サツマヒメカマキリを求めて
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サツマヒメカマキリを求めて

学部1年 田口綾乃

サツマヒメカマキリ Acromantis satsumensis は、幼虫越冬をするカマキリである。
成虫発生時期が8~12月のヒメカマキリとは異なり、
サツマヒメカマキリの成虫発生時期は5~7月である。

ミステリアスな模様がカッコよく、そして可愛いカマキリ、
そんなサツマヒメカマキリを求めて、3月上旬に兵庫県へ採集に行った。

飛行機で採集旅行に行くのは初めてだったため、ワクワク感と少しの緊張感を抱いて出発した。メンバーはカマキリ好きの3人、私と、同級生の土屋くん、そしてこの採集の機会を設けてくださった大学院生の大島先輩だ。2泊3日、このメンバーで兵庫県及び淡路島のサツマヒメカマキリの調査を行なったので、採集記に記した。同行者の土屋くんもサツマヒメ調査の採集記を書いているので、合わせて目を通していだだけると嬉しい。

1日目

成田空港から関西国際空港へ、その後、車で兵庫県の採集ポイントに向かった。

この日はあいにくの雨だった。
しかし雨天でも虫は採れるので、もちろん採集は決行した。
越冬中の個体をビーティングで狙っていく。
ここで大島先輩からアドバイスがあった。
「常緑樹にひっかかっている枯葉を見つけて叩くといいよ」とのこと。
枯葉で寒さを凌いでいるサツマヒメ、想像するだけで可愛い。(笑)
アドバイスのもと、イメージを膨らませて雨の中採集開始。

ビーティングで落ちてきた昆虫は、アオクサカメムシやガの幼虫、チャタテムシの1種ばかりだった。
その他はモリヤスデやクモが多数を占めていた。

そんな中、アミメクサカゲロウがネットに落ちた。このような昆虫がサツマヒメたちの餌になっているのだろうか?

肝心のサツマヒメカマキリは・・・

この日は1時間粘ったが、3人とも遭遇できなかった。
サツマヒメが確実に採れる場所、として案内してもらった場所なのにどうしたことか。
けっこう奥の方まで行って探したつもりだったが、
採れない原因は雨か、やり方の問題か、それとも・・・
うーん、とても悔しい。とはいえ、雨の中の採集はなんだか新鮮で楽しかった。

収穫無しだとさすがに悲しいので、偶然見つけたヤママユの繭を拾って撤退した。

淡路島でもサツマヒメの調査をしたかったので、今回は淡路島の旅館にお世話になった。
午後6時頃、旅館に到着。
採れなかったことに焦りと不安を抱いていた私は、先輩にサツマヒメについて再確認してみた。
大きさや、ネットにどうやって落ちてくるかなど、
写真を見せてもらいながら教えていただいた。

このように擬死している状態のものが落ちてくることもあるらしい。
一見、枯葉にも見えるが明らかにカマキリの形なので見落としはないはずだ。
注意してネットを確認したほうがよさそうだ。

同行者の土屋くんが淡路島内でオサ掘りをできそうなポイントを見つけたので、
サツマヒメ調査も兼ねて午前中は淡路島内を探索、
そして午後は1日目に行ったポイントでリベンジしに行く、
これが2日目のプランとなった。

2日目

初日の移動の疲れもあって夜は爆睡だった。朝になると強風で窓がガタガタうるさいことに気づいた。
晴れ予報だがこの日は風が心配だった。

まずは、オサ掘りができそうなポイントへ向かった。

私は道具を持っていなかったので周辺をビーティングした。
30分くらい調査したものの、そこで得られたのはクモやモリヤスデばかりで、ちょっとガッカリ。
それから知らないうちに動物の糞を踏んでいたようで、
そこでまたガッカリ(近くのため池で洗った。長靴を履いていてよかった)。

土屋くんはオサ掘りで収穫があったようだ。ゴミムシの1種やオオゴキブリ、
ヒメスズメバチなどを手に入れたらしい。こちらは幸先が良さそうだ。

次に行った調査地は、サツマヒメがいそうな場所として
大島先輩が当たりをつけていた場所だ。

枯葉も目立つので、期待しながらビーティングした。
しかしながら落ちてくるのは小さいガの幼虫ばかり。恐らくマイマイガの1種だと思われる。頑張って奥に行けば行くほどマイマイガに遭遇する気がした。悔しい。

ここでの収穫はアカコブコブゾウムシだ。
茎にしがみついているのをルッキングで発見した。
成虫でも越冬する種のようだ。面白い名前で可愛らしい。

ここでは1時間くらい調査したが、サツマヒメは依然として見つからない。
淡路島にいてもおかしくない種なのだが・・・

そして午後、サツマヒメを求めて再び本土兵庫県へ向かった。

ポイントに到着すると、気にしていた風は大したことなかったが、
今度はまた天候が怪しくなってきた。

この日ネットに落ちる昆虫は少し違った。
小さいゴキブリや、アミメクサカゲロウが明らかに昨日より多く、いかにもカマキリがいそうな気配がした。

そう考えていたら突然、雹が降り始めた。

この日は、持参した捕虫網も使ってみようと思い、手が届かない所も探していたのだが、
すぐに雹が網の中に入り使い物にならない。

・・・ビーティングに集中することにした。

雹の威力にびっくりしていたら、大島先輩がこちらに来た。
もしかして一時撤退?と思ったら、「いたよ」、と言ってケースを見せてくれた。

大島先輩がついにサツマヒメを発見!!

「おぉおおおっ!」
と思わず歓声をあげてしまった。

おまけにその個体をくださるとのことだったので有難くいただいた。
実はこの時点で既に2個体見つけられていたようで、もう一方の個体は土屋くんに渡していたそうだ。
本当に感謝です!

サツマヒメの実物を初めて見て、とにかく可愛くて疲れが吹き飛んだ。今日は採れる!!

しばらくすると雹は止んだ。助かった。

それから約3時間経過したが、私と土屋くんは発見できないままだった。
この時、大島先輩は既に8個体も確保していた。この差は一体…?

「要するに、このカメムシみたいに枯葉に留まっているってことだよね?」
と越冬中のカメムシを指して言い、土屋くんと意見交換。

そんなことお互い分かっているのだろうが、なぜカメムシは落ちてカマキリは落ちないのか不思議である。

すると数分後、土屋くんが大歓声を上げた。

ついにサツマヒメ発見!!
歓喜と焦りが同時に襲ってきた瞬間だった。(笑)
常緑樹にぶら下がる枯葉に拘らず、とにかく枯葉を攻める作戦に方向転換してみた。
枯葉がビーティングネットに散らばる。

「ん?これは・・・?」

「おぉおっ!!これは・・・!!?」
数分後、私もついにサツマヒメを自力で採集することに成功!!

必死に写真を撮る。(笑)

不思議なもので、私も土屋くんも、最初の1個体を見つけると
その後はかなりのハイペースで次の個体を見つけることができた。これはすごく楽しい。
その頃、大島先輩はルッキングでサツマヒメを発見していた。流石です。(笑)

ルッキングの強みのひとつは、絵になる写真を撮れること。
そして始まる写真撮影会。(笑)

可愛い!

カッコいい!

サツマヒメ採集に関して分かったことは、薄暗くなっている場所より、
多少開けた日当たりの良いところで得られた傾向があるということ。
また、枯葉が引っ掛かっている広葉樹であれば、
常緑樹でなくてもいる可能性が高そうだ。

寒さ凌げているのかが怪しいようなこんな所でも、

枯葉と共に落ちてきた。

枯葉を1枚手に取り、ビーティングネットの上で振ったら落ちてきた個体もいた。
実際にやってみないと分からないことがたくさんあり、とても勉強になった。

旅館に戻ってからは、大島先輩恒例の反省会、という名の談話会が開かれた。(笑)
話が盛り上がり、気づくと日付が変わっていた。内容の濃い1日だった。

最終日

時間の許す限り淡路島を調査した。

まずは神社に隣接するキャンプ場。ここはカマキリの餌になるような虫が全く落ちなかった。
大島先輩がオオカマキリの卵鞘を発見。

次に調査した神社周辺では、ハラビロカマキリとオオカマキリの卵鞘は発見できたものの、
ビーティングではマイマイガの幼虫ばかり。
少し標高が高いこともあり、風が強く、樹木にぶら下がる枯葉が少ない印象を受けた。

最後に調査した場所は、モリヤスデやクモが多く落ち、ササが非常に多い環境だった。
オオカマキリの卵鞘はたくさん見つけられたが、
ここでも、サツマヒメは得られなかった。

淡路島は、まずサツマヒメの環境探しに徹するところからが始まりだと感じた。
Googleマップのみだと、当たりをつけるにも限界があった。
淡路島調査、またリベンジしたい!

この採集旅行の計画、案内や車の運転、写真での記録、採集記執筆の機会を設けてくださるなど、
お世話になった大島先輩に心から感謝いたします。
今回学んだ採集の経験を生かすことはもちろん、
サツマヒメカマキリの飼育を通してさらに学んでいこうと思います!

今日もサツマヒメちゃんが可愛い!!(笑)

ー完ー