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ヒラタカメカムイ

博士前期課程1年 嶋本習介

北海道に行ってきた。

今回は一人での遠征だ。目的がめちゃくちゃニッチだから。

この夏研究室は北海道ブームで、私も含めて3名がそれぞれバラバラに調査に出向いている。

調査環境が合わないだけで別に不仲なわけではないので、一応。

5日間の日程。早朝便を使うので、まずは成田で前泊。

バイトしたあとに成田に向かったので、着いたのが1時過ぎと遅く、北ウェイティングエリアは予想通り満席。

床に寝袋で就寝した。

1日目

今回利用したのは春秋航空。初めて使う航空会社なのでとても楽しみだった。

手荷物の長さ制限が優しい(三辺の合計=のパターン)なのが、非常にありがたい。

荷物を事前に送ったので電子機器くらいしか持っておらず、軽装で楽ちんだ。

新千歳までは意外に早く、2時間かからなかった。

そして、新千歳空港到着。想像よりでかい、という印象だ。建物は独特の形をしている。

遠くの四角い建物は政府専用機の格納庫。

毎度毎度のオリックスレンタカーで今回の「宿」の貸し出し手続きをし、千歳市内で当面の買い出し。

千歳のイオンの鮮魚売り場が最高で、半端なくおいしそうな魚介類がずらーっと並んでいる。

調理道具を持ってきておらず、買えないのは本当に残念で最低。

目的地の帯広方面までは高速で2時間強。

景色が目新しいので見飽きない。

清水町に入ったところどーん!と広がる十勝平野が見事だった。

北海道に来たな、という感じがする。

最初のポイントに到着。

エゾシカ残滓の看板が迫力大。

ヒラタカメは順調に採れる。

大きく剥がれかけたエゾマツの樹皮をめくると大きな影がネットに落ちた。

何かと思いぎょっとしたが、なんとエゾマイマイカブリだった。

なんでそんなとこに…

北海道「らしい」虫とのいきなりの出会い。

ツヤアカヒメヒラタカメムシ Paraneurus similis

この調査を通じ、恐らく最も多くの個体を観察できたヒラタカメムシ。
どんな環境にもいた。
白い丸は卵、小さくて白っぽいのが幼虫である。

エゾトリカブト?トリカブト類は非常に多く、とても美しかった。

ヒメヒラタカメムシ Aneurus macrotylus

本種もまた多く見られたヒラタカメ。
ただ、ツヤアカヒメよりは環境を選り好んでいる印象で、
どこにでもいるわけではなかった。
前種より幅広い体型をしている。

夕焼け。空が広い。
この日は2ポイントを回り、それなりの量を採集したが今回の調査対象には出会えなかった。

2日目

早朝から調査を開始。

牧草地の一本道。

この日の2ポイント目、無事に対象の種と出会うことができた。

いるはずだとは思っていても、最初の一頭の感動がとても大きかった。
ありがとうありがとう。まだ秘密なので写真はなし。

ノコギリヒラタカメムシ Aradus orientalis(幼虫)。

多くはないが、普通に見られた。ただ、成虫の姿は少ない。
カワラタケ類にいる。

ツヤアカヒメヒラタカメムシ Paraneurus similis

羽化直後と思われる個体。美しい。

アカゲラ?

調査としては大きな成果があったが、採集記的な盛り上がりにはかける一日で、そんなに書くことがない。

公園の駐車場で就寝。愛媛ナンバーの車で車中泊している方がいて驚き。

3日目

この日もそんなに書くことがない。
とにかく調査ポイントを回った1日だった。

カワラバッタ。立ち寄った河原にて。

牛。本当に牛が多い。
調査から帰ったあと、「十勝」の名のついている乳製品に対する親近感がすごい。

ヤギは珍しい。

また牛。

牛横断注意。

この日は昼に食べた豚丼が絶品だった。
名物なので、旅のどこかで必ず一度食べたいと思っていた。
ポイントの近くでみつけたとても雰囲気の良いカフェ。
立ち寄ったところ大当たりだった。

虫のハイライトはゲンゴロウモドキだ。

ポイント開拓の時間がなかったため、恥を捨てて後輩にポイントを教えてもらい、数頭採集した。

大型ゲンゴロウ類を網で採ったときのドキドキ感はたまらない。
初のゲンモ類なので感慨もひとしおだ。

採集した池の水は驚くほど冷たい。
富栄養気味の池にいるのかと思っていたが、全くの貧栄養なポイントであった。


ホップ?

一本道シリーズ。農道。地元の車は猛スピードでとばす。怖い.

夜はスーパーで安く売っていたタコの足を買ったのだが、
あると思っていたカッターナイフを持ってきておらず歯で噛みちぎって食べるはめになり、
辛かった。
黄金伝説。を車内でやる悲しさよ…。

到着以降暖かい日が続いており、車中泊にはちょうど良い気候で心地よい。
GoogleMapとにらめっこして明日の計画を立てたのち、この日も昨日と同じ公園で就寝。

4日目

昨夜の検討の結果、当初の調査計画を大幅に変更することに決定。

南下しながらポイントを巡りつつ、急きょ海を目指すことした。

理由は簡単、新たな仮説が立った…のと、ホネゴミムシダマシが採りたかったのだ…。

長めの移動を繰り返して順調にポイントを回っていく。

サンショウウオの幼生がたくさん浮かんでいた池。

きのこの生えた木。何もいなかった。

最初のポイントまでの移動途中にて。わぁー大きな足跡だなぁ!

ピョウタンの滝

途中、日高山脈山岳センターに立ち寄った。
玄関入ってすぐにヒグマの剥製が鎮座している。

内心、ひょえ~、と思いながらよくよく解説を読んで鳥肌が立った。
なんと、あの、福岡大ワンゲル部事件で駆除された羆だというのだ…。
(ご存じない方はwikiの記事をご覧下さい。)
剥製として保管してあるというのは知らなかったし、まさか目にすることになるとは。
今回は熊鈴を片時も離さず調査しているが、より気が引き締まる
…というか、重い気持ちになった。

その後、昼すぎにポイントで話しかけたおじさんは今年2回ヒグマを見たと言っていた。
そのうち1回は、カーブを曲がったところにいたヒグマが車に気づいたとたん、「立ち上がった」…という。
いや、怖すぎる。

ただ、幸運なことに、この日もヒグマには遭わずにすんだ。

ジェラートが美味しかった。バニラミルクと枝豆味。

途中、「神居古潭」に立ち寄る。

砂金神社。

ゴールデンカムイに出てくるあの神居古潭とは別らしいが、
砂金掘り体験が出来る?らしい。
や、やりたい!

なんやかんやしつつ海沿いの大樹町にたどり着いたが、
調査中に日暮れとなり、タイムアップ。

海を見るのは明日にお預けにした。

夕食には名物を、と思い町の公衆浴場でおじさんに話を聞くと、大樹チーズサーモン丼なるものがあるらしい。
美味しそうなので早速、提供しているというお店へ。

…お待たせしました~!
「ドンッ!」

!?!?
名前の響きから、スモークサーモン的なものの上にチーズがかかっているのかな、と想像していたが、
良い意味で想像を裏切られた。

チーズも、サーモンも、天ぷらだ!え、チーズの天ぷら…!?!?カロリー…
とても美味しかった。大満足。

ちなみになぜチーズかというと、明治のチーズ工場がこの町にあるらしく、
私の大好きな「さけるチーズ」もここ生まれとのこと。

5日目

朝焼け。美しい。

一本道シリーズ。海まで続く一本道。エモい。

そして、ついに海に。はまなすの花が美しい。

海は想像していたよりも荒々しく、波打ち際でぱちゃぱちゃ…といった雰囲気では全くなかった。
砂浜で、堆積物がそれなりにあって…という想像とはかけ離れていて、
どこで探せば良いのか分からずホネゴミダマは採れなかった。
コホネはいたのだが…。

カモメたち。

面白いことに、海の漂着流木が貯めてある場所でヒラタカメを採集した。なかなかない経験だ。

河口では2匹のサケを見ることができ、興奮した。

大樹町多目的航空公園に立ち寄った。大きい建物は気球?の格納庫。

道の駅めぐりが楽しい。ナウマンゾウ推しだった。

その後、北上して残りのポイントを一気にまわる。

最後のポイントで思いがけない出会いが。

タンチョウだ。成鳥2、幼鳥1。迫力と気品のある鳥だった。

最終日もギリギリまで採集し、大慌てで新千歳へ。
一人遠征、やってみると案外楽しく、全然寂しくはなかった。
虫の自慢ができないのはつまらなかったが。

いくら読んでも採集記感がない採集記になってしまった。
ぜひ、今度は特定の目標のない採集をしに来たい。

注記:この採集記は,筆者個人ブログの記事を加筆・再編集したものです.
ご了承ください.