宮浦 理恵 教授
研究テーマ
アグロエコロジー、持続的食料システム
野菜・果物の栽培と品質を極め、その生態を理解する
地域に結びついた作物・野菜・果樹の栽培技術やその基本的な生理・生態に関する研究をおこないます。さらに自然環境および栽培環境に関連しながら、生育や品質に及ぼす影響などを自然科学的なアプローチによって解明していきます。
研究対象のひとつとして、地域に根ざした野菜や果物が挙げられます。日本各地で栽培されている野菜や果物は、近代的な生産技術の導入や消費者の嗜好の変化によって大きな変貌をとげてきました。しかし一方では、在来品種の存在が脅かされ、食農技法の多様性が危ぶまれているともいえます。
地域に根付いた野菜や果物の生理・生態を理解し、気候、歴史、文化、経済との調和をはかりながら進歩させていくことが、今後ますます重要になることは間違いありません。この視点に立って、作物と生産技術・利用技法の価値を未来に継承するとともに、世界に向けて発信します。
アグロエコロジーの手法で、長期的な視点で地域の農業を考える
研究は、栽培学、民族植物学をはじめ、さまざまな手法でおこないます。中でも特に力を入れているのが、「農の生態学」ともいえるアグロエコロジーの手法です。
農業は通常、1年のサイクルでおこなわれ、経済的な効果も1年間の支出と収益で評価することがほとんどです。それに対してアグロエコロジーは、「地域の農業や食文化が、持続的に発展できるかどうか」という長期的な視点で評価していきます。作物と地域の風土、あるいは雑草との関係などを、生態学的に分析するのが特徴です。
例えば、その土地の作物の収穫量低下により、別の作物に切り替えることにしたとします。1年後には収穫量が増えたので、短期的には「効果があった」と評価することができます。しかし、それを30年間続けた場合はどうでしょうか。将来、地域の生態系にどのような影響があるのかは、たった1年間の実績だけではわかりません。持続的な食料生産システムを構築するためには、このアグロエコロジーの考え方が必要なのです。
「実学主義」から得られる、さまざまな学び
カリキュラムは、植物生産についての基本的な理論と実践的な技術を学び、さらに現場での農業実習や加工・調理実習をはじめとする応用的な領域へと展開します。自然科学的なアプローチだけでなく、食と農が地域や経済へと結びつき、さらに世界へと発信するという一連の学問の体系が形成されていくことになります。
これこそ社会的に大変重要な分野でありながら、大学の学問には体系づけられていなかった領域であり、東京農大の実学主義の真髄です。植物生産学研究室では、その基本となる農の生産・文化の奥深い領域に関わることになります。