるので、どうか1匹でもいてくれ、と祈りながらの出発である。途中休憩を挟みつつ、9時頃には飯田市につくことができた。

ひたすらコンビニや街灯を回って探し続けること1時間弱、ついにその時はきた。ひときわ明るい1本の街灯に、なにか巨大な影が羽ばたいているのだ! 震える手でネットを振り、ネットイン! 間近で見るとその迫力、ずっしりとした重さに圧倒された。感動である。こんなにも美しく素晴らしいスズメガはほかにいるだろうか。

その後、もう1頭を同じ場所で追加することができ、飯田への遠征は大成功に終わった。2頭ともかなりスレた個体であったが、大満足である。

その後は別のコンビニでキバラヒトリ等を採集した。ただ、私が事前に予想していたよりも飯田の町ははるかに都会であり、ポイント絞りが難しく、これにて終了とした。


5月2日

朝のうちに合宿地の大菩薩峠に移動し、ロッヂ長兵衛から山を下りながら採集を行うことにした。標高が高いため平地より季節が進むのが遅く、みずみずしい新緑やところどころに咲いている桜の花がとても美しい。また、ヒガラやカケス、アカゲラ、ミソサザイといった多くの野鳥も観察することができた。……のだが、虫が少ない。もともとが針葉樹帯であり、数少ない広葉樹の葉を掬ってみたものの、数匹のハムシが採集できたのみであった。そこに、網にまで入れたコツバメに逃げられるという失態まで続いてしまった。

時間に余裕があったため、気を取り直して、湯ノ沢峠を目指し林道に入ることにした。1時間半程度歩けばつくだろうという軽い気持ちで採集しながら歩き始めたが、これが大間違いであった。3時間弱歩いてもつかず、車に乗っていた地元の方いわく、「あと30分から1時間くらいかなァ?」とのこと。疲れた体にはキツイ宣告である。集合時間に間に合わなくなる恐れが出てきたので、悔しかったが撤退を決めた。しかし、不幸は続くものだ。スマホの電源が落ちてしまったのだ。緊急時の連絡も取れなくなったうえ、地図もスマホに頼っていたため、戻る道で非常に不安な時間をすごすことになってしまった。紙の地図の重要性や距離感覚をしっかり持つことなど、手痛い勉強になった1日だった。ただ、この林道ではスジボソヤマキチョウやウンモンテントウなどを採集することができ、虫的にはまずまずの成果であった。

ほうほうの体で宿につき、夜は焼肉にキャンプファイヤーと、とても楽しい時間を過ごした。多くの先輩方とおはなしすることができ、勉強にもなり、非常に有意義であった。また、今回の宿であるペンションすずらんは“虫屋の宿”として有名であり、ライトトラップが常設してある。私の成果はヤガ数匹だったが、先輩方と幕を囲む楽しいナイターとなった。

5月3日

 宿を出発し、長竿での花掬いを中心に採集を行いながら麓を目指す。この日は前日とうって変わって植生も豊かになり、たくさんの小甲虫を採集することができた。特に、カエデの花掬いではヒナルリハナ、ミヤマルリハナ、ピックニセハムシハナといったハナカミキリをはじめとした多くの甲虫を採集した。また、ドロハマキチョッキリ、ファウストハマキチョッキリといった美麗チョッキリを採集できたほか、見てみたい虫の1つであったコブルリオトシブミを採集できたことは非常に嬉しかった。

今回の合宿は、採集をとおして、先輩や同期との交流をとても深めることができ、とても楽しいものであった。また、オオシモフリスズメをはじめとして、たくさんの収穫を得ることができ、昆虫的にも非常に満足だった。一方、計画の甘さ、経験不足によって起こったミスが多かったため、今回の合宿の経験を次の採集に生かしていきたいと考えている。

末筆であるが、今回の合宿を企画し、誘ってくださった先生、先輩のみなさん、オオシモフリスズメに関する相談にのっていただいた吉田先輩、鈴木先輩、並びに宿のみなさんに厚く御礼申し上げる。