本文へスキップ

八重山・宮古列島瀬戸際亀虫?採集記

博士前期課程2年 瀬戸山 知佳

3月に先生方と1週間の八重山・宮古調査を行ったので報告する。

1日目 石垣島

初日は石垣島を訪れ、早速目的の川へ向かった。

ここでは、20年ほど前に1個体しか取られていない種がいる。
環境を確認すると、他所の生息環境とは若干異なるようだ。まだ、生息しているだろうか。

川に落ちないように岩をつたい、生息していそうな場所をくまなく探す。
頭の中で、例のミズギワカメムシの像を思い浮かべる。
ああ、ミズギカメムシの像が見える。いるなら絶対こういう場所だ。
イメージトレーニングに該当する場所を探す。

お、此処はまさに生息していそうだ…いた!
あっさりと初日に1番見たかった種と出会ってしまった。幸先が良い。

<調査中に見つけたカショウクズマメ>

2日目 石垣島から西表島へ

今日は東大の生物系サークルの方々と採集を行った。
昨日と同じ川で、追加個体を狙う。

昨日よりも更に上流へ進む。幼虫発見。
しかし、成虫含め数個体しか見つからない。良い環境はあるが、生息個体数は少ないようだ。

目的の種は確認できたので、次は西表島へと向かった。

3日目 西表島

人生初の西表島の朝は、曇り空から始まった。石垣島と比べると非常に寒い。
石垣島同様、薄手の長袖長ズボンを装備していたが、その上からレインウェアを着ても寒い。
原付をレンタルして島を突っ走る(時速アンダー30km)。恐ろしく寒い。
まずは、カンピラの滝に向かう。

河口から登山道まで運ぶ船に乗り30分、
船の中から西表島の植生を観察しつつも頭の中は目的のミズギワカメムシでいっぱいだった。
一刻も早くカンピラの滝に着きたい。

船が上陸するも、下船で出遅れた。最後尾で降りてしまった。
夢のミズギワカメムシへの気持ちが抑えられず、ズイズイと先方を歩く観光客の方を抜き去り、徒歩45分の山道を30分以内で登る。

目前には、轟々と音を立てる雄大なカンピラの滝。

しかし、滝には目もくれず、タイワンミズギワカメムシを探す。

………!
1分とかからず、一匹目を見つけた。
恐ろしいほど、いっぱいおる。
夢のタイワンミズギワカメムシ。美し過ぎる。
この艶やかな黒い体色。白く縁取られた前翅。それらを彩る黄金の体毛。神々しい。

<タイワンミズギワカメムシ♂ (約3mm)>

タイワンミズギワカメムシを発見して心が満たされたので、次はサンゴミズギワカメムシを求めて岩礁へ向かった。
いない。知人に過去に採集した場所を聞いたものの、いない。どこにもいない。何故だ…。

<岩礁>

ポイントを何度も変え、道路脇のちょっとした岩礁を探す。
ミズギワカメムシを探すため、岩礁を這い回る私を目撃すれば、誰もがその怪しさに目を背けるだろう。
目を凝らして岩礁上を動くものを探す。掌を岩礁にかざし、手の動きに刺激されて動く虫がいないか探す。

カサカサカサ

ネズミのフンのような、黒く細長い塊が動いた。サンゴミズギワカメムシだ。


しかし…。

ビュン!

強風が吹くとともに、サンゴミズギワカメムシも飛び上がり、磯のどこかへ飛んでいってしまった。
その後の1時間、小さな岩礁を這いずり回るも、結局その1個体以外と巡り合うことはなかった。

4日目 西表島から宮古島へ

昨日のサンゴミズギワカメムシが忘れられず、朝6時に同じ岩礁を見にいくも、そこは海の下に沈んでいた。
きっと奴らは、海の中の岩礁の穴にでも隠れているのだろう。

西表島のサンゴミズギワカメムシは潔く諦め、宮古島へ向かった。

<西表島の海>

夕方過ぎに宮古島に到着すると、小島先生が夕飯を作って下さった。
グリーンカレーだ。うまい。

<小島先生特製グリーンカレー>

夕食を食べ終わると、夜行性のゾウムシを探すため、小島先生は宮古島の樹林へ繰り出していった。

5日目 宮古島

先生の慣わしから、まずは神社へのお参りをする。

<神社>

人生初の宮古島。まずはすでに記録のあるコミズギワカメムシを探すため、河口へ向かった。
いつものごとく河岸を這いずり回る。白みがかった地面に同化してコミズギワカメムシがいた。

シュッ!

近づくとすぐに飛び立ってしまう。
格闘すること30分、コミズギワカメムシが虫網の中に飛ぶように追い込み、採集できた。

その後は昼食をとるため、島尻の購買店へ向かった。

店員の方と先生達がお話ししている間、私は一人で島尻マングローブへ向かった。
しかし、ここでは何も見つけられなかった。
その後先生達の元へ戻り、池間島にも向かったが、またもミズギワカメムシ類は採集できなかった。

次は西表島で採り逃したサンゴミズギワカメムシを狙い、宮古島の岩礁を這いずり回る。
ここにも生息しているのだろうか。

カサカサカサ

平らな岩礁の上をサンゴミズギワカメムシの幼虫と成虫が這い回っていた。
気温が低いせいか、積極的に飛び立とうとしない。採集するには運が良い。
難なく採集し、この日の調査を終えた。

<サンゴミズギワカメムシ♂ (約3mm)>

今夜の夕食はチキンカレー。最近半年以上はカレーを食べていなかったので、より一層美味しく感じる。

<小島先生特製チキンカレー>

夕食を食べ終わった小島先生は、夜行性のナナフシを探しに宮古島のビーチに繰り出していった。

6日目 宮古島

この日は宮古列島の伊良部島へ向かった。
伊良部島へは橋で渡れる。
美しいエメラルドグリーンの海に、採集という目的を忘れてしまいそうだった。
冗談はさておき、伊良部島でも岩礁を這い回る。何か興味深い虫がおらんかのう。

1mmほどの芥子粒のような物体が動いた。サンゴカメムシだ。
人生初のサンゴカメムシ。こういう岩礁にいるのか。
本人は活発に歩いているつもりのようだが、その小ささゆえに動きは非常に鈍く見える。
こちらも難なく採集し、1日を終えた。

<サンゴカメムシ♀ (約1mm)>

7日目 宮古島から関東へ

最終日は宮古列島の大神島へ向かった。

大神島に着くと、いつもの如く私は一人で岩礁を這いずり回った。
ここでもいくつかの発見をした後、大神島で1番の高所、遠見台に登り、大神島を堪能した。

<49歳からはじめたタバコを一服中の先生>

大神島から宮古島へ帰ると、昼食をとるために再び島尻購買店へ向かった。
購買店で昼食をとり、店内の食事スペースをお借りして荷物の整理をし、一息ついた。
購買店には地元の方が頻繁に買い物へ訪れ、観光客の方もよく利用している。

地元の方とお話しする機会があり、この購買店についてお話していただいた。
閉店しようとしていた購買店を地元の若者が譲り受け、地元のおじい、おばあの為に有志で運営しているらしい。
素敵な取り組みだ。

店員の方、地元の方と談笑していると飛行機の出発時間が迫ってきた。
名残惜しいが、宮古島を立たねばならない。
購買店や地元の方々の暖かさに、とても離れがたい。
また宮古島に来る際は挨拶にこようと心に決めて、丁重にお礼を申し上げて購買店を立った。

<購買店のカーキだこ丼>

宮古島空港では悪天候の影響で飛行機が遅れていたが、なんとか関東に戻ることができた。
今回の八重山採集は、昆虫や人との出会い、双方とも実り多き採集となった。