東京農業大学

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進化する東京農大

平成30年度 入学式式辞

新入生の皆さん、入学おめでとう。

そして、皆さんの入学にあたりご支援をくださったご家族をはじめ、ご関係者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

本日は、皆さんの入学を祝うため、本学36番目の海外協定校として、昨年6月に協定締結をしました英国・スコットランドのハイランズ・アンド・アイランズ大学のクリーブ・マルホランド学長、明治29年から30年間、本学の経営を支えた公益社団法人大日本農会の染 英昭会長、在校生のご家族を代表して風間教育後援会会長、そして学校法人理事長をはじめとする理事、監事の方に、ご登壇いただいております。ご多用のところ誠にありがとうございます。

東京農業大学では、本年4月から大学院農学研究科に食品安全健康学専攻の修士課程並びに農学部に生物資源開発学科とデザイン農学科を新設し、畜産学科を動物科学科、応用生物科学部生物応用化学科を農芸化学科と名称を変更しての入学式となります。

本学はここ東京世田谷のほか、神奈川県厚木市、北海道網走市の3キャンパスに大学院2研究科、6学部24学科を擁し、大学院生を含め1万3千人の学生と教員400人、職員300人からなる我が国最大の農学・生命科学系総合大学に発展しています。

新入生の皆さんは数ある大学の中から、それぞれの夢を叶えるため本学を選び入学しました。皆さんに、まず話しをしたいことは、本学の教育研究の理念「実学主義」を常に心に置いて、これからの新たな学生生活を過ごしてほしいということです。

これから本学で学ぶ上で「実学主義」という言葉をここかしこに聞くことになり、皆さんの東京農大精神に刷り込まれて行きます。

本学は明治24(1891)年に明治期きっての国際人、科学者でもあり、開国後間の無い不安定な日本を近代国家へと導いた歴史的人物である榎本武揚公により創設され、今年で創立127年を迎える伝統ある大学です。

榎本公は、徳川幕府から留学生としてオランダへ派遣され、産業革命後の先進ヨーロッパ諸国の国力、科学技術を目にし、驚きと共にどん欲に知識を吸収しました。榎本公は、幼く頼りない新生日本の産業発展に先進的科学技術、特に「農業」の発展が近代国家の建設に極めて重要であると考え、本学を創設しました。

榎本公は自らの留学体験から、知識のみの教授への限界を看破し、学習した知識を現実の場での体験や経験を通じ強固なものとすると共に知識と現実の違い理解しその解決を図ることが重要であるとの強い認識を得て、最新知識の教授と共に実験や農場実習、農家支援などを教育の中心としました。この教育研究の精神を継承し発展させるのが、我が国近代農学の祖である初代学長、横井時敬先生です。本学の教育研究の理念「実学主義」は、横井先生の言葉「稲のことは稲にきけ、農業のことは農民にきけ」に込められています。つまり、机上の理論ではなく、その物、現場で自らの五感を駆使して、課題を発見し、その課題がなぜ起きているのかを自ら考え、科学的に実証することで課題解決に導いていくと言うことです。

本学は、研究室での活動を教育研究の主体としています。講義や実験実習で専門的知識を蓄えることはできますが、今はそれだけでは、卒業してからの複雑化した社会で生きていくことの困難さを感じることとなります。専門知識に加えて幅広の教養を持ち、専門と専門とをつなげられる想像力と柔軟さを備えることが大切です。大学4年間の内、前半の2年間は生徒から自ら学ぶ姿勢を備えた学生へ、後半の2年間は学生から実学主義で鍛えられた自信を持って、専門力を活かし社会で活躍する社会人へ、バージョンアップする期間です。本学では3年生から研究室に所属します。学生と教職員がフェイスtoフェイスで教育研究する環境にある「研究室」が、皆さんを大人、社会人に成長させる場なのです。「研究を通じて人物を育てる。研究を通じて教育をしていく。」これが本学の研究室のあり方です。そこで我々教員は、研究の発見、驚きの面白さ、楽しさを学生たちに教えていきます。またそこには、同輩、先輩、後輩、留学生など様々な人間が集まるファミリーが形成されます。まったく違う知識や考えを持った人と対話できることが大事です。研究室のみならず、課外活動の場または卒業生や地域の皆さまとコミュニケーションをはかり、有意義に過ごしてください。

研究室のなかでも大学院生はリーダーとしての活躍を期待します。急速な世の中の進化に、より高度な専門性が社会から求められています。指導教授のもと自ら研鑽を重ねることはもちろんのこと、学部生への指導により成長してほしいと願います。

本学は建学127年、その実績と卒業生の活躍から「農学の殿堂」と呼ばれています。そのゆえんは、本学が古くいからの博士号授与機関であったということです。明治・大正期では博士号の授与は、原則、旧帝国大学に限られていました。「農学博士」は5大学のみで、東大、京大、九大、北大、これに並び私立大学として唯一東京農大でした。この伝統を受継ぐ、本大学院に寄せられる世の中の期待は、十分すぎるほど大きなものとなっています。この誇りをもって教育研究に没頭してください。

学部生には、大学院進学を見据えた勉学姿勢で臨むことを期待しており、そのための「学びて後足らざるを知る奨学金」を用意しています。大学院博士前期課程に進学する場合は授業料が半額、さらに博士後期課程に進学した場合は、授業料他、学費のほぼ全額を免除します。

本日皆さんは、大学と言う「未来への扉」の前に立ちました。これから卒業までの間、将来の夢を想像し、大いに「実学主義」を実践して、「未来の扉」を開けるよう努めてください。

東京農業大学には、「農業」という文字が入っています。農業の起源は諸説ありますが、約1万年前に稲作を中心とした農耕が始まったと言われています。当然のことですが、人間の命は「食」によって養われており、食料生産は国の基本です。この農業を支える学問として生まれた「農学」は、すべての人に関わる「生きるを支える」学問です。人類社会の発展は、農業技術の発達に伴い成されてきた歴史があります。「農」は人類社会の原点と言えます。本学の学びと研究の原点も「農」にあります。

近年の地球規模での気候変動による環境の変化や自然災害の増加、人口増加による食料危機など、地球とそこに生きる多様な生き物、人類の生存を脅かす課題に直面しています。

これら課題解決にあたる農学は農業だけを学ぶのではなく、時代の変化に合わせて、「農」を基盤とする生命、食料、環境、健康、エネルギー、地域創成などの幅広い研究領域をカバーする東京農業大学に大きな期待が寄せられています。

東京農大生の使命は、「人類の幸せのため、倫理観をもって、地球に貢献すること」です。人や動植物を含めたすべての地球の「生きる」を支えることであります。

これから、この大きな使命に、東京農大精神のもと立ち向かい、努力してください。

今、生きるを支える「食」の話しをしましたが、本日、新入生の皆さんに、教育後援会のお祝いとして「お箸」を用意してもらいました。「食」を考究する大学として一番ふさわしいと考えたからです。箸は、木曽川最上流の長野県木祖村で作られたものです。木祖村は周囲を山々に囲まれ、木材の加工や高原野菜の栽培、木曽牛の育成など林業、農業、畜産を主産業とする、我が国の典型的な山村です。木祖村とは、昨年の11月に本学と包括連携協定を締結しました。本学では、自治体、企業、JA、教育研究機関等と連携協定を結び、地域に貢献すると共に、学生の「実学主義」を実践する教育研究の場とさせていただいております。その数は、平成30年2月現在、75件あり、県単位では、茨城県、高知県、北海道、兵庫県、長野県と締結しています。

全国的に有名な通称「大根踊り」、正式には「青山ほとり」と言いますが、その歌詞に「人間喰わずに生きらりょか」とあり、長年歌い継がれています。
人が生きていくために必要不可欠な学問を「実学主義」で学び、「生命(いのち)」を大切にする「農のこころ」をはぐくんでもらいたいと思っております。
改めて、「食」の大切さ、いのちの尊さ、有難さを噛みしめながら、箸を使い、心身ともに健康に過ごしてください。

皆さんは、多くの人と出会う、場所と時間を与えられました。私から、人との出会いのなかでひとつお話ししておきたいことがあります。

「他者への理解と思いやり」が大切だということです。人は他人を理解し、信用することによって、自身の信頼を得ることが出来ます。思いやりをもって接することで、他者からの思いやりの心を受けることができます。自ら先に協力してあげることにより、その人も自分に協力してくれるようになります。双方で思いやりの心が生まれれば、それは真の人間関係が築けます。

今、一生涯の友が、皆さんの隣りに座っています。
新入生の皆さん、起立してください。
そして、隣りの人と握手してください。
両隣りの人と握手をしてください。
別会場でお子様の晴の姿をご覧になられている、ご家族の方も握手をしてみてください。
今日から皆さんともに農大ファミリーです。・・・ありがとうございました。

現代は「ここまで」という限界も、区切りもなくなっています。「NO LIMIT、NO BORDER」の時代にあって、皆さんは自分の限界を超えて、知識の限界を超えて、どのような未来像を描き努力していくのか。東京農大生としてひたむきに“生きる”を追求していくことで夢を実現させてほしいと願います。

最後に、本学の建学の精神は、「人物を畑に還す」です。「農のこころ」を持った学生を育て、世界の各地域のリーダーとして、輩出するということです。

この精神のもと、人々が幸せに生きることのできる社会の構築に、東京農大生が、それを担える人材となるよう、これから教育していきます。

これからの皆さんの活躍と努力に期待して、式辞とさせていただきます。

平成30年4月2日

                         東京農業大学長
                            農学博士 髙野 克己

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