台湾採集記
福田悠人
この度、大学の先輩方の御厚意を授かって、台湾で採集をする機会を得たので、本稿にてその顛末を記したいと思う。
今回の採集を企画してくださったのは清水さん(アメバチ)と藤澤さん(ゾウムシ)の御二方で、私(テントウムシ)がそこに便乗した形である。藤澤さんと共に朝8時成田発の便に乗って台湾の桃園空港へ着いたのは現地時刻12時ごろであった。そのあと2時間後の便で来る清水さんを待ちつつ、入国審査、Wi-fiルーターのレンタル、レンタカー屋への連絡などなど準備をしていたが、清水さんの乗る飛行機にトラブルがあったらしく、中々着かない。結局9時間ほど桃園空港で待機することになった。飛行機が空港へ着いたのは午後9時だったので、そのまま空港に泊まって翌日から行動を始めることに。初日から災難である。
桃園から左営駅へ
次の日。始発のシャトルバスに乗って桃園駅へ。2時間ほど高速鉄道に乗って左営駅に到着。レンンタカーを借り、台湾の南端方面へ。採集予定地に着いたのは午後1時ごろであった。
初の熱帯での採集、まず驚いたのは蝶の多さである。3月上旬だというのにあちらこちらにマダラチョウ、アゲハチョウが飛び交い、そしてどれもこれも色鮮やかなチョウばかり。もちろん、蝶ばかりではなく辺りの草木を掬えば3月とは思えない量の虫が入ってきた。日中は虫の取れそうなポイントを転々としつつ、イエローパントラップやマレーゼトラップを仕掛け、夜になると4本の灯火総研を贅沢に使ったライトトラップを夜通し行い、まさに虫取り三昧の日々であった。
採集した環境。
さすが熱帯、3月とは思えない量の虫が生息していた。
オオジュウゴホシテントウ
前胸のハート型の紋が可愛らしい
朱色の綺麗なカメムシ
灯火採集中やたら飛んできた
キンカメムシの一種
生体時は鮮やかなエメラルドグリーンの輝きを放っていた
それはそれとして死んでも美しい
オオカメムシの若虫
生体時は赤くなく、半透明で薄い黄緑色をしていた
平べったく奇妙な形をしている。いつか成虫に会いたいものである
ツノゼミ
ツノゼミの名に恥じない立派なツノを持っている。カッコイイ!
日本産の奴もこのくらいあればなあ
Paraglenea swinhoei Bates, 1866
もう少し後の時期だと大量に取れるらしいが
我々が来た時はあまりいなかった
キノボリトカゲ
警戒心が薄いのかカメラを近づけても全然逃げようとしなかった。可愛い
巨大なシロアリの巣を除く藤澤さん
赤い角が格好いいクモ
灯火採集の様子
メインターゲットはアメバチであるが、蛾やカメムシ、甲虫ももちろん飛んできた
灯火に来た蛾
色あざやかなものからユニークな形をしたものまで様々
平たくなるのを頑張りすぎたゴミムシダマシ
何が彼をそうさせるのか…
もちろん、全てが順風満帆に進んだわけではない。林道に仕掛けたマレーゼに鳥が引っかかるまでは笑える話で済んだが、どうやら現地の人もその林道をよく利用するらしく、マレーゼを仕掛けた紐が切られたり、道沿いに仕掛けたイエローパンが壊されたりすることがあった。また、最終日間近になって、車道沿いに仕掛けたイエローパンが除草車によって無慈悲に粉砕されるという悲劇があった。
マレーゼトラップに道を塞がれ、困惑するズグロミゾゴイ
この後網の下を通って無事逃げた
車道に並ぶ無数のイエローパントラップ
現地人には異様な光景に見えたことだろう
今回の調査は12日を間車中泊で通す予定であったが、流石に3人で寝るには車が狭かった上、灯火総研を充電する拠点も必要になったので、調査の中盤から後半にかけては宿に泊まることになった。といっても3人で泊まるのではなく、経費の節約のため私だけ泊まることになった。宿を取るのには苦労したが、宿のベッドは先輩方に申し訳なくなるくらい快適であった。
1軒目に泊まった宿
英語が通じなかったので、Google翻訳片手に交渉
言葉が通じなくともなんとかなるものである
2件目に泊まった宿
私の貧相な英語を宿の主人が苦笑混じりに理解してくれた
最終日前日に宿の主人の親族が経営する食堂で食べた料理
最高に美味かった
12日間、聞いた時は長いと感じた滞在期間も終わってみるとあっという間であった。自分にとっては初の海外採集ということで不安もあったが、見知らぬ土地の虫たちに私の心を躍った。機会ができたら是非また行きたい採集であった。