作物生産分野 遺伝育種学研究室
ハイテクで明るい未来をクリエイト
遺伝学、育種学、遺伝子工学、組織培養を基礎とし、遺伝子導入などの技術を駆使して、高等植物の品種改良に取り組んでいる。具体的には、遺伝子導入や交配による植物体の物質生産の機能解析、不良環境に耐性を示す作物品種の育成、高付加価値をもつ作物品種や園芸植物品種の育成などである。さらには植物遺伝子資源利用のための遺伝育種学的特性についても研究している。最終的には、農業生産を支援するために、高品質で、安全で、高付加価値をもつ植物品種の育成をめざしている。
所属教員
学生の主な研究テーマ
・人為合成コムギの育成とその親系統との種子貯蔵タンパク質サブユニットの比較
・キャベツ3品種およびシソ科植物数種の耐塩性に関する研究
・組織培養によるサトイモ(Colocasia esculenta Schoot) ’ふじ早生‘の効率的な大量増殖法の検討
・アグロバクテリウム法を用いたMschr導入による黄色花ゼラニウム、ゼラニウム、トレニアおよびペチュニアの作出
・ヒガンバナ科Crimum属植物およびHaemanthus属植物のFISH法による核型比較
・多年生キクと一年生キクの人為雑種作出と雑種であることの証明
・植物遺伝子組み換え問題に対し、研究者はその問題をどのように解決しようとしているのか
FREE TALK
モットーは文武両道
遺伝育種学研究室と聞いて難しそうだな、と思ったかもしれませんがそんなことはありません。後輩一人ひとりに先輩が付き、実験に必要な技術を丁寧に教えてくれます。そしてゼミや文献に触れる機会も多く自主的に学べる環境も整っています。また、先生方に積極的に質問することもできやる気次第でどんどん自分を伸ばせる研究室です。こうした環境は大学院進学を目指す方にとっては優れた場かもしれません。
もちろん農大ですから勉強だけではありません。夏には畑で野菜を作ります。昨夏はトウモロコシや枝豆、ゴーヤなどを栽培し、特にもぎたてで生でも食べられるトウモロコシはその甘さに誰もが顔をほころばせました。そして研究室の皆で美味しく頂いた後余ったものはお持ち帰りできるので一人暮らしには大助かりです。
この研究室は卓上の勉強、実験、そして実際に土に触れる機会もありこの農大を味わいつくすことのできる可能性を持っています。ここであなたなりの勉強の“文”と畑の“武”を見つけてみてもらえれば幸いです。 (木村美知子)
東京農大で培った「生きた知識」
こんにちは。
東京農業大学農学部農学科遺伝育種学研究室の斉藤陽一です。コムギにおける不活性転位因子の外的ストレスによる活性化を研究しています。私は生命の持つ柔軟さ、環境変化への適応力に興味があります。転位因子とはトランスポゾンとも呼ばれ、染色体内を移動するふしぎな遺伝子です。これにより遺伝子構成の多様性が増し、環境適応力が向上します。
生命科学を扱う大学は数多くありますが、東京農大では机上で勉強した内容をフィールドで実際に目で見て確認できるので、単なる文字の知識にとどまらず「生きた知識」を学ぶことができます。また広範な経験を得られるため、将来の進路として農業従事者はもちろん、食品業界や製薬業界などバイオに関する幅広い分野を選択することが可能です。
私は東京農大での研究を通して生命科学の虜となり、科学者を志望するようになりました。さらにはヒトにおける可塑性も研究したいと思い、来年度からは慶應義塾大学の医学研究科に進学し、幹細胞による再生医療の研究をする予定です。
東京農大で培ってきた生きた知識をさらに発展させ、世界に貢献できる研究者になれるよう今後も努力していきます。
(斉藤 陽一)
研究室の思い出
私の卒論の研究テーマは、遺伝子工学を利用したペラルゴニウムという花の矮性化に関する研究でした。今研究では、草丈が必要以上に伸びてしまい園芸的に好ましくないこの植物に、パーティクルガン法を用いて矮性化を起こす遺伝子(rolC遺伝子)を導入することにより品種改良を行なうことを目的としています。パーティクルガン法とは、物理的に遺伝子を導入する方法で、DNAをコーティングした金粒子をガス圧により植物材料に直接撃ち込むことによって形質転換体を作出します。なんだかすごいことをしてそうですが、実際のところ、地道な実験も多く、なかなか結果が出にくい研究でした。試行錯誤を繰り返し、実験結果に一喜一憂しながらこのテーマに取り組みました。
研究室の2年間はある意味社会人の一歩前段階であるとも言えます。研究室というコミュニティーの中で、先生・先輩・同期・後輩など様々な年齢層と交流しながら、研究室生が協力して収穫祭の準備をしたり、卒業論文に向け計画を立て、実験や論文をこなしていくのは、これからの社会人生活にも通じるものがあると思います。
実験に収穫祭に就活に卒業論文にと、なにかと忙しくあっという間に終わってしまいましたが、とても充実した2年間を過ごせました。皆さんの研究室生活が有意義なものになることを心よりお祈りいたします。
色々と大袈裟に書いてみましたが今のうちに全力で遊んで下さい。私が言いたいのはそれだけです。 (小室快人)
研究室の雰囲気
3年生になって間もない、まだ研究室の雰囲気や先輩や同級生の顔が一致しない時に、先輩から呼び出され、私が3年研究室幹事になることを頼まれました。先輩から聞いたところ仕事もあまり多くなく、これも一つの経験だと思い軽い気持ちで引き受けることにしました。
しかし引き受けて少ししてから、幹事の本当の仕事を知りました。それは、研究室員の交流を作ることです。先輩達はいつも仲が良く、皆が協力的で、とても積極的な雰囲気が流れていました。しかし、3年生はまだどこか遠慮気味で、積極的とは言えない雰囲気でした。そこで私は事あるごとに交流会等を開き、積極的に話しかけ、研究室の輪の中に入りやすくすることを心がけました。すると、多くの人が仕事を自ら引き受けてくれ、どんどん研究室に参加してくれるようになりました。そして学校の大きなイベントの「収穫祭」では、いいものを皆で作ろうという団結力が深まり、とても仲の良い研究室になれたと感じました。
大学3年生は新しい環境と新しい仲間とで、とても緊張するかと思いますが新しい仲間との交流はとても楽しく、一生懸命行えば充実した生活を送れると思います。どうぞ、大学生活を楽しんでください。
(桑子 嘉章)
学会発表 「酢酸カーミンとの愛憎の日々」~Haemanthus属植物よ、貴様には地獄すら生ぬるい~
2009年のあの日、私は某准教授に重大なことを告げられた。「今度の学会で発表をしてもらおう」。私にとっては正に不意打ちといってよかった(2008年にもそのようなことは言われていた気がするが)。当然、何の準備も出来ていない私の答えはこうだ。「ハハハ。・・・よ、喜んで」。断れるはずも無い。むしろ断るなどという選択肢は話を振られた時点で消滅しているといっていい。え?勇気がない?・・・・さて、そうして数奇な運命に導かれ私は学会発表という大舞台を経験した。ちなみにこれは2年に1回関東地区で開催されるそうなので、染色体チームに配属されるキミは在学中に1度体験することが出来るゾ。ヤッタネ!
学会発表は11月半ば。そこに至る私の実験は熾烈を極めた。愛するものの体を傷つけ(植物体からの採根)、強酸の海に沈め(固定と解離)、そして火炙りにすらした(酢酸カーミンによる染色)。そして臨んだ発表は先生方や多くの人々に助けられ、無事に決着した。この貴重な体験は私の大学生活をよりいっそう美しく彩ったといえるだろう。
さあキミもこの遺伝育種学研究室の染色体チームで4年間の思い出をFISH(蛍光in situ hybridization)の光よりも輝いたものにしよう。酢酸の香りに包まれて染色液で真っ赤に染まれ!