晴れのちコブ


明日採集じゃないの?」「大丈夫!何とかなる!」



    異常なまでに厳しかった残暑も、ようやく過ぎ去ろうとしている9月末、
我々はコブヤハズカミキリを求めて山梨県へ乗り込んだ。




 秋といえばコブヤハズである。すでにタダコブ・フジコブ・セダカはある程度の数を仕留めているので、今回のターゲットはタニグチに決めた。マヤサンでもかまわなかったのだが(実際タニグチよりも採りやすい)、
今回のメンバーにマヤサン保持者がいるため、今回は見送った。



 企画当初、メンバーは4人であったが、噂と虫のにおいをかぎつけた輩が次々と集まり、最終的にはOBの城所氏、4年の坂田・常盤・山口・山田、3年の青木・沢田、
そして斎藤(著者)の計
8人と、コブ叩きにしては多すぎるくらいの人数が集まった。


 まぁ無理もない。なにせ今年の夏合宿in佐渡島で、坂田・青木はサド(タダ)コブを仕留め損ねてしまい、城所氏は前回のコブ叩きでボウズ(成果なし)だったのだ。それに今夏は暑さのせいか昆虫が全体的に少なく、各自思うような成果を上げることができなかった。もうこうなったらタニグチしかない。全員の殺気に満ちた目が、そう語っていた。

 
   サドコブ:体色シルバーは反則・・・

 
  前回のコブ叩き:採れずに座りこむ城所氏(左)



 人数が多いため、車2台体制で目的地へと向かう。どうせ小仏あたりで詰まるとの大方の予想に反して、特に渋滞に捕まることもなく10時前には到着することができた。
 
 コンビニから目的地を望む 「いい天気だなぁ(棒読み)」

 
駐車場にて片手腕立て:5分後、車内で爆睡の常盤大先生

 現地は雲一つない快晴!絶好の オオトラ 行楽日和!!


 ・・・つまりコブ叩きにとってはこの上ない悪条件であった。コブは湿り気を好むため、天気は曇りまたは霧・小雨がベストである。


 まぁグチグチ言っても仕方がない。グチよりタニグチだ。さっそく各自ビーティングネットを広げ、周辺の枯れ葉を叩きまくる!


          バシッ!カサカサ・・・、バンッ!パキパキ・・・


 ・・・タニグチどころか虫が落ちてこない。どうやらこの快晴で、枯れ葉が完全に乾いてしまっているようだ。「コブの生る草」であるノブドウでさえも、今回は完全に不発であった。


 これはマズイ(汗)。8人の時点でボウズ2,3人は想定内だが、このままでは全員ボウズもありうる状態だ。“せめて1頭だけでも”全員が祈るように探し続けた。

いざ出撃!!」なんともアヤしい集団である…

「コブはどこじゃ~い!?」林内を照らす日差しが眩しい


 そして30分後、静寂を突き破り、聞きたくもない2つの雄叫びが山中に響き渡る。


  沢田「ぃよっしゃぁ~!!」



 常盤「あぁぁ!いた!!」

  一同「えぇ?またお前らかよ!!」



そう、コブ叩きに行くと、だいたいこの2人のどちらかが1頭目を仕留める。
フジコブもタダコブもセダカも、こいつらにしてやられた記憶がある。


 まぁなんにせよ成果が上がったことは大きい。つまりは今日の採集方法が確立されたようなものである。城所氏に植物を同定してもらい、全員がそれめがけて突撃する。するとすぐに坂田・山田がタニグチを発見し、自分も一気に3頭を仕留めることができた。それにしても鞘翅後部の黒紋!フジやセダカとはまた一味違うこの渋さ!!
最高である(恍惚)。

  
   林内に点在するマルバダケブキ 「これは確実にいるぞ!」

  念願のタニグチコブヤハズ 「採られてくれてありがとう!!」

 無事にタニグチを仕留めることができた安心感のせいか、食欲がでてくる。意気揚々と車までコンビニ弁当を取りに戻ると、すでに数人が昼食&午前の成果発表をしていた。一人一人の顔を見てみると、どうやら城所氏・山口・青木はまだ採れていないらしい。目が物欲で濁っている。坂田・常盤・山田・沢田も追加はなかったらしい。
目が笑っていない。

 
 2Y「斎藤さん叩けば3頭か…」A「あ、なるほど」
    K「その方が効率いいな」S「おい落ち着け(汗)」
 
 なんでいねぇんだよ!!」その後、彼は森の中へ消えていった…

  森の中から沢田と常盤が出てくるのを待って、移動を開始。午後は乾燥した場所を避けるため、山の北側斜面で採集することにした。午前中に仕留めた個体が全てオスあったため、当然メスが欲しくなる。そして口に出せないが…やはり3頭では物足りない。


 北側は思惑通り、枯れ葉がほど良く湿っていた。しかもしばらくすると小雨まで降ってきたではないか!!ようやく城所氏・山口の「霧・雨男」が効いてきたようだ。これなら確実に追加を上げられると、各自適当な林道を見つけ、その中へ消えていく。
  
    暗く湿った林内 「これを待っていた!!」

 林道に入り、かれこれ2時間は経過しただろうか。条件は最高のはずなのに、追加が1頭もない。ルッキング・ビーティング・シフティング、ありとあらゆる手法を試してみるが、落ちてくるのはハサミムシとザトウムシばかりである。


 しかも最悪なことに、モチベーションの低下に伴い今まで抑えられていた眠気と吐き気が復活してしまった。ふらつき、斜面を滑り落ち、ミズナラの倒木に腹を強打し、しまいには―。…もう思い出したくもない。


 しばらく横になっていると、何かの気配がしたのでヨロヨロと立ち上がる。すると向こうから沢田と山口が笑いながら歩いてくる。う~ん、いやな予感しかしない。


  山口「斎藤さん追加何頭ですか?」


  斎藤「ゼロ。まぁ3頭仕留めたし、いいかなって」


  山口「え?オレ今6頭ですよ?」


  斎藤「は?」


  沢田「ちなみに俺は16頭です」



     冗談だろ!?そう叫び、彼らの毒ビンをのぞく。…タニグチだ。

        これは夢だ!そう願い、自らの頭を叩いてみる。…タニグチだ。


タニグチ!!(‘皿’)b

 なんということだ、どうやら彼らは“タニグチの木”を見つけたらしい。場所を教えてもらい、体力の続き限り叩きまくる。すると幸運なことに、オス1頭メス4頭を追加することができた。近くで城所氏と青木も“タニグチの木”から、次々とタニグチを仕留めていく。これで全員無事にタニグチを仕留めることができ、あとは時間までコブ叩きを満喫するだけであった。― まぁ無論「満喫」はしたが「まったり」はできなかった。

 沢田無双:ちゃっかりホソアカガネオサムシを採るとは、流石である

 結局今回のコブ叩きでは、全員でタニグチ74頭という好成績を残すことができた。特に沢田・山口・山田は2ケタを記録し、もし最初から北側へ行っていたら3ケタも夢ではなかったのではと、思わず期待してしまうほどであった。


 最後になるが、ご多忙の中このような楽しい採集を企画していただいたOBの城所氏に、この場を借りて厚く御礼申し上げる。また企画から実行まで、わずか3日という無茶ぶりに乗ってくれた6人の後輩たちにも感謝を申し上げる。持つべきは良き後輩である。


 そして自分に4回目の採集前「禁酒」と「十分な睡眠」を誓い、採集記の〆とします。


                         最後まで読んで下さり、ありがとうございました。


                                                      2010/10/1斎藤