秩父市の森づくり課で地域の特色を生かす森林・林業を推進
前島 香保 さん
短期大学部 環境緑地学科/緑地建設・植栽学研究室(当時)平成22年3月卒業/秩父市 環境部 森づくり課 勤務
異業種から、地域の環境づくりをめざして学士編入
東京農大で学ぶ前は、メーカーの海外営業として働いていました。海外から見た日本について考える機会も多く、「緑が豊かな日本だからこそ成し得る仕事がしたい」という思いから、短期大学部 環境緑地学科に社会人入試で入学しました。
卒業論文では、ふたつの研究に取り組みました。ひとつは、「工場緑化の現状と今後の展望」です。環境問題への配慮は、社会に果たす責任のひとつとして多くの企業が挙げていますが、工場緑化の規定は企業でどのように受け止められ、推進されているのか、その現状と今後の課題を探りました。そして、もうひとつは「オーストラリアにおける日本庭園の構成要素の調査」です。きっかけは、1年次夏休みに研究のために訪れたオーストラリアでした。現地で日本庭園を調査したところ、庭園を紹介するためのパンフレットが必要だと実感しました。そこで、さまざまの庭園の植栽リストから700種以上をピックアップ。植物の学名・英語名などを一覧にしたリストを作成し、各庭園の植栽リストを一元化しました。庭園のパンフレットなどを作成するときに役立つ仕様となっています。
地域づくりに大きな可能性を感じて、Iターン就職を決意
卒業後は秩父市に入職し、いくつかの部署を経験しました。地域に対して広い知見を得た後、現在は念願がかなって環境部 森づくり課に配属となり、市の重要な産業のひとつである林業の推進に取り組んでいます。
就職活動の際は、「地元とつながりのある地域で、緑と人をつなぐ仕事がしたい」と思い、さまざまな企業にアプローチ。そして、縁があって秩父市の求人に巡り合うことができました。悩んだり迷ったりしましたが、就職活動に必要なのは未来に対してワクワクする気持ち。その心に正直になって、自分の可能性を信じてチャレンジすることが大切だと感じています。
地域材の利用促進をめざして「木育」を推進
現在は主に、地元・秩父の森で育まれた木材「ちちぶの木」を普及するための取り組みをおこなっています。中でも特に力を入れているのは、「木育」という活動。「木育」という名称から、「子ども」に焦点が当てられがちですが、秩父市が取り組む「木育」は、一生を通してさまざまなライフステージで学ぶものです。市の豊富な森林資源を活用して森林・林業について学び、触れ、「ちちぶの木」のファンをひとりでも多く増やすことをめざしています。
現職は、まさに地域と緑と人をつなぐ職業。「ちちぶの木」のよさを市民に伝えることはもちろん、他の地域・企業と交流・連携し、秩父市の林業を発展させていくのが目標です。今後も、緑と人がともに生きる地域づくりをめざし、さまざまな取り組みに挑戦していきたいと思っています。